スプリンター・トレノ 【1974,1975,1976,1977,1978,1979】

逞しい走りでマニアを魅了したDOHCクーペ



“雷鳴”のネーミングを持つスポーツモデル

 2代目スプリンター・トレノは、カローラの兄弟車であるスプリンターシリーズのスポーティーバージョンとして、1974年4月に登場した。同じトヨタのカローラ・レビンとはスタイリングは異なるがメカニズムは共通。車名のトレノ(Trueno)とは、雷鳴とか稲妻を意味するスペイン語である。モデルバリエーションは、装備を簡略化した(ラジオさえもオプション設定)スパルタンなトレノ、それにラジオやトランクマットなどを加えた豪華仕様となるGTの2種があった。

 トレノは、小型軽量な小型車のボディに、ひとクラス上の排気量を持つセリカ&カリーナGT用のエンジンを組み合わせるという、小型車の高性能化としてはごく標準的な手法を踏んでいる。シャシーボディの基本的なベースとなっているのは、フルモデルチェンジされた2ドアのカローラで、それに旧モデルと同様、排気量1588ccの水冷直列4気筒DOHCエンジン(2T-GR型)を組み合わせていた。

トップスピードはクラス最速190km/h!

 トレノのパワーユニットは9.8と高めの圧縮比とサイドドラフト型のソレックス ツインチョーク キャブレターを2基装備し、115ps/6400rpmの最高出力と14.5kg・m/5200rpmの最大トルクを得ている。車両重量は935kg(GT)と比較的軽いため、1馬力あたりの重量(パワーウエイトレシオ)はおよそ8.1kg/psで、ほぼ同じ時期に登場した2.0リッターエンジンを搭載するポルシェ914の9.6kg/psより優れていた。トランスミッションはスポーティーモデルらしく5速マニュアルのみの設定で、オートマチックは用意されない。駆動方式はフロント縦置きエンジンによる後2輪駆動、すなわちFRである。最高速度はプレミアムガソリン仕様でクラス最速の190km/hと公表された。

 サスペンションも基本的な構造はベースとなったカローラと同じ前マクファーソンストラット/コイルスプリング、後ろ 半楕円リーフスプリングを使った固定軸となっているが、性能の向上にともない、ショックアブソーバーやスプリングのレートは大幅に強化されている。ブレーキは前がディスク、後ろがドラムとなっており、ブレーキ圧バランスバルブとサーボ機構を備える。タイヤは175/70HR13サイズのラジアルタイヤが標準装備される。

インテリアはブラック一色、精悍な印象

 インテリアは、この時期のスポーティーモデルの定番であるセミバケット型ハイバックシートや内装を黒一色の合成皮革で覆ったものとなっているが、インスツルメンツパネルだけは別色となる。メーター類は大径の速度計とエンジン回転計のほか、コンソール上部に油圧計や電流計、油温計、水温計、時計などが備えられていた。ステアリングは先進イメージの4本スポークで、合成皮革巻きとなる。ドライバーの足元にフットレストが備えられる。後部座席は大人が乗るスペースはあるが、特に足置きのスペースが不足しており、長時間のドライブには適さない。あくまで補助的なシートと考えた方が良い。

 1970年代半ばといえば、世界的な規模で起こったオイルショックにより、実用車はもちろん、スポーツカーも優れた燃費が要求されるようになっていた。排気ガス対策も厳しさを増す。トレノのような高性能車の世界は急速に縮小しつつあった。その中でトレノはスパルタンさに加え、GTモデルでも108万円という低価格のなかに豪華さをも盛り込むことで、小型スポーツカーのジャンルに新しい世界を開くことになった。初代と比較し一段とスマートなスタイリングを得た2代目トレノは、若い年齢層のマニアを中心に高い人気を誇った。FRレイアウトならではの操縦性と圧倒的なDOHCパワーを持つトレノでドライビングの腕を磨いたドライバーは多かった。

トレノはクーペ、レビンは開放的なハードトップ

 トレノと兄弟車のカローラ・レビンの違いはスタイリング。トレノはロングノーズが印象的なフルファストバッククーペ形状。一方のレビンはセンターピラーレスの2ドアハードトップ・ボディで登場する。2370mmのホイールベースやメカニズム面は共通だったが、スタイリングの印象はまったく異なっていた。ダイナミックなスポーツカールックのトレノに対し、レビンはカリーナ・ハードトップの弟分といったやや大人しい印象を受けた。人気は速そうに見えるトレノがレビンを上回った。しかし後席スペースのゆとりはレビンのほうが上。実用性ではレビンだったのである。