クラウン 【1979,1980,1981,1982,1983】

省資源・省エネルギーも追求した6代目

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地球環境を考え、新しい時代を開いた6代目

 1955年に誕生したクラウンは、日本を代表する高級車として日本の社会&経済の発展と歩調を合わせるカタチで成長する。1979年9月にデビューした6代目は、世界に誇る技術力を持つ日本に相応しいクルマに進化した。6代目の開発テーマは「新しい時代を開く伝統の最高級車」。具体的には ①ゆとりと信頼をもたらす高品質なクルマ作り②静かなくつろぎの居住空間の確保 ③省資源・省エネルギー時代への対応の3点を開発目標に掲げた。3点のうち、高品質なクルマづくりと、静かなくつろぎの居住空間の2点については、初代以来一貫してクラウンが追い求めてきたものであり、目新しいものではなかった。しかし3点目の省資源・省エネルギーへの対応は、まさに時代を象徴したものだった。ある意味で6代目固有の目標と言えた。

 6代目の省資源・省エネルギーへの取り組みは、車両重量の軽減というカタチで結実する。6代目も振動・騒音の遮断に優れたペリメーター型セパレートフレーム構造を採用したが、設計の合理化によりセダンのスーパーデラックスで従来比30kgの軽量化を実現したのだ。さらにエンジン自体の改良や、ピラーとドリップモールの面一化などの空力特性のリファインによって燃費性能も向上させる。定地走行燃費20km/L(セダン/5MT)を誇る2188ccのL型ディーゼル(72ps/14.5kg・m)を従来のセダンだけでなく4ドアハードトップとワゴンに拡大採用したのも省資源・省エネルギーの現れだった。

世界をリードする高いクオリティの実現

 高品質なクルマ作りに対する取り組みも積極的だった。すでに小型車規格の上限にボディサイズが到達していたため外形寸法は従来モデルとほぼ同等だったが、スタイリングはサイドストレートラインを採用することでフレッシュな感覚と伝統的な風格を見事に融合していた。ホイールベースは全車2690mmで、パーソナルユースを意識した4ドア&2ドアハードトップは大型2灯式の角形ヘッドランプとエッジを強調したキャビンで個性を表現。フォーマルユースを重視したセダンは角形4灯ヘッドランプと太いCピラーにより落ち着いた印象を訴求する。ワゴンはセダンをベースにルーフを後方まで伸ばした伸びやかな造形である。

 スタイリングの印象はどちらかと言うとキャデラックなどのアメリカン高級車路線と言えた。しかし各部の緻密なカラーコーディネートやパネルの組み付け精度、塗装品質などは明らかにクラウンのほうが上だった。徹底した耐久性の引き上げとも相まって、クラウンの品質は世界の高級車と比較しても遜色のないレベルにまでリファインされていた。

豪華な内装。世界初のリアコンフォートシート採用

 静かなくつろぎの居住空間という点でも優秀な存在だった。室内空間は合理的な設計手法の徹底により一段と広くなり、トランクスペースも拡大。吸・遮音材の新設・改良により静粛性も一段と高まっていた。乗り心地はサスペンション・ブッシュ類の新設計化や、低圧ガス入りショックアブソーバーの改良などにより従来以上にソフトでしなやかに進化した。航続距離や到着推定時間や平均車速などの10項目を演算・記憶するクルーズコンピュータや、シートバックが2段に折れる世界初のリアコンフォートパワーシートなど快適アメニティ装備の充実にも積極的だった。

 メカニズム面ではトップグレードのパワーユニットの排気量を2759ccに引き上げ、145ps/5000rpm、23.5kg・m/4000rpmの豊かなパワーを実現したのをはじめ、主力となる1988ccの直6OHCのインジェクション仕様は125ps/6000rpm、17.0kg・m/4400rpmのスペックはそのままながら、吹き上がりやトルク特性などを大幅にリファインしたのが目を惹いた。高級車としてすべての面で改良を施し、時代に先駆ける価値を身に付けた存在。それが6代目クラウンだったのである。

2ドアハードトップの終焉!

 6代目クラウンは、2ドアハードトップを設定した最後のクラウンとなった。クラウンの2ドアハードトップは、1968年10月に3代目モデルから設定されたパーソナルモデル。クラウンの快適さ、豪華さを華麗なスタイリングで包んだ贅沢なモデルだった。フォーマルカーの色彩が強かったクラウンだが、この2ドアハードトップ誕生以降はオーナーカーの最高峰としても認識されることになる。

 2ドアハードトップは1971年2月登場の4代目、1974年10月登場の5代目と代を重ねるごとに洗練の度を高め、6代目では高級車の文法を守ったランドゥトップ形状を採用していた。しかし5代目以降は4ドアハードトップモデルを設定したため、2ドアハードトップはやや影が薄い存在となった。4ドアハードトップはスタイリッシュさという点でほぼ同等。ユーティリティという点では圧倒的に勝っていたからだ。後席を重視するユーザーにとって2ドアハードトップは使いにくい存在だったのである。パーソナルカーは“無駄が魅力の源泉”という側面があるのは確かだが、クラウン2ドアハードトップはその使命を終えようとしていた。結局、高級2ドアパーソナルカーというポジションは1981年に登場したソアラに譲り、2ドアハードトップは6代目クラウンを最後に廃止された。