道路交通情報の歴史02 【1981〜】

自車位置を知るナビゲーションの発展



交通情報の補完役としてカーナビ誕生

 交通情報をリアルタイムに伝えるシステムの進化に呼応して、ニーズが高まってきたのが“カーナビゲーション・システム”である。普段走り慣れた道であれば、走っている場所の特定が出来、ラジオから流れる交通情報を上手に活用して目的地に辿り着ける。しかしドライブで訪れた初めての道や、普段余りなじみのない地域では、まず自分がどの場所に居るのかを特定することがひと仕事。自車位置が分からなければ、せっかくの交通情報も役立たない。

 そんな場合に大きな力を発揮するのが、いわゆる道路マップ。とはいえ世の中には地図を見ることが苦手な人も多い。日本の場合は、道路標識や行き先案内板が分かりにくいこともあって、慣れないと地図の活用は難しい。しかも走行中は道路マップでの確認は出来ない。はじめての場所でも自車位置を瞬時に知ることが出来、目的地まで誘導してくれれば、安心して運転に集中できる。しかも安全で効率的。カーナビゲーションは、当初、交通情報システムのひとつとして誕生した。

最初のナビセンサーは魚雷用!?

 世界に先駆けてカーナビゲーション・システムを実用化したのはホンダだった。1981年8月、当時のアコードにオプション設定した“エレクトロ・ジャイロケータ”が始まりである。ただしエレクトロ・ジャイロケータは、現代のカーナビゲーション・システムを知る者としては、非常にプリミティブな仕上がりだった。

 モノクロのCRT画面上に道路地図をプリントした透明フィルムを重ね、自車位置を知るシステムで、現在位置と走行軌跡は分かるが、目的地までのガイド&誘導機能は持っていない。さらに出発位置を画面上で正確に設定する必要があった。システム的にはガスレートジャイロセンサーが進行方向の変化を、走行距離センサーが走った距離を検知し、両者をコンピュータが合体・積分して現在位置と走行軌跡を割り出していた。

 ガスレートジャイロセンサーは魚雷の自律航法にも利用できるほどの高い精度を持ち、当時としては画期的だったが、CRT画面上に重ねる地図は何枚にも別れており、現在位置が地図上からはずれると次ぎの地図を手動で重ねる必要があった。精度的にも問題があり、実際の位置と表示される位置のズレはかなりのものがあった。これでオプション価格は約30万円。当初は先行実験的なアイテムと認識され、ほとんど普及することはなかった。

1990年カーナビは第二世代に

 ホンダのカーナビゲーション・システムが実用に足るものになったのは1990年3月のこと。2代目レジェンドに採用した第二世代からである。第二世代はカラーCRT上の地図データを表示するため、もはや地図の入れ替えは不要。マップマッチング技術も投入され、自車位置設定時の誤差やセンサーの誤差による走行軌跡と道路地図のズレも自動的に補正されるようになっていた。レジェンドのマイナーチェンジを機にGPS(グローバル・ポジショニング・システム)併用となり精度&使いやすさはさらに大幅にアップする。

 その後、ガスレートジャイロセンサーを光ファイバージャイロに換えた、安価で一段と精度の高いシステムにリファイン。シビックやCR-Vをはじめ、ファミリーカーにも積極的にオプション設定したことで、急速に市民権を得る。ちなみにGPSをカーナビゲーションとして最初に採用したのはホンダではなかった。1990年4月にデビューしたユーノス・コスモである。

パイオニアが牽引した星ドライブ

 メーカーの純正オプションという流れと並行して、カーナビゲーション・システムの発展を支えたのは社外の専門メーカーだった。とくにオーディオメーカーとして多くの経験を持つパイオニアは、時代をリードする。

 パイオニアがカーナビゲーション・システムを正式発売したのは1990年春。市販モデルとしてGPSを使った世界初の商品だった。“道は星に聞く”というコピーとともにデビューしたAVIC-1は、システム価格が約40万円と高価だったにも関わらず大ヒット。続けてパイオニアは1992年に地図情報をCDロムに収め、将来のVICS(道路交通情報システム)に対応した第二世代のAVIC-D700をリリース。さらに1997年には全国の地図情報を1枚のDVDロムに収録する高機能のDVDシリーズに進化させる。

 2001年には音楽CDをHDD(ハードディスク)に記憶可能なHDD方式ナビゲーションも登場し、ナビゲーション機能だけでなく高度なエンターテインメント機能も盛り込んだ新世代へと移行した。
 クルマは自由な移動を楽しむための道具である。その機能をフルに発揮させる交通情報システムの一端を担うのがカーナビゲーションだ。カーナビゲーションの普及・発展は次世代交通情報システムを表示する媒体としても重要な役割を果たすことになる。