チェリーF-II 【1974,1975,1976,1977,1978】

サイズ拡大。快適さを増したFFの先駆

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4種のボディタイプを設定

 日産自動車としては初めてとなるエンジン横置き方式による前輪駆動方式を採用し、1970年10月に登場したチェリー・シリーズは、4年後の1974年9月にフルモデルチェンジされて2世代目となり、その名もチェリーF-IIとなった。ボディバリェーションは個性的なセミノッチバックの2&4ドア・セダンと2ドア+ハッチゲートのファストバッククーペ、さらに2名乗車時で400㎏の積載が可能なバン(商業車)の4種があった。

 この時代のモデルチェンジは、旧型に比べてより大きく、より豪華に、そしてより高性能にと言う具合に、全ての点で上昇志向だった。チェリーF-IIの場合も例外ではなく、シャシー、ボディは大型化され、室内装備もさらに豪華さを増した。エンジンは基本的な設計は変わらないものの、排気量の拡大による性能向上が図られていた。チェリー系のモデル開発は、スカイラインと同様1966年8月に合併した旧プリンス自動車系の技術者が中心になって行われた。メカニズムの先進性は、こうした社内事情に由来するものでもあったのである。

ボディを大型化し1.4Lエンジン登場

 2世代目となったチェリー(F10型)は、横置きエンジンによる前2輪駆動と言う基本設計は旧型から踏襲されていたが、ボディサイズがホイールベースで60㎜、全長で165㎜、全幅は10㎜それぞれ拡大され、ホイールベース2395㎜、全長3825㎜、全幅1500㎜となった。ホイールベースの拡大は、排気量を拡大し、様々な補機類が加えられて大型化したエンジンを収めるエンジンルームを拡大するための措置である。エンジン系列は、旧型が988/1171cc系列だったが、新開発の1397cc㏄を加えることで988ccエンジンがカタログから消え、1171/1397ccの2本立てとなった。

 エンジンの基本レイアウトは水冷直列4気筒OHVのままで、新設された1397ccエンジンでは2バレルキャブレターを組み合わせ、80ps/6000rpmの最高出力と11.5kg・m/3600rpmの最大トルクを得る。一方の1171㏄仕様も2バレルキャブレターを装備し、68ps/6000rpm、9.7kg・m/3600rpmを得ている。最高出力および最大トルクの発生回転数が高めであることから、このエンジンがスポーティな味付けであることが分かる。くわえて、エンジン排気量の拡大は厳しさを増す排気ガス浄化対策にも対応するためだった。

トランスミッションは全車MT仕様!

 トランスミッションは全車に旧型からキャリーオーバーされた4速マニュアルがあり、1397ccエンジン系には新しく5速マニュアルも選べるようになっていた。オートマチック・トランスミッションの設定は無かった。サスペンションは前がマクファーソンストラット/コイル・スプリング、後がトレーリングアーム/コイル・スプリングで4輪独立懸架となっていた。ブレーキは1200系が4輪ともにドラム、1400系は前がディスク・ブレーキに格上げされ、いずれもサーボアシスト装置を備える。

 タイヤは1200系と1400系のセダンとクーペが6.00‐12のバイアスタイヤ、1400系のクーペの上級車は165/70HR13のラジアルタイヤを標準装備としていた。価格は57万3000円から83万1000円まで。

便利で個性的なアメニティ装備を満載!

 1400シリーズの上級版として設定したL仕様は、ユニークな装備でユーザーを魅了する。L仕様はセダン、クーペともにスポーティなGXとラグジュアリーなGLに設定され、吟味した室内装備が自慢だった。最も目を惹いたのがゴールドブラウンのモケット地ローバックシート。欧州輸出用シートを流用したもので、通常のハイバックシートよりクッションが厚く快適性は数段上だった。シート以外にもセットした時間にラジオのスイッチが自動的に入るタイマー付きカレンダー時計や、トラッシュボックス、特製フロアカーペットなど様々なアメニティ装備を満載しており、セダン専用装備としては後席センターテーブル&トランクオープナー、クーペ専用装備はラゲッジ部を覆うトノカバーが用意された。

 個性的なスタイルと小型前輪駆動車特有の剽悍な操縦性で人気が高かったチェリーも、生産合理化と排気ガス浄化対策の嵐の中でしだいにその個性を失っていく。4年後の1978年には上級車へと進化したパルサーが登場したことでその名は消滅した。