ラファーガ 【1993,1994,1995,1996,1997】

走りと持つ誇りにこだわったドライバーズサルーン



ライバルはBMW ! ホンダ渾身のドライバーズカー誕生

 ホンダ渾身の新世代ドライバーズサルーン、それが1993年に登場したラファーガである。ラファーガは同時登場の2代目アスコットと兄弟車の関係で、アスコットとの違いはフロントグリル形状(ラガーガは縦桟、アスコットは横桟)とフォグランプなど細部のみ。両車は事実上同一モデルだった。販売ディーラーが異なるため(ラファーガは当時のベルノ店、アスコットはプリモ店)、違うネーミングを名乗っていた。

 1993年当時、ホンダのミドルクラス・サルーンの代表はアコードだった。アコードは欧米を視野に入れたワールドモデルらしく幅広いユーザーをターゲットにした量販車である。ホンダの手掛けるモデルだけにトヨタのカムリなどと比較すると個性は明確だったが、BMW3シリーズのようなプレミアムな輝きはなかった。それに対しラファーガは、アコード以上に走りの歓びと持つ誇りをユーザーに与えるクルマとして企画されていた。

 ターゲットは欧州車に憧れを抱く高感度なユーザーとされ、プレミアムな雰囲気を持つ上質モデルに仕上げたのである。しかも単に豪華な装備でプレミアムサルーン化したわけでなく、メカニズムや入念な作り込みによって独自の個性を発散した点にホンダらしさが表現されていた。

直列5気筒を縦置きした独創のFFレイアウト

 ラファーガのベースモデルは1989年に登場した初代インスパイアである。インスパイアはホンダ独創の直列5気筒ユニットを縦置き搭載したFFサルーンだ。フロントミッドシップにエンジンを配置することで良好な前後重量配分を実現しナチュラルなハンドリングをもたらした。さらにジャガーなどの英国製高級サルーンに範を取った仕立てでプレミアム感を訴求した。

 ラファーガは初代インスパイアの美点を継承しながら、前後席の着座姿勢をアップライトにリファイン、1994年からの新型車に適応される衝突安全基準を先取りした新世代モデルだった。スタイリングはインスパイアのロー&ワイドな4ドアハードトップ形状から一変。ヨーロピアンライクな骨太なセダンスタイルを纏う。5気筒エンジンを収めるロングノーズと、オーバーハングを短く仕上げたプロポーションはインスパイアとオーバーラップするが、全体としては落ち着き感を強調したジェントルなスタイリングの持ち主だ。

 特徴は日本の道路事情にベストマッチする5ナンバー規格に車両サイズをまとめていたことだった。ホイールベースは当時のアコードより55mmも長い2770mmだったが、全幅は65mm狭い1695mmで、全長もアコードより120mm短い4550mmだった。

自慢はFFを感じさせないハンドリング

 エンジンは前述のように直列5気筒で、1気筒当たり吸気2/排気2の4バルブを持つSOHC20V。1996ccのG20A型(160ps/19.0kg・m)と、2451ccのG25A型(180ps/23.0kg・m)の2種から選べた。プレミアムサルーンを標榜しながらもレギュラーガソリン仕様としていたのはホンダ技術陣の良心の現れだった。トランスミッションはG20A型が4速オートマチックと5速マニュアルの2種、G25A型は4速オートマチックのみの組み合わせだった。ちなみに前後重量配分は、60対40と良好で、ハンドリングはFFレイアウトを感じさせないナチュラルなものだった。前後ともダブルウィッシュボーン式を奢ったサスペンションはしなやかな設定で、乗り心地もハイレベルと言えた。

 室内の造形は、ドライバーズサルーンの王道をいくセンターコンソールを強調したもの。ソフトマテリアルで仕上げたドアトリムが独自の味わいを発散した。シートの作りも上質で、ホンダ車のなかでは最も居心地のいい室内と言えた。機能的でありながらけっしてビジネスライクではなく、ほのかにクラフツマンシップを感じる空間だったのだ。

 ラファーガは内容を考えるとリーズナブル設定の車両プライスを含め、すべてが意欲的だった。しかし残念なことにメーカーの思惑ほどのセールスはマークできなかった。不振の理由はクルマ自体の問題ではなかった。1993年はバブル景気が去り、クルマにはライフスタイルを豊かにするプラスαの機能が求められていた。具体的にはステーションワゴンが脚光を浴びていた時代だった。そんな時代のニーズに対してラファーガは、いささか直球勝負のクルマだった。確かに内容の濃いクルマだったが、まじめすぎたのだ

5気筒ユニットの滑らかさはライバルの6気筒と同等

 ラファーガはBMW3シリーズや、スカイラインなどの上級FRサルーンが持つ上質なドライビング感覚を追求していた。そのために採用したのが5気筒ユニットをフロントのミッドシップ位置に搭載した独自のFFレイアウトである。エンジン横置きのFFレイアウトはスペース効率に優れるのが利点だが、前輪が駆動と操舵の2つの機能を担うためステアリングフィールにややクセがあった。滑らかさという面でFRレイアウトに一歩を譲っていたのだ。しかしラファーガはFF車ながらミッドシップ搭載とすることで前後の重量配分を60対40と適性化、さらにエンジン自体の振動対策を徹底することでFR車に迫る滑らかなステアリングフィールを獲得する。エンジン屋のホンダらしく5気筒エンジンの滑らかさ、パワー感はライバルの6気筒ユニットと同等。ラファーガは残念ながら販売面で成功作とはならなかったが、もっと評価されていい逸材だった。