スプリンター・クーペSR 【1971,1972,1973,1974】

スポーティな走りを印象づけた個性派モデル



スポーティなイメージを鮮明にしたSRの登場

 初代カローラのクーペモデルとして登場したスプリンターは、1970年3月、カローラが2代目に進化するのに伴い独立車種として再スタートを切る。スプリンターの名は、グレード名からモデル名へと切り替わったのだ。とはいえ当初のラインアップは2ドアクーペのみ。カローラ・クーペとの違いはフロントグリルなどの細部だけだった。それでもアクティブな名称が物語るように、カローラ以上にスポーティなイメージを発散しており、ヤング・アット・ハートなユーザーはカローラではなく、あえてスプリンターを選ぶ傾向にあった。

 そんなスプリンター=スポーティというイメージを鮮明にしたのが、今回の主役である1400SRである。1971年4月にスプリンターのラインアップに加わった1400SRは、ユニークなスポーツモデルだった。

クラス初5速ミッションを標準装備

 1400SRのボンネットの下に息づくのは、OHVレイアウトながら効率に優れたクロスフローのバルブ配置を持つツインキャブ仕様の1407cc・T-B型エンジン。95ps/6000rpm、12.3kg・m/4000rpmというパワフルなスペックは、僅か840kgの軽量ボディに目覚ましいパフォーマンスをもたらした。

 トップスピードは170km/hに達し、0→400m加速を16.8秒で走り切ったのだ。まさに“スプリンター”である。しかもトランスミッションはこのクラスでは初採用の5速トランスミッションが標準だった。当時5速トランスミッションはスーパースポーツモデルだけに許されたものだったから、1400SRの本格派ぶりは別格だった。それだけではない。1400SRはダンパー減衰力などを強化した専用スポーツサスペンション、ラジアルタイヤを備えていた。走りに一切の妥協を排した存在、そんな孤高のイメージが1400SRからは漂った。

スパルタンな内外装もSRの魅力

 内外装の仕立てもそれを強調する。外観はモール類をいっさいとり除き、ガラスをシンプルな透明ガラスに変更。足元もホイールキャップをあえて外したキャップレス仕様で、ボディカラーはダーク調カラーが選ばれていた。ボンネットに入る専用のSRマークやボディサイドのストライプが鮮烈な印象を与えるスパルタンな風貌だったのである。

 内装も特別だった。カラーは精悍なブラック一色で、レザータッチのスポーツステアリングやタコメーターなど、走りを意識したアイテムはすべて標準装備。一方ラジオやコンソールボックスといった走りに直接関係のない豪華装備はいっさい排除されていた。それでも当時のスカイラインGT-Rなどとは異なりヒーターやライターなどは残されていたから、ラジオさえ装備すれば文化的なドライビングが可能だったが、木目調パネル&ステアリングを装備し、内外をラグジュアリーなテーストで仕上げた、同一エンジンを積む1400SLと比較すると、走りのイメージは鮮明だった。

 1400SRは、大衆車ながらピュアな走り世界を追求した個性派だった。エンジンなどのメカニズム面だけでなく、内外装を含めてすべてをスポーティに仕上げた本物と言えた。しかもユーザーにとって嬉しいことに、リーズナブルなプライスも実現していた。1400SRの車両価格はSLより1万5000円安い64万4000円。専用スポーツサスペンションやラジアルタイヤなどを標準装備しながらお買い得な価格を実現した点が光った。1970年代前半はクルマの高性能化と個性化が促進される。そんな中にあって1400SRの存在感は明確だった。走りのために虚飾を排するという独自の美意識は、当時のスポーツ派ドライバーに大きな共感を生んだ。