シビック・フェリオ 【1991,1992,1993,1994,1995】
キャッチコピーは「4人でするスポーツ」
シビックは、セダンモデルを設定しているにもかかわらず、コンパクトハッチバックのイメージが非常に強かった。本田技研の開発陣はシビック・セダンの認知度の向上を目指した様々な施策を、5世代目となる通称“スポーツシビック”で実施する。
2カップルズ・セダンをテーマに、前後席2組のカップルが自在にコミュケーションできる新しい空間を提案。スタイリングは、ホイールベースを従来比で120mm延長しながらオーバーハングをフロント15mm/リア20mm短縮し、ロングホイールベース&ショートオーバーハングのフォルムにまとめる。そのうえで、新感覚のインテグラルノーズから傾斜を強めたフロントウィンドウをつたってルーフへ、そしてクーペのように流れるリアウィンドウを経てショート&ハイデッキのトランクリッドに至るスポーティで力強い“ユニフォルム・ハイデッキデザイン”を創出した。
空力特性も重視し、ドアサッシュ/サイドウィンドウ/ドアハンドルなどのフラッシュサーフェス化やフロア面の整流性の向上を実施してCd値(空気抵抗係数)を従来比で約20%も引き上げた。
搭載エンジンは吸気バルブ休止と希薄燃焼方式を実現したD15B型1493cc直4OHC16V(94ps/13.4kg・m)の“VTEC-E”のほか、吸気バルブタイミング・リフト切り換え機構を組み込んだD15B型1493cc直4OHC16V(130ps/14.1kg・m)の“VTEC”、そしてツインカムのヘッドに吸排気バルブタイミング・リフト切り換え機構を採用するB16A型1595cc直4DOHC16V(MT170ps/16.0kg・m、AT155ps/15.6kg・m)の“DOHC VTEC”をメインに設定する。
さらに、ハッチバック仕様には未設定のリアルタイム4WD機構(エンジンはOHCとDOHCの2機種のZC型を搭載)を組み込んだモデルも開発した。
シビックのセダンモデルをここまでスポーティ志向に振ることができたのは、快適性を重視したシビック・ベースの新型コンパクトサルーンを開発する旨が決定していたからだった。従来のコンチェルトの実質的な後継モデルとなる快適サルーンはドマーニの名が付けられ、1992年10月にリリースされることとなる。
イメージアを一新したシビックのセダンモデルは、新たにフェリオのサブネームを付けて、1991年9月に市場デビューを果たす。キャッチフレーズは「4人でするスポーツ」。専用開発のスポーティなスタイリングとインテリア、そして新VTECエンジンや熟成した四輪ダブルウイッシュボーン式サスペンションなどによる優れた走りが楽しめる点を、このフレーズで強調したのである。
「4人でするスポーツ」が最も満喫できたのは、B16A型エンジンに専用セッティングの5速MTまたはロックアップ機構付7ポジション4速ATを組み込んだ“SiR”グレードだった。ショックアブソーバー&スプリングをハードに仕上げたうえでフロント・タワーバーおよびパフォーマンスロッドや前後スタビライザー、Vレンジの55扁平タイヤなどを装着したSiRは、従来のシビック・セダンでは味わえなかった本格的なスポーツ走行が楽しめた。
各部もスパイシー。フロント・ロアスカートやボディ同色トランクスポイラー、本革巻きの3本スポークステリアング、ホワイトパネルのコンビメーター、後席もセパレート形状としたフル4シーター・スポーツシート(乗車定員4名)などの装備群が、スポーツ派ドライバーの所有欲を満たす要素となった。
高いポテンシャルを誇るシビック・フェリオSiRは、無限などのチューナーの手によってモータースポーツの分野にも起用される。1993年からはJTC(全日本ツーリングカー選手権)グループAに参戦。JTCC(全日本ツーリングカー選手権)に移行した1994年シーズンにはエンジンをB18C型1797cc直4DOHC16V・VTECに、1995年シーズンにはH22A型2156cc直4DOHC16V・VTECに換装したフェリオがサーキットを駆け回った。
ホンダ製のコンパクトスポーツセダンとして、確固たる地位を築いたシビック・フェリオは、1995年9月になるとフルモデルチェンジが実施され、“ミラクルシビック”と称したEK型系に移行する。新型では最上級グレードの名称がSi/Si-IIに改称されたものの、スポーツセダンとしての特性は確実に引き継がれていた。