スカイライン 【2001,2002,2003,2004,2005,2006,2007】

V6搭載の国際車へと大変身を遂げた11代目

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目指したのは“理想のプレミアムスポーツセダン”

 1999年3月にルノーの資本参加(日産株の36.8%)を含むグローバルな提携契約に調印し、同年10月に「リバイバルプラン」と称する抜本的な改革案を発表した日産自動車。指揮を執ったのはルノーから送り込まれたカルロス・ゴーン氏で、彼が最高執行責任者のCEOに就任してからは、ドラスティックな組織改革やコストカット、系列関係の打ち切り、工場閉鎖、販売網の整理などを次々と実施していった。

 2000年代に入ると、発表される新型車にも変化が見え始める。2000年8月には環境対応エンジンを搭載したブルーバード・シルフィがデビュー。同年10月には新世代SUVのX-TRAILが登場する。そして2001年6月になって、11代目となるV35型系スカイラインが市場デビューを果たした。
 新しいスカイラインは、企画当初から従来モデルとキャラクターを異にしていた。ワールドワイドに通用する“理想のプレミアムスポーツセダン”を目指したのである。当時の発表試乗会で開発陣に話を聞いた際には、「今回は“スカイラインらしさ”の追求を一端ゼロにリセットしました。ミニバンなどのRV(レクリエーショナル・ビークル)が全盛の現代では、従来のスカイラインらしさだけでは市場で魅力的に映らないと感じたからです」と語っていた。変わってテーマとなったのが、「21世紀に向けた理想のプレミアムスポーツセダン」。つまり、“らしさ”の追求から“どうあるべきか”の探究に大転換を遂げたのが、V35型系スカイラインだった。

“新・基軸、FMパッケージ”の採用

 理想のプレミアムスポーツセダンを生み出すために、開発陣は車両パッケージングそのものから刷新した。採用したのはV6エンジン専用フロントミッドシップの新世代「FMパッケージ」で、これにより従来は相反すると考えられていた要素、つまり「スポーティな走りと高級サルーンの乗り心地」「ロングホイールベース(2850mm)と優れた取り回し性能(最小回転半径5.3〜5.5m)」「空力の良いスタイル(Cd値0.26〜0.27)と広い室内空間」の両立を可能とする。また、走りそのものに関しても、サスペンションがしなやかにストロークする“フラットライドコンセプト”やしっかり感のあるハンドリングを生み出す“ゼロリフト”などを実現した。

 サスペンションはフロントが新設計のオールアルミ製マルチリンク式、リアが剛性の向上と軽量化を図った改良版のマルチリンク式を採用する。さらにダンパーには、路面から伝わる微振動を抑制し、かつ接地性も高めるリップルコントロールショックアブソーバーを装備した。ブレーキは前後ともにベンチレーテッドディスク式で、高い制動力が得られるファインコレクティブパッドを組み込む。

 搭載エンジンはeVTC(電子制御式連続可変バルブタイミングコントロール)を内蔵したVQ30DD(NEO Di)型2987cc・V6DOHC(260ps/33.0kg・m)とVQ25DD(NEO Di)型2495cc・V6DOHC(215ps/27.5kg・m)という2機種の改良版直噴ガソリンエンジンをラインアップする。また、トランスミッションにはVQ30DD型に新しいシフトパターンを採用したマニュアルモード付フルレンジ電子制御5速ATの“5M-ATx”を、VQ25DD型にマニュアルモード付フルレンジ電子制御4速ATの“M-ATx”を設定した。

プレミアムスポーツセダンにふさわしい内外装の演出

 内外装に関しても、FMパッケージを採用した効果が存分に発揮される。スタイリング全体はショートオーバーハングと大径タイヤによるスポーティでFR車らしい佇まいと、ロングホイールベースによる広くて快適なキャビンの両面を表現するデザインで構成。また、縦目2灯風の異形ヘッドランプやLEDを片側18個用いたブレーキランプ、流れるような造形のルーフライン、抑揚のあるフェンダーなど、各部にも工夫を凝らした。さらにボディ色には、光輝感の強いダイヤモンドシルバー・メタリックのほか、立体感を強調するシャンパンシルバー・チタンメタリックや深みのあるフレアレッド・パールメタリックなど、プレミアム感を盛り上げる全6タイプのカラーを用意する。

 室内空間は、ドライバーを含めたすべての乗員がそれぞれのシートでベストツーリングポジションを確保できる設計とした。運転席パワーシートは、シート全体が60mmリフト/240mmスライドする機構を内蔵し、様々な体型に合わせた最適なドライビングポジションが得られるように配慮する。また、助手席には専用のシートクッションやヘッドレストを、後席にはスポーツリクライニングシートを奢った。インテリア全体のデザインに関しては、T字型のシンボリックな構成とし、大人4名のパーソナルコンフォートを表現する。カラーリングはブラック/エクリュのツートンが標準仕様で、ほかに黒を基調としたスポーティなSコレクションとエクリュを基調としたPコレクションを設定した。

走りと内外装にさらなる磨きをかけて−−

 市場に放たれたV35型系スカイラインは、路面追従性の高い足回りやレスポンスのいいハンドリング、さらにしなやかな乗り心地などで好評を博す。一方、スタイリングについては賛否両論で、従来のスカイライン・ファンからは“らしさ”がなくなったと酷評されるが、プレミアム性が引き上がったと評するユーザーも数多くいた。また、V35型系は当初の予定通り、歴代スカイラインで初めて本格的な輸出モデルとして活用される。海外でのネーミングは「インフィニティ“G”」シリーズを名乗った。

 V35型系スカイラインは、デビュー後も着実にラインアップを増やしていく。2001年9月には、“スノーシンクロモード付アテーサE-TS”を備えた4WD車の「250GT FOUR」を追加。2002年1月には、スエード調クロス地シートなどを装着したお買い得仕様の「250GTm」とVQ35DE(NEO)型3498cc・V6DOHCエンジン+エクストロイドCVT-M8を積み込む「350GT-8」を発表(350GT-8は同年2月に発売)した。2003年1月になると、大胆なモディファイを敢行した「スカイラインクーペ350GT」が登場する。当時に、セダンモデルも内外装や足回りなどのマイナーチェンジを実施した。

 V35型系のラインアップ増強は、まだまだ続く。2003年6月には、セダン350GT系に6速MT仕様を設定。2004年11月にはマイナーチェンジを実施し、内外装の一部変更やメカニズムの改良(アテーサET-Sの多板クラッチ制御の電磁式化やスポーツチューンドサスペンションの採用など)を行う。2005年になると、4月に特別仕様車「リミテッドレザー」の発売を、11月に装備の充実をメインとした一部改良を敢行した。
 21世紀型のプレミアムスポーツセダンとして、大きな脱皮を遂げたV35型系スカイライン。その基本コンセプトは、2006年11月にデビューする12代目のV36型系スカイラインによって、さらなる発展を見せることとなった。