ミラージュ 【1987,1988,1989,1990,1991】

個性明快な4シリーズで魅力を訴求したFFハッチ

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3代目はスタイルと多彩なモデル展開で勝負

 三菱自動車として初のFF(前輪駆動)モデルとして1978年3月にデビューしたミラージュは、1983年10月のモデルチェンジを経て、1987年10月に3ドアハッチバックが第3世代に進化した。このクラスには、ホンダ・シビック、トヨタ・カローラFX、マツダ・ファミリアなどのライバルがひしめいており、最も激しい販売合戦を繰り広げるマーケットでもあった。ミラージュは、スタイリッシュなデザインと多様なモデル展開で、このジャンルに挑んだのだ。車名であるミラージュ(MIRAGE)とは、神秘とかロマンチックなことを意味するフランス語である。

 ボディスタイルは5名乗車が可能な(定員2名のモデルもあった)3ドアハッチバック一種のみだが、搭載されるエンジンや装備の違いによって、モデルバリエーションはファビオ(FABIO)、スィフト(SWIFT)、サイボーグ(CYBORG)、2名乗車のザイビクス(XVYVX)の4シリーズがあった。

 搭載されるエンジンは排気量1595ccの直列4気筒DOHC16Vがターボチャージャー仕様(145ps/6000rpm)と自然吸気仕様(125ps/6500rpm)の2種、主力ユニットはSOHCの1468ccは電子制御燃料噴射仕様(82ps/5500rpm)とキャブレター仕様(73ps/5500rpm)から選べ、さらにベーシック版として1298ccのキャブレター仕様(67ps/5500rpm)がラインアップされていた。合計5種のエンジンはシリーズ&グレードに応じて搭載されていた。

 サイボーグはDOHC16Vのターボと自然吸気版、スィフトには1468ccの電子制御燃料噴射仕様とキャブレター仕様という具合だ。エンジンのパフォーマンス違いで性格の異なるモデルに仕立て上げているわけである。トランスミッションはマニュアル型が4速と5速の2種、オートマチックも3速と4速の2種あり、モデルによって使い分けられる。

装備ではなくキャラクターでグレードを分けた新手法

 3代目のミラージュは、前述のようにファビオ(FABIO)、スィフト(SWIFT)、サイボーグ(CYBORG)、ザイビクス(XVYVX)という4シリーズでラインアップを構成していた。ファビオは女性ユーザーを意識して便利&快適装備を奢ったモデル、スイフトは大型グラスサンルーフなどを設定したイメージリーダーで、サイボーグはフルエアロパーツを標準装備しパワフルなエンジンを積む純スポーツ仕様。ザイビクスは2シーターと割り切り、ユーザーが自由に使う提案型モデルだった。

 装備内容でグレード分けをするのが一般的ななかでミラージュは、まずモデルごとのキャラクターを鮮明にして最適な装備を与えていた。スポーツ派はサイボーグ、時代の動きに敏感な好感度ユーザーはスイフトというように、ユーザーにとっては個性がはっきりとしている分、選びやすいクルマだった。基本フォルムは全車共通なもののシリーズごとに外観の印象まで変えていたのも見事だった。開発陣の熱い思いが結実したラインアップの持ち主だったのである。

サイボーグは世界初の機構を足回りに採用!

 サスペンションはチューニングのポテンシャルを高めるために、フロントは旧型から受け継いだストラット/コイルスプリングの組み合わせだが、リアは3リンク式のトーショナルビーム/コイルスプリングに変更された。

 最上級モデルのサイボーグには、当時「世界初」と謳われた周波数感応および位置依存型ショックアブソーバーが採用されていた。これは、路面状況に応じ、瞬間的にショックアブソーバーの減衰力を変えるもので、デュアルモード・サスペンションと呼ばれた。操縦安定性と乗り心地の向上に大きな力となった。ブレーキは前がディスク(車種によってはベンチレーテッドディスクが標準装備される)、後ろがドラムブレーキでサーボ機構を備える。

多彩な装備で快適性を計算!先進性はクラストップ

 3ドアハッチバックのボディ一種だが、装備は実に多彩であり、当時の三菱が持てる自動車技術の集大成であり、さながらショーウィンドウの様相を見せていた。快適装備の主なものは、デュアルサンルーフ、TVモニター付きオーディオビジュアルシステム、状況に応じてメーター類の色彩や照度が変わるカメレオンメーター、プレイバック機構付きAM/FM電子同調ラジオなどが揃っていた。
 価格はベーシックなファビオの99万9千円からサイボーグの167万円までとなっていた。ミラージュは高い性能があったとしても、ライバル達に比して割高感は否めず、メーカーが予期したほどの人気は集めることが出来なかった。ラリーやサーキット・レースで鍛え上げられたエンジンの実力や考え尽された装備、スタイリングなど、真摯なクルマ造りで知られた三菱らしいモデルではあった。