レックス 【1986,1987,1988,1989,1990,1991,1992】

改良を繰り返した実力派ミニ

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メカニズム発展の時代に生まれた新型

 1980年代半ばから、国産車のメカニズムは大きな発展を遂げた。エンジンには高性能&高効率なDOHC機構が採り入れられ、一部の高性能車の駆動方式にはフルタイム4WD方式が採用され始めた。パッケージング面で有利なフロント・エンジンにフロント・ドライブの組み合わせが一般的となったのもこの時代だ。そんな中で、1958年に軽自動車としてデビューしたSUBARU360以来のリア・エンジン、リア・ドライブ方式を使い続けていた富士重工の軽自動車のレックスが、1981年にフロント・エンジン、フロント・ドライブを採用して近代的な車種に生まれ変わった。そして、1986年にスタイリングの全面変更を受けて第二世代のニューモデルとなった。

積極的なリファインで完成度をアップ

 第二世代レックスは、実質的なボディ寸法は軽自動車の枠で固定されていたものの、ボディ高(+50mm)やホイールベースの延長(+40mm)により室内スペースが拡大されて、軽自動車の中でも最大級の室内容量を持つことになった。直線基調のスタイリングもパッケージングを重視した結果といえた。ボディバリェーションは3ドアハッチバックと5ドアハッチバックの2種。当初3ドア版は“軽ボンバン”と呼ばれた商用車登録の主力車種レックス・コンビに設定し、5ドア版は乗用車登録のレックスのみとしていた。しかし1987年1月にコンビの5ドア仕様、1988年3月にレックスの3ドア仕様が登場している。ビスカスカップリングをツイン装着した4WD機構も1987年2月にラインアップに加わった。

 当初ハイパワースポーツ仕様が未設定だったが、1988年3月のマイナーチェンジを機にスーパーチャージャー・バージョンも追加している。その後も第二世代レックスは、1987年7月にECVT仕様を加え、1989年6月には新世代4気筒エンジンを搭載するなど、当時最新のメカニズムを身につけていく。これも大きな特徴だった。ユーザーニーズの動向を見ながらバリエーション&メカニズムをしだいに拡充していく姿勢は、いかにもSUBARUらしい。

パワフルな3バルブを設定

 当初のエンジンは基本的には旧モデルからキャリーオーバーとされ、水冷並列2気筒のままだった。しかしシリンダーヘッドに大幅な改良を加え、SOHCによる1気筒当たり3バルブ(吸気2、排気1)をラインアップに加えた。3バルブ仕様の排気量は544㏄で最高出力36ps/7000rpm、最大トルクは4.4㎏・m/4500rpmだ。もちろん主力グレード用に、水冷2気筒で1気筒当たり2バルブのエンジン(30ps/6000rpm、4.2kg・m/3500rpm)も使われた。トランスミッションは4速マニュアルと2速オートマチックが基本で、加えて3バルブ・エンジン仕様には5速マニュアルが揃えられる。サスペンションはフロントがマクファーソンストラット/コイルスプリング、リアがセミトレーリングアーム/コイルスプリング、ステアリングギアはラック&ピニオン、3バルブ仕様のブレーキは前がディスク、後はドラムの組み合せである。

 当時、軽自動車は安価な小型車としてだけではなく、実用性に優れ、性能的にも十分な小型車として新しい位置付けを開拓していた。レックス・シリーズのモデルチェンジは、そうした軽自動車の地位を決定づけるものであったと言って良い。コストダウンのための貧乏臭さは感じられず、エンジン性能の向上はボディサイズの小さな乗用車として十分な内容を備えていた。無論、軽自動車であるがゆえに、乗車定員を満足させるために室内のスペースを確保する必然性から、スタイリングはある程度の制約を受けることは仕方なかったが、小型乗用車として新しいジャンルを開拓していたことは間違いない。この年代を境にして、軽自動車は再び新しい時代を迎えていたと言える。