未来のクルマ02 【2007】

ニューエイジ・パーソナルカーの新提案

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新発想モビリティーの登場

 第40回東京モーターショー2007では、新しいモビリティー社会に向けた2台の注目すべき一人乗りパーソナルカーが提案された。トヨタ自動車の「i-REAL」とスズキの「PIXY」である。

i-REALは過去にトヨタ自動車が提案してきたi-unitやi-swingの進化版で、「ふと出かける。ふと出会う。もっとつながる」をキャッチフレーズに掲げた次世代モビリティーだ。ボディサイズは全長995/1510×全幅700×全高1430/1125mmで、ホイールベースが485/1040mmと超小型。パワートレーンにはコンパクトなEVユニットを採用し、前輪を駆動する。走行モードでは速度や曲がる角度に合わせてボディが傾き、より安定した姿勢でのスムーズな走りが可能だ。またコミュニケーションツールも充実しており、腕を覆うカバーの内側に情報交換や自己紹介などができる“コミュニケーション・ディスプレイ”を用意している。

 一方のPIXYは、「人のくらしと共存する、低速移動ツール」をキャッチフレーズに掲げる。ボディサイズは全長1300×全幅875×全高1500mmで、ホイールベースが787mm。後輪を駆動する動力源にはEVを採用し、短時間で充電できる蓄電器の“キャパシタ”を組み込んでいる。クルマの操作はマウス型のコントローラーで行う仕組みだ。ユニークなのは慶応義塾大学と産学共同で開発したインフォライトで、“曲がる”“急ぐ”“障害物が近づいている”といった運転者の意志や車両状態を光の色と動きで表現する新システムを導入している。

 i-REALとPIXYは高齢化社会にも対応した移動ツールであることはもちろん、都市交通の効率化を実現するうえでも重要な役割を担っている。また、観光地などの移動手段としても重宝されそうな素材だ。しかも乗るとなかなか楽しそうである。実用化に向けて、今後も一人乗りパーソナルカーの研究は活発に行われそうだ。

人にやさしいデザインへ--

 環境対応は当たり前。さらにその先を行く付加価値を持ち、しかも斬新なデザインのコンパクトカーを提案したい--。そんな開発陣の意志が込められた代表格が、日産自動車の「PIVO2」とホンダの「PUYO」である。

 PIVO2は「いつでも楽しく、どこでも便利」というキャッチを掲げた電動シティコミューターだ。知的生命体デザインと称するエクステリアは、ユニークで非常に個性的。さらにタイヤ位置を自在に制御できたり、キャビン部が360度回転したりする“メタモ・システム”を内蔵している。ほかにもドライバーの顔画像を認識して操作情報提示とコミュニケーションを行う“ロボテック・インターフェイス”やラウンジチェア風のパッセンジャーシート(乗車定員は3名)など、斬新なアイデアが満載だ。

 “和ませ系”としてPIVO2と双璧をなすのが、ホンダのPUYOである。「使う人だけではなく、周りの人も楽しくさせる」というキャッチの通り、そのルックスは愛嬌たっぷり。しかも外板には車名の由来ともなる柔らかい発光ジェルを採用し、対人衝突の安全性や対視認性の向上を図っている。利便性に優れる360度回転モードやウイングアップドアなども、人にやさしいエクイップメントだ。

 PIVO2とPUYOの提案は、クルマにおいての環境に対する優しさと並列して、人(乗員と歩行者)に対する優しさも進化している事実を示している。環境対策の先にあるもの--この課題に対する自動車メーカーの研究開発は、まだまだ続いていきそうだ。

ECOスモールカーの進化

 第40回東京モーターショー2007では、コンパクトカー・カテゴリーにおける量産電気自動車の時代が間近に迫っているという事実を認識させる参考出品車が数多く披露された。その代表的なモデルが、三菱自動車の「i-MiEV」シリーズだろう。なかでも「i-MiEV SPORT」は、量産可能な技術的トライが積極的に導入されていた。

 主要技術をピックアップすると、前輪左右に内蔵したアウターローター型インホイールモーター、家庭用コンセント充電(100V/200V)に加えてクイックチャージと無線充電システムを装備した4方式充電、パソコンとクルマとの情報伝達を実現させたMiEVコミュニケーションシステム、E-4WD/E-AYC/ABS/ASCを統合制御したS-AWCなどの新機構を採用する。さらに、フロントグリルの両サイドには風力発電用ファンを、ルーフ部には太陽光発電用のソーラーパネルを装備し、自然エネルギーを可能な限り電気に転換できるように工夫していた。

 東京モーターショー2007に展示された参考出品車で明確になったのは、EVの量産はコンパクトカーのカテゴリーから始まる、しかもその内外装デザインは従来のガソリン車より自由度が高くて個性的になる、という事実だった。今後どのようなコンパクトEVが量産化され、街中を駆け抜けるようになるのか--。いずれにしても、街中の道路風景を大きく変えることは間違いないだろう。