シルビアRS 【1982,1983】

DOHCエンジンFJ20を積み込んだホットスポーツ



スタイリッシュなボディの高い存在感

 1965年4月に初代のモデルが発売された日産シルビアは、日産にとっては初めてのスペシャルティーカーとして、スタイルの良さとベースとしたフェアレディ(SP310)譲りの高性能で好評を得る。途中に販売が途絶える期間があったものの、シルビアは1979年3月に第3世代にまで進化した。車名のシルビア(Silvia)とは、ギリシャ神話の美しい乙女の名に由来する。

 1979年3月に第3世代(S110系)へとフルモデルチェンジされたシルビアは、旧型(S10系)とは大きくイメージを変え、直線を基調としたシャープなボディラインを採用する。ボディバリエーションは独立したトランクを持ったノッチバックのハードトップに加え、1979年8月にはハッチゲートを持ったファストバッククーペを追加。ボディサイズはホイールベースこそ2400㎜とセリカより短かったが、全長が4400㎜、全幅が1680㎜とセリカとほぼ同サイズとなった。

スペシャリティーカーの人気拡大

 1970年代末から1980年代初頭の時代では、アメリカのフォード マスタングやシボレー カマロなどに始まるスペシャルティーカーの流行が、日本にもようやく定着した時代であった。比較的安価なセダンをベースとして、スポーティーな2ドアクーペやハッチバッククーペのボディを組み合わせ、エンジンはひとクラス上の大排気量でパワフルなものを搭載。サスペンションやブレーキ、ステアリング系は大幅に強化してスポーティーな走りのフィーリングを持たせた。しかもチューンアップに要するこれらの部品は、既存の量産車用ユニットを多く流用することで、生産や販売に掛かるコストを引き下げていた。1969年登場の初代セリカに始まる日本のスペシャリティーカーは、日産のシルビア/ガゼールが3代目に進化し、ホンダにプレリュードなどのモデルが誕生したことで、ジャンルは一気に拡大することになる。

 S110系シルビアは、基本的なシャシーコンポーネンツの大部分をA10系バイオレットから流用したクルマである。駆動方式はフロント縦置きエンジンによる後2輪駆動であり、4輪駆動仕様の設定はされなかった。オンロード用スポーティーカーのシステムとして、アウディ クワトロはすでに登場していたが、日本市場ではまだ4輪駆動方式はスポーティーカーのメカニズムとして広く認められるまでには至っていなかった。

ターボに続きDOHC16VのRS誕生

 第3世代のシルビアに搭載されたエンジンはデビュー当初は排気量1770㏄の直列4気筒SOHC(Z18型、出力105ps/6000rpm)と電子制御燃料噴射装置を付けた、排気量1952㏄のSOHC(Z20E型、出力120ps/5600rpm)の2種だったが、1981年5月のマイナーチェンジで、絶対的な性能向上の切り札として、ターボチャージャーを装着した排気量1770㏄の直列4気筒SOHC(Z18ET型、出力135ps/6000rpm)が誕生。さらに、スカイラインRSに搭載されていた排気量1990㏄の直列4気筒DOHC16バルブ(FJ20E型、出力150ps/6000rpm)を積むRSとRSエクストラがハードトップに新登場する。

 RS系に搭載されたFJ20型エンジンはペントルーフ型燃焼室に1気筒当たり4個のバルブ(吸・排気各2個)を持ち、吸気工程では各々のシリンダーに最も理想的な量の燃料を供給した。さらに電子制御による気筒別燃料噴射装置システムやカムシャフトが直接吸・排気バルブを駆動する構造など、レーシングエンジンを思わせる機構を備えていた。

日産が持つ先進技術を惜しみなく投入したFJ20E型

 高い人気を博したRS用FJ20E型エンジンを説明しておこう。排気量1990ccの直列4気筒DOHC16Vレイアウトで、ボア×ストロークは89mm×80mmのショートストローク設計。ボア×ストローク数値から類推できるようにFJ20E型は高回転、高レスポンス型。さらに、4バルブ化、シーケンシャルインジェクションの採用、軽量フライホイールの投入により、優れたレスポンス性能を獲得。また燃焼効率をアップさせるペントルーフ型燃焼室や60°V型バルブを採用し、圧縮比は9対1という高めの設定だった。

 高回転型エンジンだからこそ、極限状態での信頼性も必要となる。とくにカムシャフトの作動は正確さが要求される部分。もちろん日常での使用もある市販モデルであるから、騒音やメンテナンス性も重要な要素だ。日産の技術陣はこの難問をダブルローラーサイレントチェーンの採用で克服。さらに2段駆動チェーンで慣性重量も大幅に低減した。現代でもFJ20E型は日産が生んだ名機のひとつとして挙げられる。「ターボの日産」と言われることが多いが、日産の技術力の高さがDOHCエンジンでも証明された好例である。

 ちなみにRSのリアデファレンシャルはリミテッドスリップデファレンシャル機構が組み込まれており、安定した高速走行が可能だった。タイヤは185/70HR14サイズのブリヂストン製ポテンザと。前後ともディスクのブレーキは、ブレーキのローター径が大型化され、サーボ機構の設定もスポーツ走行に適したセッティングになっていた。

 RSシリーズのモデルバリエーションは、装備を簡素化したRSと、パワーステアリング、パワーウィンドウを備えたRSエクストラの2種があった。価格はRSで190万円台、上級仕様のRSエクストラで220万円程度だったが、内容からすればお買い得なものであった。

走りのために全身を磨き上げたマシン、240RS

 シルビアRSには、モータースポーツ用スペシャルモデル、240RSが用意された。まずボディスペックから見ていこう。スリーサイズは、全長4330mm×全幅1800mm×全高1310mm。ベースとなったRSと比較すると、全長は70mm削られ、120mmもワイド(全高は同値)。前後トレッドは前1410mm/後ろ1395mmで、フロントが65mm、リアが30mm拡大されていた。タイヤサイズは215/60HR15。前後バンパーともにFRP製に変更され、操作性を高めるためフロントバンパーは60mmも短縮されていた。ボンネットやオーバーフェンダー、スポイラーもFRP製。

 車重はFRPアイテムの多用や、ラミネートガラスのフロントウィンドウの採用などで、ノーマル比115kg軽い970kgに抑えられていた。ブレーキはフロント、リアともに強化され、フロントが261mmのベンチレーテッドディスク、リアが258mmのソリッドディスクとなっている。搭載するFJ24型ユニットは2340ccの直4DOHC16Vで、ボア×ストロークは92mm×88mm。パワースペックは90psアップの240psだ。ちなみに競技仕様では280ps/8000rpm、26.5kg-m/6400rpmまで高められたという。