ソアラ 【1986,1987,1988,1989,1990,1991】

“最高級プレステージスペシャルティ”を謳った第2世代

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“世界を超えるクルマ”を目指して−−

 英語で「最上級グライダー」を意味する車名を冠し、1981年2月に発売されたソアラ(Z10型系)は、ビッグスペシャルティカーという新しいカテゴリーを作り出すとともに、“ハイテク”と呼ばれた日本のカーテクノロジーの発展を象徴する先駆的なモデルに発展する。さらに、女性が助手席に座りたいカッコいいクルマ、すなわち“デートカー”という自動車文化を牽引し、販売台数を大いに伸ばした。

 ソアラはトヨタの技術力を市場にアピールする格好のモデル。モデルチェンジにあたって2代目は、革新的な新技術を盛り込むことが必須条件となった。次期型の開発テーマは「世界最先端技術の粋を結集した最高級プレステージスペシャルティ」の創出。具体的には従来の“世界に並ぶクルマ”から“世界を超えるクルマ”を目指した。

最新技術をフル投入して市場デビュー

 トヨタの技術力を結集した最高級プレステージスペシャルティの2代目ソアラは、Z20系の型式を付けて1986年1月にデビューする。キャッチフレーズは初代と同様の“SUPER GRAN TURISMO”。さらに、「絶え間なく進化するものだけが新しいステージに立つことができる」という一文が加わり、進化したビッグスペシャルティカーである事実を声高にアピールしていた。

 エクステリアは、従来型と同形状のノッチ付き2ドアクーペフォルムを基本としながら各部を大幅に改良する。ボディとガラスの面一化を図った球体イメージのフラッシュサーフェスキャノピーを始め、透明二重レンズの超ワイド薄型ヘッドランプやクリスタル感のある透明ポリカーボネイト製のラジエターグリル、クリア塗装を施した透明軟質プロテクションモール、ボリューム感あふれる立体的な造形のリアコンビネーションランプなどを採用し、高級感の表現と空力特性の向上を実現した。

 キャビンはホイールベースの延長や低床化およびフロア面のフラット化などによってスペースを広げるとともに、最先端のヒューマンエレクトロニクスを鋭意導入する。計器盤には視線移動の際に焦点が合わせやすい新開発のスペースビジョンメーターを装備。さらに、操作性を追求した電子コンビスイッチ&ステアリングサテライトスイッチや6インチカラーディスプレイを配したトヨタ・エレクトロ・マルチビジョン、空調とオーディオ機構のモード切替表示が可能なマルチコントロールパネル、細かく電動調整ができるマルチアジャスタブルパワーシート&マイコンプリセットステアリングなどの先進アイテムを設定する。また、インパネからドアトリムまでを質感の高いスウェード調表地材で覆うグランベールインテリアを新規に採用した。

世界初、電子制御エアサスペンション導入

 足回りは、理想的なアライメントおよびジオメトリーに仕立てた新設計の4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションをセットする。同時にバネには金属コイルスプリングのほかに世界初の電子制御エアサスペンション、さらにショックアブソーバーの減衰力を自動制御するTEMS(Toyota Electric Modulated Suspension)を採用した。ホイールベースは従来比で10mm長い2670mmに設定。また、制動システムには電子制御式スキッドコントロール装置の4輪ESC、操舵システムには電子制御式パワーステアリングのPPS(Progressive Power Steering)を装備する。

 搭載エンジンは新開発の7M-GTEU型2954cc直列6気筒DOHC24V空冷インタークーラー付ターボ(230ps/33.0kg・m)を筆頭に、1G-GTEU型1988cc直列6気筒DOHC24V空冷インタークーラー付ツインターボ(185ps/24.5kg・m)、1G-GEU型1988cc直列6気筒DOHC24V(140ps/16.5kg・m)、1G-EU型1988cc直列6気筒OHC(105ps/16.0kg・m)という計4機種を用意。駆動レイアウトはFRで、トランスミッションには7M-GTEUエンジンに電子制御式2ウェイ・OD付4速AT(ECT)、1G-GTEUおよび1G-GEUエンジンに5速MTまたはECT、1G-EUエンジンに5速MTまたは2ウェイOD付4速ATを組み合わせる。さらに、パワートレーンやサスペンション、デフ、ステアリング機構などをサブフレームで支持し、操縦安定性の向上やNVH(騒音・振動・ハーシュネス)の低減を図った。

400万円超の最上級仕様が大人気!

 第2世代ソアラのラインアップは全7グレード。7M-GTEUエンジン(230ps)搭載の3.0GTリミテッド/3.0GTリミテッド・エアサスペンション仕様/3.0GT(3.0系は全長4675×全幅1725×全高1335〜1345mmの3ナンバーサイズ)、1G-GTEUエンジン(185ps)搭載の2.0GTツインターボ、1G-GEUエンジン(140ps)搭載の2.0GT、1G-EUエンジン(105ps)搭載の2.0VX/2.0VZ(2.0系は同4675×1695×1345mmの5ナンバーサイズ)で構成する。ソアラは、後にバブルと称される稀代の好景気の後押しもあって、販売台数を大きく伸ばしていく。

 とくに人気が高かったのは最上級仕様の3.0GTリミテッド系グレードで、400万円オーバー(東京標準価格で3.0GT-LIMITEDが447万9000円、3.0GTリミテッド・エアサスペンション仕様が483万5000円)という高価格帯にも関わらず、多くの受注を獲得する。また、ボディ色ではクリスタルホワイトトーニングやスーパーホワイトIIといった白系カラーが好評を博した。

“世界にひとつ、日本にソアラ”のキャッチでマイナーチェンジ

 トヨタの2代目ソアラに対する“世界最先端技術の粋の結集”というこだわりは、デビュー後も進化という形で明確に表現されていく。まず1987年1月には、7M-GTEUエンジン搭載車に5速MTを追加。クラッチには高出力に対応したプル式クラッチスプリングを導入する。また、1G-GEUエンジンはノックセンサーを組み込むとともに最大トルクを17.6kg・mにまでアップ。さらに、1G-GTEUエンジン搭載車にエクストラ仕様を追加した。

 1988年1月になると、“世界にひとつ、日本にソアラ”というキャッチを謳ったマイナーチェンジを敢行する。変更内容は多岐に渡り、7M-GTEU/1G-GTEUエンジンのプレミアムガソリン仕様化(7M-GTEUは240ps/35.0kg・m、1G-GTEUは200ps/28.0kg・mに出力アップ)やサスペンションのセッティング変更、内外装の一部刷新、装備のバージョンアップなどを行う。さらに、1989年1月には1G-EUから1G-FE型1988cc直列6気筒DOHC24Vエンジン(135ps/18.0kg・m)への換装や1G-GEUエンジンの改良(150ps/18.6kg・m)、1G-GTEUエンジンのターボタービンの変更(210ps/28.0kg・m)などを実施した。

電動クーペカブリオレの「エアロキャビン」を発売

 1989年4月には、“変貌のテクノロジー”と称した独創的なスペシャルモデルが設定される。3.0GTのATモデルをベースに電動格納式メタルトップを組み込んだ「3.0GTエアロキャビン」が500台限定でリリースされたのだ。ルーフとリアガラスはB/Cピラーを残しながら電動で2分割に折りたたまれ、Cピラーとトランクリッドのあいだに設けるルーフ格納スペースにきれいに収まった。後席部を格納スペースにあてたため、乗車定員は5名から2名に変更。リアクォーターウィンドウの縮小およびリアノッチ部の延長も図られた。ボディサイズはベース車と同寸だったが、車重は100kgほど重い1610kgとなる。また、通常はオプション設定のエアロバンパーやリアスポイラーなどが標準装備化され、3.0GT-LIMITEDに採用するレザーシートも組み込まれた。ボディはクリスタルホワイトトーニングIIで彩られ、価格は430万9000円と高価だったが、すぐに限定台数に達して販売を終了した。

 バブル景気時代の申し子として進化、発展していった第2世代のソアラは、1991年5月になるとフルモデルチェンジが行われて第3世代のZ30型系に切り替わる。3代目はトヨタの新たな国際戦略モデルに位置づけられ、ボディサイズもエンジン排気量も完全な3ナンバー規格となった。3ナンバー車の3.0GT系を設定したものの、日本のユーザー志向を踏まえて5ナンバーボディを基本に据えていた2代目ソアラ。キャッチフレーズ通りに “日本にソアラ”と明確に言い表せたのは、もしかすると2代目がラストだったのかもしれない。