ホンダデザイン4 【1976,1977,1978,1979,1980】

マーケットイン手法を取り入れた2台の新世代小型車の誕生



顧客ニーズを重視した車両デザインへの転換

 水冷エンジンの採用に伴い、軽自動車(ライフ)と小型車(シビック)ともにオリジナリティにあふれる車両デザインへと刷新した本田技研工業。時間の経過とともにデザインを含め、機能を優先した“プロダクトアウト”に徹する開発姿勢は、限界を感じさせた。とくに、ユーザーからの「もっと大きく、もっと豪華に、もっと快適に−−」という上級化の要請には、しっかりと応える必要があった。また、シビックの成功によって欧米市場での“HONDA”の認知度アップとシェア拡大を果たした結果、海外マーケットの意見も踏まえざるを得なくなっていた。

 最終的に本田技研は、1970年代後半から1980年代初頭に向けた次期型の小型乗用車を開発する上で、市場のニーズを取り入れる“マーケットイン”のデザイン開発手法に重きを置くことになる。車両デザインに関しては、低重心で安定感のある見栄えのいいスタイルにクラス最大級のゆったりとした居住空間の創出を目指した。

安定したスタイルと豊かな居住空間を実現した新ミドルクラス車

 まず開発陣が手がけたのは、本田技研にとって新カテゴリーのモデルで、かつシビックのワンクラス上に位置するミドルサイズのクルマだった。このクラスへの進出を決めた背景には、北米市場での売れ筋となるミドルクラス車の設定が現地から望まれたこと、そして本田技研社内でもファミリー層が増え、「シビックの室内スペースでは少し手狭。もっと大きいクルマがほしい」という意見が多くなったことが背景にあった。

 1976年5月、ホンダ製の新しい上級小型車が市場に放たれる。新しい時代に調和する=アコードと名づけられたクルマは、しかし一般的な国産ファミリーカーとは少し趣を異にしていた。当時の国産ファミリーカーといえば、3BOXスタイルの4ドアセダンが一般的だった。一方、アコードは2BOXのリアゲート付き2ドアハッチバック。当時のファミリーカーの定義を逸脱していたのである。ファミリーカーでもスタイルはカッコよく、走りはスポーティ−−アコードの開発陣は、そんなクルマを世に問うたのだ。

意欲的なメカニズム。オーソドックスなセダンも登場

 スペック面も興味深い内容だった。ボディサイズは全長4125×全幅1620×全高1340mmで、当時のファミリーカーとしては縦横比が小さくて低め。つまり幅広のグッと踏ん張ったフォルムだった。足回りはフロントとリアともにストラット式の独立懸架。視覚系と操作系を明確に分けたインパネのデザインも、当時としては個性的だった。エンジンはボア74.0mm×ストローク93.0mmの超ロングストロークを採用する1599cc直4OHCユニット(80ps)で、もちろん最新のCVCCも組み込んでいた。

 2リッタークラスに匹敵する走りと快適な乗り心地、そしてスポーティなルックスを備えるアコードは、当時の自動車業界の注目を大いに集める。しかし、販売台数は決して好調とはいえなかった。クルマの良さは理解しつつも、2ドアの使い勝手に保守的なユーザーが馴染めなかったのだ。本田技研もこの傾向は重々承知していて、1977年10月になるとオーソドックスな4ドアセダンのアコード・サルーンを追加する。このラインアップ強化によって、ユーザーの裾野は大きく広がった。

台形プロポーションの進化を図った2代目シビック

 ミドルクラス車のラインアップを増強する一方、本田技研はシビックの全面改良も着々と推し進める。
 開発陣は当初、従来モデル以上に快適な走行性能と居住空間、そして高い安全性などを加味した新型車を企画する。そのため、初期段階では初代シビックのスタイリングとはまったく異なるモデルを考えていた。ここでマーケティング部門などから別視点の見解が出される。「日本では初代の新鮮味は薄れたが、海外では定着したばかり。やっと認知されたのだから、スタイリングを大胆に変えるのは得策ではない」。初代のスタイリングコンセプトをキープしながら、来るべき1980年代に向けた新しい小型車を創出する−−開発陣にとっては難しい課題だったが、それでも持ち前の技術屋魂で徹底した工夫を凝らしていった。

 1979年7月、2代目となるシビックが市場デビューを果たす。キャッチフレーズは“スーパーシビック”。初代よりも上級、そして初代を超えたモデルという意味を込めていた。2代目シビックのスタイリングは、初代のイメージを色濃く残していた。実用性重視のハッチバックボディ、メッキ枠のなかに配した丸目ヘッドライトとグリル、シックな雰囲気に仕立てたリアビューなど、どこから見ても“シビック”だとわかった。一方、じっくり観察していくと新型ならではの特徴がそこかしこで見て取れた。ひと回り大きくなったボディと厚みのあるバンパーは見た目の上級感と安心感を与え、ワンクラス上のクルマに成長したことを認識させた。さらにデザインと素材ともに上質になったインパネ、広くなったキャビンスペース、視認性と使い勝手ともに向上したスイッチ類など、インテリアの進化も見逃せないポイントだった。

 3/5ドアハッチバックのシンプルな車種展開でデビューした2代目は、その後徐々にバリエーションを増やしていく。1980年1月にはシビック初のステーションワゴンとなるシビック・カントリーが登場。アウトドアレジャーが浸透しつつあった市場で注目を集める。さらに、同年9月には3ボックスの4ドアセダンを追加し、ファミリー層を中心に好評を博した。