グロリア 【1999,2000,2001,2002,2003,2004】

走りと存在感を強調した11代目

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スポーティーさが際立つ11代目

 1999年6月、グロリアはセドリックと共にフルモデルチェンジを受け、11代目のY34型となった。旧型とは打って変わった近代的なスタイリングは、メーカーでは明言していないがポルシェ・デザインの手によるものとも言われた。

 新型はグロリアとセドリックの性格分けをはっきりと行ったのも特徴だった。3代目以降のグロリアは内装や装備などに若干の相違はあるものの、セドリックと兄弟車と言うよりはほとんど双子車と言えるほどだったが、Y34型は主にサスペンションのセッティングなどにセドリックとの違いを明確にし、従来からのスポーティーなイメージを強調していた。それまでは、セドリック系とグレードや価格まで同じであったのだが、このY34型になってからは異なるグレード名称と価格で販売されるようになった。

見るたびに新しい印象を与える造形!

 11代目グロリアの熱い想いは、スタイリングに宿っていた。デザイナーは理想のグロリアを実現するための最も重要なファクターは“見る者の目を奪い、新たな発見のあるデザイン”だと確信していたという。そのため、高級車のデザインはこうあるべき、という既成概念にとらわれることなく“デザインの革新”を合い言葉に“世代を飛び越えた斬新デザイン”の実現に邁進した。

 目指したのは。パーソナルサルーンにふさわしい、個性的で走りのイメージを感じさせる塊感。モールなどの装飾に頼ったデザインではなくフォルムそのものの磨き込みにより存在感を演出した。さらに実際に走りの姿がダイナミックかどうかに徹底的にこだわったという。
 採用案のデザインをベースにしたFRP製ボディを作成し、試作ランニングシャシーに組み合わせてテストコースを走らせたのだ。動く姿の検証のためである。静止状態のボディのハイライトだけでなく、走行時のボディのハイライト、タイヤ&ホイールが与える動感にも注意を払ったデザインはこうして完成した。ちなみにサイドビューは船の竜骨をイメージした逞しい骨格が全体のワイド感を主張する造形でまとめていた。

メカニズムは電子制御をフル投入

 エンジンはVQエンジンと呼ばれるV型6気筒DOHC。ここでもセッティングに微妙な違いを与えてスポーティーさを前面に押し出している(性能数値的には共通)。エンジンのバリェーションは、日産の独自開発によるガソリン直接噴射システムを装備したユニットが主力で、2.5リッターと3.0リッターの自然吸気型、および3.0リッターにターボチャージャーを組み合わせた上級仕様、そして低速トルクの強さと軽量さを活かし4WDモデル専用エンジンとなる2.5リッターにターボチャージャーを組み合わせた直列6気筒DOHCの4種があった。

 3.0リッターのターボ付きエンジンの出力が280ps/6000rpmに抑えられているのは、当時日本のメーカー間ではエンジンの最高出力に関する自主規制があり、出力上限を280psとしていたからだ。ポテンシャル的にはもっとパワフルだった。ちなみにサスペンションもエンジンなどの味付けを、モデルによって比較的簡単に変えられたのは、電子制御システムを全面的に採用したことの賜物であった。

次世代トランスミッションCVTを設定!

 シャシーも新世代に移行し、リアサスペンションはマルチリンク/コイル・スプリングのコイル・スプリングとショックアブソーバーを分離して配置するという高度な設計となった。前後サスペンション共にスタビライザーを備え、トランスミッションは4速オートマチックが標準装備となっていた。

 1999年11月には、セドリックと共にトランスミッションに構造が簡単で動力伝達効率に優れる電子制御式トロイダルCVTとよばれる新世代の変速装置を導入した。スムーズな変速と静かさでは他を圧倒したが、製造の高コストと過大な重量のためにより小型モデルへの拡大装備が難しく、それ以上の発展を見ることは無かった。また、4輪駆動モデルには、これも日産独自のフルタイム4輪駆動システムであるATEESA (アテーサ)E-TSが搭載された。前述のように4WD仕様のエンジンは2.5リッターの直列6気筒DOHCターボ(260ps/6400rpm)のみの設定となっていた。

大型エアダムがグロリアの特徴に

 グロリアの特徴として、エクステリアではフロントグリルのデザインがセドリックとは違った。横バーを基調としたものとされ、エアダムスカートも大型化されている。テールライトは一部にLEDを使って視認性を高めている。

 インテリアは贅沢を極める。センターコンソール上部には、走行中の燃費や走行距離から割り出したエンジンオイルの交換時期などの各種情報や、車速感応式のドアロックの速度域の変更操作、オプションで組み込めるナビゲーション・システムを表示するトータルインフォメーションディスプレーが全車種標準装備され、ドアの開閉によってウィンドウが上下して乗り降りの便を助けるパワーウィンドウなども装備した。

 夜間にドアを開けるとリアのサイドウィンドウの縁が緑色に光るドアガラス・エッジイルミネーション機構や走行中に前車との車間距離が短くなると警報を発する車間距離レーダー・システムなども搭載出来た。これらの装備は、最上級車種のシーマにも無いもので、まさに電子機器の塊と言えるものとなっていた。安全装備も充実しており、前席エアバッグ、ABS、ブレーキアシスト、シートベルト・プリテンショナー(衝突時にシートベルトを巻き締める装置)は全車種標準装備となり、一部車種に車両安定装置であるEBD、VDCがオプション設定となる。車両価格は311万から494万円まで。

 1959年の初代から11代目まで、46年間にわたったグロリアの名も、2004年10月にデビューした「フーガ」に後を譲って、パーソナルモデルとしてはセドリックと共にカタログから消えた。トヨタのクラウンとは異なる意味で、日本の高級車として残した足跡は、はなはだ大きなものであった。