カローラ 【1987,1988,1989,1990,1991】

クラスを超えたハイクオリティを実現した意欲作

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新しい車格の創造を目指して−−

 スポーツモデルのレビン・シリーズを除き、主力モデルをFF方式に切り替えた第5世代のカローラ(1983年5月デビュー)は、パッケージ効率や経済性など実用面で大幅なレベルアップを果たしたものの、豪華さやスタイリッシュさ、そして走りの上質さに関しては必ずしも高い評価が得られなかった。時はバブル景気の助走期となる1980年代中盤。次世代の6代目カローラの企画に当たる開発陣は、市場の多様化と高級化に対応するために、従来モデルをはるかに凌ぐハイクオリティ車の創造に邁進した。

 開発コンセプトは、「新しい車格の創造」。とくに重視したのは3点。1:ユーザーの幅広いライフスタイルにベストフィットする個性豊かなラインアップ 2:抜群の車両性能による「Fun To Drive」 3:高い感性品質の実現だった。

キャッチコピーは「ニッポンの自動車の新しい物語が始まります」

 6代目は、4ドアセダンとクーペ(レビン)を主軸に据える。全ボディともに従来型よりも質感をアップ。同時に、全高を低くしたうえで全長と全幅を拡大してワイド&ローのフォルムを創出した。

 セダンの外装については、伸びやかで量感豊かなアンダーボディと引き締まったキャビン、大らかにラウンドしたフロントマスクなどで格調高いスタイルを構築する。一方の内装では、快適でゆとりのある室内スペースを確保したうえで、キャビン全体のフルトリム化や室内部品の質感の調和、計器盤と連続した造形の成形ドアトリム、厚みと高級感を増したシートなどを採用し、豊かで高品質なインテリア空間に仕立てた。

メカニズムはほぼ全面新設計

 車両性能に関しては、新開発のハイメカツインカムエンジン(5A-F型1498cc直4DOHC16V/5A-FE型1498cc直4DOHC16V+EFI-D)やスポーツツインカムエンジン(4A-GE型1587cc直4DOHC16V)の搭載を筆頭に、構成部品の多くを新設計した4輪ストラット式サスペンションやTEMS(トヨタ・エレクトロニック・モジュレイテッド・サスペンション)の採用、ボディ剛性の大幅向上などを実施する。さらに、防錆鋼板を拡大展開してボディ自体の耐久性を引き上げた。

 高い感性品質は、計器盤まわりの優れた質感と操作性、シートおよびトリム類のソフトな肌触りなどを具現化することで成し遂げる。さらに、使い勝手や快適性を向上させるアイテムとして、アジャスタブルショルダーベルトアンカーやショルダーベルトガイド、クリスタルリングメーター、チルトステアリング、電動格納式ドアミラーを新たに組み込んだ。

 第6世代のカローラは、「ニッポンの自動車の新しい物語が始まります」というキャッチコピーを添えて1987年5月に発売される。高級感を増した内外装に最新の高性能メカを満載した6代目は、市場で「既存の大衆車の概念を打ち破った」と高く評価され、たちまち人気モデルに成長した。

歴代最高の年間販売台数をマーク!

 上級指向を強めた6代目カローラは、デビュー後も車種ラインアップの拡大とユーザーを惹きつける改良を図っていく。
 1987年8月にはワゴンおよびバンのモデルチェンジを実施。同年10月になると、カローラ初の4WDモデルをリリースする。1989年5月にはマイナーチェンジを行い、内外装のアレンジを変更するとともに、主力エンジンの1.5リッターをすべてEFI仕様にグレードアップした。

 1987年10月になると、6代目カローラにフルタイム4WD仕様が追加された。駆動メカニズムは、センターデフを備えた常時4WD式。これを基本に、MT車ではメカニカルデフロック式を、AT車では湿式多板クラッチを用いた“ハイマチック”式(前後輪の回転差動を油圧多板クラッチによって制御し、前後輪のトルク配分を行う仕組み)を採用した。

 クラスを超えるハイクオリティ車に発展した6代目カローラは、モデル末期の1990年になるとひとつの勲章を得る。車名別年間新車販売台数で、歴代最高の30万8台を記録したのだ。この数値は2010年に同じトヨタ製のプリウスに抜かれるまで、年間新車販売台数の最多に位置づけられた。