ディアマンテ 【1990,1991,1992,1993,1994,1995,1996,1997】

新領域を開拓したワールドパーソナルカー

会員登録(無料)でより詳しい情報を
ご覧いただけます →コチラ


三菱を象徴するネーミングを持つクルマの誕生

 1990年5月、三菱自動車は3ナンバーサイズの高級車、ディアマンテをデビューさせた。トヨタのクラウン、マークII、日産のセドリック/グロリア、ローレル、また、ホンダのレジェンドなどを直接のライバルとする。車名のディアマンテ(Diamante)とは、三菱自動車を含む三菱グループの象徴であるスリーダイアモンドのダイアモンドを意味するスペイン語だという。

 ディアマンテは、そのコンセプト決定の段階から、エンジンの排気量や車体寸法と言った既存の枠組みには一切とらわれなかったという。たとえば、4740mmの全長、1775mmの全幅、1400〜1420mmの全高、そして2720mmのホイールベースを持つボディーサイズは、一般的な日本の道路を支障なく走れる最大限のサイズ設定である。実用性を重視するなら5ナンバーサイズに収めるべき、という意見に囚われることなく、自由な発想で決定されていた。

 搭載される最も大きなエンジンは、排気量2972ccのV型6気筒DOHC24バルブユニットで、このエンジンも個人ユーザーが自家用車として使える最大級のものと考えられる。もっと大きなボディーやエンジンのクルマもないわけではないが、現実的な意味で通常のオーナードライバーが普通に乗れるクルマとしては、この辺りが限界となる。三菱はそうした事情を巧みに採り込んでいた。当時でももはや伝説となっていたデボネアとは異なる、全く新しい現代の三菱製高級車を具体化したのがディアマンテだった。

あのクルマとは違う! ファースト・ミディアム宣言

 ディアマンテの広告コピーは挑戦的だった。「あのクルマとは違う。−ファースト・ミディアム宣言−」という見出しのもと、はっきりとディアマンテの優位性を宣言したのである。

 広告では小型車枠を超えた幅広のフォルム、国際サイズの居住空間、4WDやTCLといった先進技術を説明し、ディマンテが“誰も知らなかった初めての上質クラスの3ナンバー”であることを明確にした。時代の先端を行く新しい価値観を持ったクルマであることを“あのクルマとは違う。”というコピーで表現したのである。ちなみに、あのクルマとはライバル各車を指していたが、とくに爆発的な販売セールスをマークしていたトヨタ・マークIIを意味すると言われた。

エンジンは先進のV6ユニットを搭載

 ディアマンテシリーズの車種構成は、上位から3.0リッターエンジンを搭載し4輪駆動システムを持つ30R-SE4WD、前2輪駆動の30R-S、2.5リッターエンジン装備の25V 4WD、25V-SE、25V、そしてベーシックモデルの20Eの6車種があった。

 先進性をまずエンジンから見てみよう。フロントに横置き搭載されるエンジンには3種あり、いずれも水冷V型6気筒のレイアウトだが、ベーシックグレードの20E用のみSOHC12バルブとなり、25V系および30R系はDOHC24バルブとなる。20V用のエンジンは排気量1998ccで8.9の圧縮比と電子制御燃料噴射装置により125ps/5500rpmの最高出力を持つ。これが、2497cc仕様になるとDOHC24バルブとなり、10.0の圧縮比と電子制御燃料噴射装置によって175ps/6000rpmのパワーとなる。さらに、2972cc仕様ではDOHC24バルブで圧縮比10.0と電子制御燃料噴射装置を装備して210ps/6000rpmのパワーを発揮する。この3.0リッターエンジンはデボネアにも搭載されているものだ。電子装置は燃料噴射装置だけではなく、電子制御による可変吸気機構、ノッキングコントロール機構などが装備される。

フルタイム4WDを筆頭に電子制御機構をフル搭載

 三菱のお家芸とも言える4輪駆動システムは、センター・デファレンシャルにVCU(ヴィスカス・カップリング)を組み込んだシステムで、一部車種にはやはりVCUを用いたLSD(リミテッド・スリップ・デファレンシャル)も装備可能となる。トランスミッションは4速オートマチックを主軸に、一部グレードには5速マニュアルを用意した。オートマチック・トランスミッションはエンジン制御と関連する電子制御機構を持つ。

 4輪駆動モデルだけでなく、前2輪駆動モデルにもABSとともに電子制御されるトラクションコントロール・システムが装備可能となっていた。これも横Gを検出してエンジンの回転数を電子制御することで余分なトルクを減らし、コーナリング時の姿勢を安定させるシステムで、三菱では「トレースコントロール」と呼んでいた。走りに関係する電子制御システムは、この他ABS(アンチブロッキング・ブレーキング・システム)、車速と操舵力を検知して制御する4輪操舵システム、エアサスペンションの空気圧とショックアブソーバーの減衰力を電子制御するアクティブECS(アクティブ電子制御サスペンション)なども装備することができる。

 サスペンションは前がストラット/コイル・スプリング、後ろがダブルウイッシュボーン/コイル・スプリング(2輪駆動車種はマルチリンク/コイル・スプリング)の組み合わせとなる。またエアサスペンション搭載車種もあり、その仕様には前述のように電子制御サスペンションが組み込まれる。ステアリングはラック&ピニオンでパワー・アシスト機構を装備する。ちなみに、フルタイム4輪駆動システムを備えるディアマンテは、当時国産最大のフルタイム4WDセダンだった。

圧巻のインテリジェント・コクピット・システム

 ディマンテのインテリアのデザインと装備も三菱の最高級車を標榜するだけあって、まさしく至れり尽くせりというところ。当時の最新技術を惜しみなく投入した。その一つが三菱インテリジェント・コックピット・システム(MICS)と呼ばれるもの。これは、シートポジションやステアリング位置などを記憶するものだが、それに加えて、オーナーの体型やあらかじめセットしたポジションを記憶しており、ドライバーズシートに座った人を識別し、自動的にシートポジションやステアリング位置、さらにリアビュー・ミラーの角度までを自動的に決めてくれるものだ。どちらかといえばサービス過剰気味の装置だが、電子制御技術の進化により、このレベルまで自動化が進められるという見本である。
 インスツルメンツパネルのデザインは、アメリカ製高級車のそれを思わせるもので、ダーク系の色調に整えられたウッドパネルは、センターコンソールの全面からドアパネル内側のパワー・ウインドウのスイッチ周辺にまで張り巡らされている。いささかやり過ぎの感もあるが、生産技術の進歩を実感させる部分ではある。

バブルを象徴する存在に成長したディマンテ

 これだけの電子装置を満載しながら、時間の経過と共にディアマンテはさらにアクセサリーや装備を増やしていく。発売当初12車種程度だったモデル・バリエーションは、時代の要求に従がってその後も確実に増え続けた。価格的にも決して安価とは言えない(199万8000円から396万6000円・デビュー当時)高級車が、メーカーの計画である月販3500台を上回る水準で売れたのだから、当時のバブル景気の経済的な凄まじさが良く分かる。

 ディアマンテはバブル景気を象徴するモデルの1台だった。それと同時に電子制御技術の多くを高度に洗練し、高級車の装備として巧みに採り込んだという点では、歴史的に見ても貴重なモデルであることは間違いない。