ブルーバードU 【1971,1972,1973,1974,1975,1976】

日本のオーナーカー代表

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日本のオーナーカー代表の系譜

 1959年8月に日産自動車のダットサン・シリーズは210系から310系にモデルチェンジされ、新たに“ブルーバード”の名が与えられた(正式名称はダットサン・ブルーバード)。このネーミングは、当時の日産自動車社長であった川又克二氏が、童話の「青い鳥」にちなんで付けたものだと言われる。モダンでスタイリッシュなスタイリングに進化した310系ブルーバードは、そのテールライト形状から、通称“柿の種”とも呼ばれた。ちなみに310系ブルーバードは、自家用車としての使用を前提にデザインされていたが、当時のユーザーの主流はまだまだタクシー業者であり、多くは営業車として使われることになる。

 次のピニンファリーナ・デザインの410系になって、日本でもようやく本格的な自家用車としての使用が増加し、トヨタのコロナとBC戦争と言われるほど熾烈な販売合戦を繰り広げる。そして、スーパー・ソニックラインで知られる鋭角的なスタイルを特徴とする510系を経て、1971年8月にデビューしたのが、今回の主役ブルーバードUである。開発コードナンバーは610系を名乗った。

個性的な“Jライン”を持つスタイリング

 610系ブルーバードUは、シャープなラインで構成した510系ブルーバードからガラリと印象を変え、優美な曲面フォルムを纏って登場した。“モーレツからビューティフルへ”価値観を大変換しつつあった時代の空気を読みとっての変身で、メーカーではそのスタイリングをメロディアスフォルムと呼んでいた。

 話題はピラーレス式HTモデルが登場したこと。510系ではライバルのコロナHTを意識してあえてクーペとしていたが、ブルーバードUでは全面対決を挑んだのである。伸びやかなラインで構成する造形にはクーペよりもピラーレスのHTのほうが似合ったこともHT誕生を後押しした。スポーティなSSS系グレードではウインドー周囲のアクセントガーニッシュの色をブラック、ホワイト、オレンジの3色から選べたことも楽しい演出と言えた。サファリラリー制覇の血統を持つ熟成のメカニズムが、ドレッシーなスタイリングとともに楽しめるHTモデルはブルーバードUの主力モデルと言っていい存在だった。
 ちなみに基本的にはブルーバードUは510系からのモデルチェンジ版という性格だが、デビュー直後は510系との併売であった。Uが510系より上級移行したいたことと、デザインの印象を大きく変えたためメーカーとしては心配だったのだろう。

 ボディーバリエーションは前述の2ドアHTをイメージリーダーに、4ドアセダン、5ドアワゴン、そしてワゴンの商用車仕様である5ドアバンの4種があった。グレードは17種が揃えられ、多グレードによる差別化が始まっていた。
インテリアは質感を重視した造型と仕上げが施され、SSS系は、スポーティな6連式の円形メーターを配置。DXやGLなどの一般グレードは角型3連メーターを配置したジェントルなデザインで仕立てられていた。ともに上級モデルには木目パネルがアクセントに使われている。

タフな走りを支える伝統のメカニズム

 メカニズムは基本的に510系を受け継いでいる。エンジン排気量は1.6リッターと1.8リッターは2種でいずれも直列4気筒SOHCだが、1.4リッター仕様は無い。チューニングの程度は若干向上しており、1596㏄仕様がシングルキャブの100ps/6000rpmとツインキャブの105ps/6200rpmの2種。1770㏄仕様ではシングルキャブ仕様110ps/6000rpm、ツインキャブ仕様115ps/6000rpmに加えて、ボッシュ製電子制御燃料噴射装置を搭載した125ps/6200rpmがあった。電子制御燃料噴射装置の搭載は国産車としては3番目となる。エンジン仕様の多様さでは、この時期日産はトヨタを始めとするライバルを完全にリードしていた。

 トランスミッションは4速マニュアルと3速オートマチックがあり、シフトレバーの位置はフロアシフトがメインである。ブレーキはフロントがサーボ付きディスク、リアがドラムの組み合わせ。サスペンションは前がストラット/コイル・スプリング、後はセミトレーリングアーム/コイル・スプリング。駆動方式は無論フロントエンジン、リアドライブである。
 510系のスポーツ路線から、ブルーバードU(610系)で高級車路線への転換を企てたのだが、それは必ずしも成功せず、ブルーバードの人気は下降線を辿ることになる。510系のイメージがあまりに強すぎたのだ。