マツダデザイン13 【2012,2013,2014,2015】

新造形テーマ “魂動〜Soul of Motion”の拡大展開

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“魂動デザイン”を採用した3代目アテンザ

 マツダは2010年代に入ると、新しいデザインテーマとして“魂動〜Soul of Motion”を掲げ、すべてのジャンルの新型車に鋭意導入していった。魂動デザインはマツダがこれまで模索し続けてきた“動き”のある造形の集大成。生物が見せる一瞬の動きの美しさや強さをクルマのデザインに昇華させることを念頭に置いていた。キーワードはSpeed(前進感)/Tense(緊張感)/Alluring(艶やかさ)。スピード感を生む骨格に、研ぎ澄まされた緊張感を有するフォルム、そして味わいや艶っぽさを感じる質感といった内容の具現化を造形テーマに据えていた。

 魂動デザインは2012年11月になると、全面改良したフラッグシップモデルの3代目アテンザに採用される。エクステリアに関しては、ダイナミックで生命感のある動きとスピード感、艶感のある面質をアーティスティックに表現。フロント部では新世代マツダのアイデンティティであるシグネチャーウィングを彫りの深いグリルに組み込んだうえで、ウィングから伸びるラインをボディサイド全体の動きに連続させ、立体的なノーズとともに強く前進しようとする躍動的なマスクを創出する。サイドビューでは、俊敏な動物の前肢の肩を表したフロントフェンダーの線、推進力を感じさせる腰を表したリアフェンダーの線、リアタイヤを起点に前方へとシャープに伸びる線という3本のキャラクターラインのコンビネーションで“地面をつかむ鋭い跳躍”と“前へ突き進むスピード感”を演出した。

インテリアは、ドライバーオリエンテッドなコクピットデザインを中心に、素材や触感、操作機器の形状にこだわり、上質でスポーティな雰囲気のなかに機能性や快適性を融合させる。カラーリングは黒色の素材を基調とした粋なコーディネーションで構成。そのうえで、ラウンディッシュかつスピード感あふれるラインでアレンジしたインパネや日差しによる陰影がレリーフ彫刻のようなイメージを醸し出すドアトリムなどを配していた。

3代目アクセラと4代目デミオにも魂動デザインを採用

 魂動デザインはコンパクトクラスにも波及し、2013年10月には第3世代のアクセラが、2014年9月には第4世代のデミオが、独自にアレンジした魂動デザインを纏って市場デビューを果たした。

 3代目アクセラは、魂動デザインのダイナミックで生命感のある動きをCセグメントのサイズで表現。躍動感を追求したエネルギッシュかつリズミカルなスタイリングが、“ひと目見て乗りたくなるエクステリア”を創出する。一方でインテリアは、凝縮感のあるドライバーオリエンテッドな空間と開放的で心地よいパッセンジャー空間を両立したことが訴求点。クラスを超えた高い質感を感じさせる先進的なインテリア造形とハイコントラストなカラーコンビネーションなども特長だった。

 4代目デミオは、魂動デザインをBセグメントのサイズに再構築したことがトピック。エネルギーの凝縮と開放による前進感のある骨格、大径タイヤを四隅に配置した踏ん張り感のあるスタンス、野生動物の鋭い瞳に見立てたLED4灯ヘッドランプなどでエクステリアを構成する。インテリアは、人間中心設計を突き詰めたパッケージングやヒューマンマシンインターフェイス(HMI)を採用したうえで、サテンクローム/光沢カラーパネル/カーボン調シボ/レザーなどを巧みに使って上質ながらも遊び心のあるキャビン空間を演出した。

魂動デザインをSUVスタイルで具現化

 2015年2月になると、魂動デザインをコンパクトクロスオーバーSUVの形に凝縮したCX-3が市場に放たれる。
 エクステリアは塊感のあるボディサイドとそれに対比させる伸びやかなキャビン、切り詰めたショートオーバーハングなどにより、独創的かつ存在感のあるプロポーションを実現。同時に、ドライビングの楽しさと使いやすさを徹底追求したパッケージングを構築し、全高はタワーパーキングなどに入庫可能な1550mmに抑える。内装デザインはドライバーオリエンテッドなコクピットや包まれ感のあるドアトリムなど、スポーティかつ上質なインテリア空間に仕立てていた。

誰もが一瞬で心ときめくスタイリングを創出した4代目ロードスター

 2015年5月には第4世代のロードスターが発売される。SKYACTIV-BODY初の新設計オープンボディは、基本骨格を可能な限り直線で構成するストレート化や各部の骨格を協調して機能させる連続フレームワークをベースに、高張力・超高張力鋼板やアルミ材を多用して重量の軽減と剛性のアップを達成。パッケージングは従来比で全長を105mm、前オーバーハングを45mm、後オーバーハングを40mm、ホイールベースを20mm短縮し、また全高を10mm、ボンネット高を28mm低くする一方、全幅を15mm、前後トレッドを5mm拡大した。

 魂動デザインを採用したスタイリングは、低く短いフロントオーバーハングと人を中心に配置したコンパクトなキャビンとで形作る美しいプロポーションや安定感と敏捷さをイメージさせる低くてワイドな台形フォルム、ボディパネルがドアトリム上部まで回り込んでクルマの外と内の境界を感じさせないインテリア造形などがトピックとなる。専用デザインのパーツも豊富に盛り込み、アルミ製ヘッダーパネルを組み込んでクローズド時のバタつきやフレームの浮き出しを抑えたソフトトップ、走行情報と快適・利便情報を明確に分けたヘッズアップコクピット、ネット素材とウレタンパッドを組み合わせたS-fit構造のシートなどを採用していた。

魂動デザインは、その後2017年12月デビューのミディアムSUV、2代目CX-5で、さらにダイナミックに、そしてクリーンに変身。いちだんと見る者の心を鷲づかみにする魅力的な造形に進化した。マツダはデザインでもブランドイメージをしっかりと構築した。