ジムニー・シエラ 【1993,1994,1995,1996,1997】

サブネームを付けて復活したパワフルな小型車版

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“ヨンク”人気に対するスズキの回答

 1990年代初頭の日本の自動車市場は、クロスカントリータイプの4WD車、通称“ヨンク”モデルが非常に高い人気を集めていた。この状況に対して鈴木自動車工業(現スズキ)は、JA11型ジムニー(1990年3月デビュー)とTA01型エスクード(1988年5月デビュー)/TD01型エスクード・ノマド(1990年9月デビュー)をラインアップ。ジムニーは軽自動車の規格改定(エンジン排気量550cc→660cc/全長3200mm→3300mm)に伴うポテンシャルのアップが、エスクードはクロカン4WDとしてはライト感覚で安めの価格設定などが好評を博していた。

 一方でスズキには、市場から以下の意見が寄せられる。小型車枠のジムニーを復活させてほしい−−。小型車版ジムニーは1987年のJA51型系をもって日本での販売を中止しており、その後は海外向けの専用モデルとなっていた。当時のスズキのスタッフによると、「軽ジムニーのエンジンにターボチャージャーが備わって小型車版との走行性能差が少なくなったこと、そして小型車枠の4WDモデル需要はエスクードで十分にカバーできると判断したことなどが、小型車版ジムニーの販売を中止した理由」だったという。また、1988年に発生した米国仕様の小型車版ジムニー=スズキ・サムライによる横転事故での訴訟問題および消費者団体からのリコール要請も影響したようだ。

 だが完成度の高い新たな小型車版ジムニーを設定すれば、きっと日本のユーザーを惹きつけるはず−−そう判断したスズキは、海外向けの小型車版ジムニーをベースとした日本仕様のリリースを決定した。

小型車登録のジムニーの復活

 1993年5月、日本仕様の新しい小型車版ジムニーが「ジムニー1300シエラ」の車名で発表される。型式はJB31。英語で“山脈”や“連峰”を意味する「シエラ」のサブネームは、以前からオーストラリア方面の輸出仕様ジムニーに付けられていたネーミングだった。

 “本格ミディアム4×4”“スズキが、また4駆を変える”などと謳ったJB31型系ジムニー1300シエラは、内外装の演出で注目を集める。エクステリアでは堂々としたワイドフェンダー(ボディ幅は軽ジムニー比+150mm)に5.5JJ×15クロームメッキホイール+205/70R15オールシーズンタイヤ、アルミ製サイドステップ、サイドシルプロテクター、フロントグリルガード、大型フォグランプなどで迫力のあるルックスを演出。一方のインテリアでは、軽ジムニーと基本パーツを共用化しながら、分割可倒式のリアシートなどを装備して利便性を引き上げた。

 搭載エンジンは同社のカルタスに採用するオールアルミ製のG13B型1298cc直4OHCを専用チューニングしたユニットで、パワー&トルクは70ps/10.4kg・mを発生する。組み合わせるミッションは5速MTのみの設定だった。トランスファーは高低速2段切り換え式で、2WD(FR)/4H/4Lの走行パターンの選択が可能。オートフリーホイールハブはオプションで用意する(標準は手動のフリーホイールハブ)。サスペンション形式は前後ともにリジッドアクスル式半楕円リーフスプリング。また、フロントにはロール剛性を高めるトーションバー式スタビライザーを、リアにはオフロード走行でも減衰力が乱れない低圧ガス封入式ショックアブソーバーを装備した。

イージードライブを可能とするATを追加設定

見栄えのするルックスに扱いやすいパフォーマンス、そして軽ジムニーの16万円高(最上級グレードのバンHC比)に抑えた137万8000円(東京標準価格)というお買い得感の高いプライスタグを備えたJB31型系ジムニー1300シエラは、従来のジムニー・ファンのみならず、乗用車指向の強い新たなユーザー層からも好評を博す。そして、1993年11月に3速AT仕様が追加されると、女性ユーザーの比率も大きく増加した。

 市場デビューから2年半あまりが経過した1995年11月、スズキはJB31型のビッグマイナーチェンジを実施し、JB32型に移行する。変更項目はエンジンの16V化(85ps/10.8kg・m)や内外装の一部刷新など多岐に渡ったが、ファンが最も注目したのは軽ジムニーと同様にサスペンション形式を前後3リンク/コイルに一新した点だった。伝統の前後リーフスプリングが、ついにコイルスプリングに−−。結果的に最後の板バネ小型車版ジムニーとなったJB31型系は、以後ファンからマニアックな人気を獲得することとなったのである。