ラウム 【2003,2004,2005,2006,2007,2008,2009,2010,2011】

フレンドリーな誰もに優しい2BOX

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2代目の開発テーマは「ユニバーサルデザインの追求」

 ドイツ語で部屋を意味する「Raum」のネーミングを持つトヨタ・ラウムは2003年5月に2代目に進化した。ラウムは、スライド方式のリアドアを採用したコンパクトなミニワゴンである。2代目は初代からの5ナンバー規格の小型サイズの中に広い室内空間を確保するだけでなく、誰もが使いやすい工夫をふんだんに取り入れるというコンセプトを継承。助手席側センターピラーを廃止した“パノラマオープンドア”の導入など、一段と実用性に磨きをかけた。

 2代目の開発テーマは「クルマ作りにおけるユニバーサルデザインの追求」だった。ユニバーサルデザインとは、国籍、文化、年齢や性別に関わらず誰にとっても利用しやすいデザインのこと。2代目ではパノラマオープンドアはもちろんのこと、ドアノブの形状や位置をはじめ、各スイッチの配置、メーターの文字フォントまで、すべてをユニバーサルデザインの観点で検証、リファインしていた。どんなクルマでも使いやすさへの配慮は盛り込んでいるが、2代目ラウムほど徹底した例は珍しい。ラウムは世界で最もパッセンジャーフレンドリーな、隠れた先進モデルだった。

大開口パノラマオープンドアで優れた乗降性を実現

 ボディタイプはスライド方式のリアドアを持つ2BOXワゴン。全長4045×全幅1690×全高1535mm(2WD)の立体駐車場に収まるコンパクト設計で、最小回転半径は4.9mmと小回りが効いた。2代目の特徴は前述のように助手席側センターピラーを廃止したパノラマオープンドアである。前後ドアをフルオープンすると開口部は1500mmにもなった。さらに室内高を1220mmと十分に採り、助手席シートには折りたたみ自在のタンブル機構を盛り込んだ結果、後席への乗降性は通常のミニバン以上に優れていた。

 インパネやシート、ルーフ部などにはアシストグリップを豊富に配置。まさにユニバーサルデザインの視点で仕上げたことが実感できる空間だった。ベースモデルを除き助手席側スライドドアに電動開閉機構を盛り込み、リアゲートに開閉に力がいらない横開き方式を採用した点にもユニバーサルデザインの思想が感じられた。

安全の観点で視界と操作性を構築したラウムの運転空間

 2代目ラウムのコクピットは「ドライバーにとって入ってくるすべての情報が安全運転のための大切なサイン」という考え方の元、見やすさと分かりやすさを追求していた。

 メーターは前方への視線をそらさずに自然に確認できるセンターメーターとし、大型の速度計を中央に配置する。さらにステアリングを楕円形状とすることでメーターの視認性をリファインした。楕円形状ステアリングは乗降性のアップにも貢献。各スイッチは機能ごとに配置を分けた大型タイプである。
 視界もワイドだった。前方はもちろん、ベルトラインを下げサイドや後方もワイドな全方位が見通せるよう工夫していた。ラウムははじめてドライブしても乗り馴れたクルマのような安心感を与え、実に運転しやすいクルマに仕上げられていた。

ヴィッツ用をリファインしたエンジンとサスペンション

 1496ccの排気量から109ps/6000rpmと14.4kg・m/4200rpmの出力/トルクを発生するエンジンと、前がストラット式、後ろがトーションビーム式(4WDはトレーリング車軸式)のサスペンションはヴィッツのリファイン版。トランスミッションは電子制御式の4速ATでセレクターはインパネに配置していた。走りは格別速くはないが、実用上満足できるレベル。乗り心地を重視してソフトに設定したサスペンションと相まって、自然にジェントルな運転になるクルマだった。

 グレード構成は“ラウム”を名乗るベースモデルを基本に、助手席側電動スライドドア、タコメーター、プライバシーガラス、電動格納ドアミラーなどの装備を追加したCパッケージ、さらにスマートドアロック機構、赤外線センサー付きオートAC、前後席アームレストをプラスするGパッケージ、エアロパーツ、15inアルミホイール、本革巻きステアリングを標準装備したSパッケージの4グレード構成。駆動方式はFFと4WDを設定していた。

 2代目ラウムは、発表年の2003年に広範なユーザーによる使用を可能にした製品に送られるグッドデザイン「ユニバーサルデザイン」特別賞を受賞。開発コンセプトが公に認められた。ラウムは絶対的な販売ボリュームこそさほど多くなかったが、価値を認めたユーザーの高い信頼を集め、販売は堅調に推移する。2006年12月には装備の一部見直しなどの改良を受け、2011年10月に惜しまれながら生産を終了。2012年7月に実質的な後継モデルとなるスペイドにバトンタッチした。
 ラウムはメーカーの良心が結実した隠れた名車。後席スライドドアの利点を多くのユーザーに認識させた功績は大きい。