カペラ 【1982,1983,1984,1985,1986,1987】

FFレイアウトに一新した国際派

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走りのミディアムFF車の開発

 エンジンルームがコンパクトになり、居住空間も広くとれるフロントエンジン&フロントドライブ(FF)のレイウアト。この方式の利点を生かし、大ヒットしたクルマが、1980年6月に登場したBD型系ファミリアだった。FF方式はクルマ造りに大きなメリットをもたらす。東洋工業(現マツダ)の開発陣は、中核車であるカペラの次期型にFF方式を導入する決定を下した。

 カペラをFF化する際、開発陣は徹底的に走りにこだわる。他社製のFFミディアム車は居住性や直進安定性の向上は果たしたものの、ハンドリングの上質感やコーナリング時のコントロール性に関してはいまひとつのモデルが多かった。走りを楽しめるFFミディアム車に仕上げるためには--。開発陣はシャシー性能に磨きをかける。サスペンションはマクファーソンストラット/ストラットに一新。前後のトレッド幅を拡大し、上級仕様向けには電子制御減衰力可変ダンパーを組み込んだ。さらに、FF化による前荷重の増加に対応するため、フロントセクションやエンジンマウントの強化も図った。

世界トップのエアロボディ採用

 ボディは、徹底したフラッシュサーフェス化や前面投影面積の縮小などを施した新エアロフォルムを採用する。Cd値(空気抵抗係数)はセダンが0.36、クーペが0.34と、世界トップレベルを達成。また、ステアリング形式はボールナット式からラック&ピニオン式に変更し、操舵時の応答性を大幅に引き上げた。

 横置き搭載されるエンジンは、3機種の“マグナム”ユニットを新設計する。特徴は、ショートストローク設計にあった。当時はエンジン長を抑えるためにボアを小さく、ストロークを長くするのが一般的だったが、東洋工業の開発陣は俊敏な吹き上がりと高出力を重視し、あえてショートストロークを選択。エンジンのコンパクト化に関しては、スリーブ間の短縮やパワーに無関係な部分の設計簡略化で対応した。

 完成したユニットは、F6型1587cc直4OHC(90ps/13.0kg・m)とF8型1789cc直4OHC(100ps/15.2kg・m)、そしてFE型1998cc直4OHC(120ps/17.0kg・m)という3タイプで、FE型には電子制御燃料噴射装置を、ほかの2機種にはキャブレターを装着する。トランスミッションは、5速MTと4速MT、さらに3速ATを設定する。

スポーティ性を強調して市場デビュー

 FF方式を採用した新しいカペラは、GCの型式を付けて1982年9月にデビューする。キャッチフレーズは「俊足、FFスポーツ」。ボディタイプは4ドアセダンと2ドアクーペを用意。生産工場は新設されたばかりの防府工場(山口県)が担った。

 市場に放たれたGC型系カペラは、有名俳優のアラン・ドロンをイメージキャラクターに据えた広告効果などもあり、好調な販売成績を記録する。スポーツ性を前面に押し出したパフォーマンスも注目を集め、とくにFE型エンジンに走りのアイテムを満載するGT-Xグレードは「欧州志向の走りが楽しめるスポーティセダン&クーペ」として高い評価を受けた。

自動車各賞の獲得と車種展開の拡大

 GC型系カペラは日本で1982-83カー・オブ・ザ・イヤーを、アメリカで1983インポート・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したほか、内外の自動車専門誌でも各賞を獲得するなど、多くの栄誉に輝く。

 東洋工業の開発陣は、GC型系カペラの改良を精力的に実施していった。
 1983年9月には、“マクナム・ディーゼル”と称するRF型1998cc直4OHCディーゼルエンジン(72ps)を搭載した仕様を設定。1カ月の10月には、FE型エンジンにターボチャージャーを組み込み、145psの最高出力を発生する新エンジンを積んだスポーツグレードが追加された。1985年5月になるとマイナーチェンジが敢行され、内外装の意匠変更や電子制御燃料噴射装置付きF8型エンジンの採用、ターボチャージャーエンジンへのインタークーラーの装着、5ドアハッチバック仕様の追加設定などを実施する。

 スポーツ性能のほかに、ディーゼルエンジンの搭載による優れた経済性や5ドアハッチバック仕様の追加による高い実用性をも手に入れたGC型系カペラは、1987年5月になってフルモデルチェンジが実施される。4年8カ月もの期間に渡ってリリースされ続けた背景には、ユーザーを惹きつける先進的な車両コンセプトに加え、開発陣の積極的な改良と有効な車種拡大があった。