ミニカF4 【1972.1973,1974,1975,1976】
新世代4ストロークエンジン搭載Kカー
1960年代末から急速に高まりつつあった安全性への関心に加えて、1970年代に入って、世界的な規模で起こったオイルショック&環境問題は、自動車の世界にも大きな影響を与えることになった。もちろん、日本独自のクルマとして発展して来た軽自動車もその例外ではなかった。
各メーカーは、排気ガス浄化対策と省燃費を実現するために、それまでの安価でパワフルな2ストロークエンジンから、4ストロークエンジンへ換装し、ボディも衝突安全性を考慮した対衝撃性の高いものへと換えることになった。
1962年にミニカで軽自動車の市場へ参入した三菱自動車は、1972年10月、エンジンを4ストロークに換え、ボディスタイルも一新した「ミニカF4」をデビューさせた。ミニカとしては3代目となるモデルである。それまでのミニカ70が、初代のモデル同様、軽商用車であるバンをラインアップに持ち、ベースとしていたのに対して、ミニカF4ではエンジンからシャシーに至るまで乗用車として、デザインされていたことが特徴だった。ちなみに、ミニカF4の名はFour Cycle、Fresh、Familyのイニシャルと4人乗りの“4”を組み合わせたものであると言う。
搭載されるエンジンは、バルカン・シリーズと名付けられた新設計ユニットで、排気量359ccの水冷並列2気筒SOHC、排気ガス浄化のためのアイドル・リミッター制御機構などを備え、標準型のシングルキャブレター仕様で32ps/8000rpm、ツインチョーク・キャブレターやカムシャフト形状を変更した高出力型で36ps/8500rpmの最高出力を発揮した。効率のいい半球型燃焼室や、V型バルブ配置のクロスフロー機構を持つ素性のいいエンジンだった。もちろん従来の2ストロークでは気になった振動や加速時の白煙も一掃されていた。
駆動方式は、オーソドックスなフロント・エンジン、リア・ドライブのFR方式となっていた。トランスミッションはマニュアル型の4速、フロアシフトである。ブレーキは4輪ドラムで、サーボ機構は付かない。
フルモノコック構造のボディは、2ドア+ハッチガラスの3ドアで乗車定員は4名。後輪駆動方式のために後席は大人が長時間乗るには狭い印象だった。4ドアモデルは無く3ドアモデルのみの設定となっていた。スタイリングは、それまでのミニカ70が、かなり角張ったスタイルだったのに比べ、各部に曲面を多用したことで、乗用車的な雰囲気を強めている。室内も同時代の小型車に匹敵する豪華さがあり、3連メーターやセンターコンソール、セミバケットタイプのハイバックシートなどが標準装備とされ、高級グレードのモデルではラジオやタコメーター、トリップメーターが装備された。計器盤には木目パネルも張られる。
基本的なグレードは9種あり、ベーシックモデルの「スタンダード」および「ハイスタンダード」、充実装備の「デラックス」および「スーパーデラックス」、豪華さが魅力の「カスタム」および「GL」、そしてスポーティー仕様の「スポーティデラックス」、「GS」および「GSL」だ。グレードによって装備されるアクセサリーが異なる。ちなみに36ps仕様のスポーツユニットを搭載するのは「GS」と「GSL」の2グレードだった。
今日的な目で見れば、きわめて地味な存在の「ミニカF4」だが、クルマとしての完成度の高さは注目して良い。素直な操縦フィールと良好な燃費、そして高い信頼性を持った軽自動車として安定した人気を集めた。