レジェンド 【1996,1007,1998,1999,2000,2001,2002,2003,2004】

体感性能を追求したホンダのフラッグシップ

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高級車の新しい価値を目指した3代目

 市場でレクリエーショナルビークル、いわゆるRVが人気を博した1990年代前半。一方で、バブル景気時代に隆盛を極めた高級車群は岐路を迎えていた。既存の価値観やステイタスなどに縛られた高級感が、ユーザーの指向と合致しなくなってきたのである。

 次世代の高級車にとって、必要とされる価値とは−−。このカテゴリーにレジェンドを送り込んでいた本田技研工業は、3代目となる次期型を企画するに当たり開発手法そのものから見直す方針を打ち出す。生み出した新手法は、人間の五感を基準にした“感研究”による高級車造り。その過程を経て導き出した結論は、乗り手がクルマに期待する感覚と実際の体感にズレがない“ヒューマン・リニアリティ”の実現が、高級車にとって必要不可欠ということだった。具体的には、1:走る=気持ちよい走り感の実現 2:操る=心地よい一体感の実現 3:安全=世界最高水準の安全と安心感の実現 4:見る=新しいプレステージ感の実現 5:乗る・座る=キャビン空間の快適感の実現 6:もてなす=ツーリングの歓びと充足感の実現、という6項目のヒューマン・リニアリティを新しいレジェンドで実現しようとした。

“感研究”という新たな開発手法

 3代目レジェンドはプレステージサルーンらしい“ヒューマン・リニアリティ”を開発テーマに掲げる。その実現のために採用したのが、走りだす前、走りだして、曲がって、止まる、という各シーンにおける気持ちよさや感じる高級を、人間の五感を基準に徹底追求した“感研究”によるクルマ造りだった。

 乗り込むシーンから一般道路走行、ハイウェイ走行、車庫入れに至るまでの“動的領域”、デザインや色彩、素材などの“静的領域”−−研究対象は100項目あまりにものぼり、導き出した結果をホワイトボディによる検証やシミュレーション解析などと相互評価することで“最上の感”を探求した。最終的に得られた結論は、「常用域の気持ちよさとは、ドライバー(人間)が期待する体感と実際の体感にズレがない“期待と体感の一致”」であり、「これが実現されたときに初めて、ドライバー(人間)の五感は気持ちよく満たされる」という事実だった。ホンダの開発陣は、“期待と体感の一致”を“ヒューマン・リニアリティ”と呼称し、技術コンセプトの核に位置づけられた。

「この高級車は世界にライバルがいる」を掲げてデビュー

 具体的な開発項目を紹介しよう。“走る”に関しては、共鳴管切り換えインテークマニホールドや複動閉塞鍛造コンロッド製法などを取り入れた新開発のC35A型エンジン(3473cc・V6OHC24V)、リニアでスムーズな走りを引き出す7ポジション電子制御4速AT、しっかり感と静かさを徹底追求した高剛性ボディなどで気持ちよい走り感を実現する。

“操る”については、改良と熟成を図った4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションや車速感応型ロータリーバルブ・パワーステアリングなどで心地よい一体感を達成。“安全”は全方位衝突安全対応ボディ等によるパッシブセーフティと安全視界の確保などによるアクティブセーフティの両面を融合して成し遂げた。

 “見る”については、洗練と高質に満ちたエクステリアデザインにエンターテインメント性を追求したインテリアデザインなどで構成する。同時に、ボディ塗装の光沢や内装材の質感にもこだわった。“乗る・座る”では、キャビンスペースの拡大のほか、振動吸収タイプの高性能シートを装着するなどして快適感の向上を達成。“もてなす”に関しては、世界最高水準の性能を備えたフルオートACや純度の高いサウンドを全席に提供するオーディオシステム、精度の高い3Dナビゲーションシステムなどの先進アイテムによって、乗員のより高い充足感を実現した。

 第3世代のレジェンドは、1996年2月に市場に放たれる。キャッチフレーズは「この高級車は世界にライバルがいる」。ボディタイプは4ドアセダンのみの設定で、グレード展開は標準仕様のほかに上級モデルのエクスクルーシブとスポーティ仕様のユーロをラインアップした。

安全性の向上と走りの進化を目的にリファイン

 ホンダの先進技術を凝縮した高性能ドライバーズカーである3代目レジェンドは、その車格に合わせた改良を随時行っていく。1997年10月には最初のマイナーチェンジを行い、TCS(トラクションコントロールシステム)やリア中央席3点式シートベルトといった安全装備を全車に標準化。また、上級アイテムを備えるスポーティ仕様のユーロ・エクスクルーシブをラインアップに加えた。

 1998年9月になると、内外装の刷新や安全性の向上を主目的としたマイナーチェンジを実施。外装ではディスチャージヘッドランプやペンタンゴン型フロントグリルなどの装着を、内装では本木目パネルの拡大展開や設定カラーの増加を、安全性能では前2席用ホンダi-SRSエアバッグシステムおよび助手席乗員姿勢検知機能付ホンダi-サイドエアバッグシステムの装着やブレーキアシスト機能の追加などを行った。

 ホンダ・ブランドならではのオリジナリティあふれる高級車として、着実に進化を遂げていった3代目レジェンド。2004年10月に4代目へと世代交代するまで、実に8年8カ月の長きにわたって同社のフラッグシップに位置し続けたのである。