カローラ・ランクス 【2001,2002,2003,2004,2005,2006】

21世紀思想で誕生した欧州指向コンパクト

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アクティブなランクスの登場

 9代目のカローラはすべてが斬新だった。トヨタは1997年12月には世界初の量産型ハイブリッド・セダンである初代プリウスを成功裏に売り出しており、そのスタイリングは後のトヨタ製小型車に決定的な影響を与えていた。新型カローラは、その流れに沿ったスタイリングとなっていた。スポーティーな色彩だったスプリンターと2ドアクーペ(レビン&トレノ)を中止し、4ドア・3ボックスセダンとカローラ・フィールダーと呼ばれる2ボックスのワゴンでスタートしたカローラ・シリーズは、翌2001年1月に5ドア・ハッチバックのカローラ・ランクス(そして兄弟車のアレックス)をシリーズに加える。ランクスのボディは、欧州市場を見据えたものであると同時に、スプリンターに代わるスポーティーモデルとしての位置付けがあったことは間違いない。

 VWゴルフの例を見るまでも無く、ヨーロッパでは5ドア・ハッチバックはアクティブなイメージを持った定番的な車種となっているのである。カローラ・ランクスは、トヨタの新世代への新たな提案でもあった。ちなみに、ランクス(Runx)という車名は、英語で「走る」を意味するRunに究極を表すXを付けた造語で、究極的な走りを意味するものだという。

欧州デザインスタジオが原型を担当!

 ランクスの造形は、国際基準の小型車としてゼロから開発された。開発テーマは“国際派パッケージングの創造”。具体的には取り回しに優れたサイズ(日本の5ナンバーサイズ)のなかで広い居住空間を確保することを目標とした。従来モデルとの寸法上の大きな相違はホイールベースを伸ばし2600mmとしたこと、そして全高を1470mmと85mm高くしたこと。ランクスは低いシルエットのほうが格好いいという既成概念を一挙に覆す伸びやかで安定感ある21世紀フォルムを提唱した。同時にホイールベースと全高の増加は大幅な室内スペース拡大をもたらし、開発テーマどおりの国際派に成長する。

 9代目カローラのスタイリングは欧州のデザインスタジオが原案を担当している。寸法面だけでなく、ボディの面構成でもボリューム感を重視したテイストとなったのは欧州スタジオの個性が表現された結果だった。フロントグリル中央に従来モデルより数段大きなトヨタのシンボルマークを配置したのも欧州タッチの現れと言える。

充実した安全装備が美点

 ランクスのシャシーはセダンやフィールダーと共通仕様。全長は4175mmでセダンより190mm短くしてトランク部分を取り去りリアハッチを取り付けている。インテリアはセダン系に準じたオーソドックスなもので、5人乗りとして十分な広さがある。リア・シートは分割可倒のシートバックを持ち、実用性を高めている。安全装備はきわめて充実していた。SRSエアバッグ、EBD(電子制御制動力配分装置)付きブレーキ・アシスト、ABSは標準装備であり、VSC(スタビリティコントロール)やTRC(トラクションコントロール)などはオプション設定となる。キメ細やかな配慮をこらすが革新的すぎないのは、トヨタ製実用車に共通した点だ。

 搭載されるエンジンは1496ccと1795ccの2種があり、いずれも水冷直列4気筒DOHC16バルブ。1.5L仕様は110ps/6000rpm、1.8L仕様は可変吸気バルブおよびリフト機構などが装備されて190ps/7600rpmの最高出力を発揮する。トランスミッションは電子制御4速オートマチック(スーパーECT)と1.8L仕様にのみ設定される6速マニュアルの2種がある。駆動方式はフロント・エンジン、フロント・ドライブが基本で、1.5リッター仕様に限って4WDモデルが設定される。サスペンションもセダン系に共通したもので、前がマクファーソン・ストラット/コイルスプリング、後がトーションビーム/コイルスプリングの組み合わせ(4WDモデルのリアはダブルウィッシュボーン式)。フロントブレーキは全車ベンチレーテッドディスクだが、1.5L仕様(14インチ径)と1.8L仕様(15インチ径)でサイズが異なる。タイヤも1.5L仕様が185/70R14なのに対して、1.8L仕様では195/60R15となる。絶対的な性能向上に対処したものだ。

新たな時代へのチャレンジの始まり!

 世界的に見ても、スタイルや装備されるエンジンに違いこそあれ、同一車種として40年以上の永きに渉って生産が続けられたモデルはそれほど多くはない。特に実用的な車種で見れば、カローラの他にはフォルクスワーゲン・ビートルやゴルフ、ミニ、シトロエン2CV程度だ。

 カローラというブランドは、トヨタのみならず、日本車を代表するものとなったわけだが、このランクスが登場するまでのモデルでは、いささか設計やスタイリング・デザインが保守的になっていたのは仕方がないことでもあった。2000年代に入って、カローラという車名とは異なるネーミングを加えて、新しいシリーズとする試みが行われたのは、同じ時期にトヨタが永年親しまれたマークIIやコロナの名を止めたのと同じ意味を持っていた。カローラというブランドにとっての一つの区切りとなったのである。
「ランクス」はカローラ・シリーズにとっては新しい門出の第一作目でもあった。