ダットサン・トラック4WD 【1980,1981,1982,1983,1984,1985】

タフで使い勝手に優れた全天候型 “ワークホース”

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ライバルを圧倒するロングホイールベース採用

 ピックアップトラックの新たな可能性を提示した意欲作、それが1980年7月に登場したダットサン4WDである。雪道や悪路をものともしない卓越した走破性と、ピックアップならではのユーティリティを融合した新種の“ワークホース”だった。すでにライバルのトヨタ・ハイラックスやいすゞファスターロデオは前年の1979年に4WDモデルを登場させていた。ダットサン4WDは後発だった。しかし、後発の強みを生かしライバルにはない数々の特徴を備えていた。

 ひとつはロングホイールベースの採用である。ダットサン4WDのホイールベースはライバル各車より約300mmほど長い2815mm。全長も4690mmとライバルより堂々としていた。ロングホイールベースは荒れた路面でも車両の姿勢をフラットに保つメリットがある。それ以上の利点は圧倒的な積載能力だった。シングルキャブ仕様の荷室長は2255mmに達し最大積載量は1000kg。ホイールベースが長い分、ライバル各車にはっきりと差をつけた。しかもロングホイールベースの採用は、定員5名のダブルキャブの設定を可能にした。居住性に優れたルーミーな4ドアキャビンを持つダブルキャブは実に使い勝手がよかった。肝心の荷室長も1505mm確保され実用上は十分。ダブルキャブ仕様はファーストカーとしてマルチに使える4WDピックアップの誕生を意味した。

エンジンはブルーバード譲りの強心臓

 エンジンを含めたメカニズムもよく煮詰められていた。ダットサン4WDのパワーユニットはブルーバードなどにも採用され信頼性とパワフルさで定評のあるL18型・直列4気筒OHCだった。1770ccの排気量から生み出す95ps/5200rpm、15kg・m/3200rpmの出力/トルクは数値以上に力強くオフロードはもちろん高速走行も楽々とこなした。

 ライバルを見ると2.2Lディーゼルを積むファスターロデオは経済性には優れていたがアンダーパワー。走りには我慢を必要とした。しかしダットサン4WDは乗用車から乗り換えても違和感のない瞬発力の持ち主だった。そのパワーフィールは、ハイラックスが搭載する18G型2.0リッター・ガソリンエンジンと同等。しかも燃費は排気量の小さいダットサン4WDが確実によかった。

遊びゴコロを刺激した設計思想とは

 足回りも熟成されていた。ダットサン4WDのサスペンションは前がウィッシュボーン式の独立、後ろが半楕円リーフの組み合わせである。最低地上高は三菱Jeepなどの本格オフローダーを凌ぐ230mmを確保した。前輪が独立サスペンションのため路面追従性に優れ乗り心地はライバル以上にしなやかだった。しかも後輪のリーフスプリングをアクスルの上側に配置するオーバースラング方式としたことで十分なタフさも身に付けていた。たっぷり取った最低地上高の利点も明白だった。文字通り走る路面を選ばなかったのだ。除雪されていないウインターロードや、ちょっとした河を渡るのは朝飯前。山道でも自信を持って奥まで分け入ることが可能だった。

 肝心の4WDシステムも吟味されていた。通常はFRで走り路面状況に応じて手動で4WDをセレクトするパートタイム方式という点はライバルと共通だったが、駆動切り替え用トランスファーレバーの操作がクラッチレスで行えたのだ。FR走行状態で走行抵抗を低減し、燃費ロスなどをなくすフリーランニングハブも標準で装備していた。ダットサン4WDは当初使用フィールドを、積雪地や不整路の多い牧場や農場、ゴルフ場などの業務用と想定していたと言う。しかし実際に発売してみると様々なユーザーから注目を集め、新種のレジャービークルとして愛された。使いやすさにこだわった設計思想が、多くのユーザーの遊びゴコロを刺激し、共感を生んだのである。

アメリカ輸出仕様を発売に先駆けモーターショーに出品

 1980年のダットサン4WDの国内販売に先駆けて、日産は1979年の東京モーターショーにアメリカ輸出仕様のダットサン4WDを出品した。輸出仕様の関係でハンドル位置は左。ヘッドランプには角形4灯式を採用(1983年のマイナーチェンジで日本仕様も角形に変更)し、オーバーフェンダー&アルミホイールを装着したRVイメージたっぷりのモデルだった。

 特徴的なのはキャビンでシングルキャブながら前席背後に荷物スペースを設けた独特の形状だった。日本市場用には1983年に設定した“キングキャブ”の先取りである。ショー出品車は、エンジンも1952cc(92ps)と日本仕様よりもひと回り大型だった。アメリカ輸出仕様のダットサン4WDは、日本発売モデル以上にRVイメージに溢れた、遊びゴコロを感じさせる存在だった。