グロリア 【1991,1992,1993,1994,1995】

ドライビングプレジャーを重視したスポーティサルーン

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栄光という名を持つ高級サルーンの進化

 日本の経済が、ある種の極めて特殊な状態にあった(つまりバブル景気の)1991年6月、日産は伝統車種であるグロリア/セドリックのフルモデルチェンジを実施する。それぞれ9&8代目となった両車は、典型的なバッジエンジニアリングの手法で作られており、異なるのは各部に付けられたエンブレムやオーナメント程度となっていた。グロリアの始まりは、1966年8月に日産自動車に吸収合併される以前のプリンス自動車が最高級乗用車として造り上げたモデルで、グロリアの名は当時の皇太子殿下(平成天皇陛下)のご成婚を記念して採用したもの。グロリア(Gloria)とは栄光を意味するラテン語である。

BIGスポーティーセダンに変身した9代目

 9世代目となったグロリアはフォーマルな雰囲気を払拭し、大柄なスポーティーセダンとしての存在感を強めていた。旧型から大きく変わった点は、4ドアピラードハードトップと呼ばれるボディ構造を採用したことだった。従来のピラーレスからセンターピラーを持ったことにより、ボディ剛性は大幅な向上を実現。それは乗り心地やハンドリング性能、静粛性の向上にもプラスをもたらした。

 ボディスタイリングはセドリック系と細部を除いて変わらず、フルモノコック構造の5人乗り4ドアである。ボディ面は旧型の直線基調のものから一転して、シーマに共通する丸味を帯びたものとなった。バリエーションは、スポーティー指向の4灯式ヘッドランプを持つ、グランツーリスモ系と、フォーマル志向の角型2灯式ヘッドランプを持つブロアム系で構成され、サイズ的には全車種3ナンバーサイズ化された。

255psターボを筆頭に5機種のパワフル心臓を設定

 搭載されるエンジンは、当時の日産上級各車に使われている排気量2960ccのVG30DET型V型6気筒DOHC24Vターボ(出力255ps/6000rpm)を筆頭に、2825ccのRD28型直列6気筒SOHCディーゼル(94ps/4800rpm)まで、5種が揃えられる。主力は3種のチューニングから選べたVG30系のV6/2960ccユニットだった。トランスミッションは全車種5速および4速のオートマチックとなり、マニュアル仕様はない。駆動方式はフロント縦置きエンジンによる後ろ2輪駆動。

 サスペンションはセドリック系と共通で、前が旧型と同様のストラット/コイルスプリングのままだが、後ろは旧型のトレーリングアーム式からマルチリンクとコイルスプリングの組み合わせに換えられた。トップグレードであるブロアムVIP仕様には電子制御エアサスペンションもある。ブレーキは4輪ともベンチレーテッドディスクとなった。

 インテリアのデザインも基本的にはセドリック系に共通するものだが、ドア内張りやインスツルメンツパネル、シート表地などの内装色や装備に若干の相違がある。一部グレードでは運転席にSRSエアバッグを装備し、全車サイドドアビームや電子式パーキングブレーキ解除システムを標準化するなど、安全対策も時代の要求に応える形で確実に進化を見せていた。

キーワードは“ニューダイナミクス・グロリア”

 9代目のグロリアのカタログには「MIND SHIFT『高級』の次へ。ニューダイナミクス・グロリア誕生」というキャッチコピーが記されていた。それに続く「時代は動いています。日産は日本の高級車観を大きく揺り動かします。高級車をサイズや性能、装備の豊富さで語るのではなく、その本質に大きな余裕を備えた、おおらかなクルマとして語りたい。新しいグロリアは明快な主張に貫かれ、誕生しました。ドライバーの思うままに、伸びやかに走り、悠々と曲がり、ゆとりを持って止まれる高級車ならではの動的クオリティの高さ。そこには上質なドライビングプレジャーが満ちています。お乗りになる方の心に響くエンジニアリングの温もりがあります。高級車の新たな躍動——ニューダイナミクス・グロリア」のコピーが、9代目の新しさを的確に表現していた。装備ではなく走りで高級を語るクルマ、それが9代目グロリアだった。

 最大のライバルであったトヨタのクラウン系がフォーマルカーとして大きなシェアを築いていたから、グロリアの生き残る道はスポーティー化が最適だった。グロリアのスポーティー路線は着実な成功を収めることになる。