ローレル 【1997,1998,1999,2000,2001,2002,2003】

2つの個性で上質を表現したラストモデル

会員登録(無料)でより詳しい情報を
ご覧いただけます →コチラ


時代の要求に積極的に応えた8代目

 1968年に日本初のハイオーナーカーとして誕生したローレルは1997年6月に8代目に進化した。ローレルはスカイラインよりエレガントで、セドリック&グロリアよりカジュアルな上級モデルとして独自の路線を歩んできた。「大人のエレガントスポーティサルーン」を開発コンセプトに掲げた8代目も、これまでの路線を踏襲したキープコンセプトモデルだった。

 とはいえ時代が求める安全性や性能の追求には積極的だった。1998年10月から日本・欧州で導入される新衝突安全基準をクリアーした“ゾーンボディ”を採用し世界最高レベルの安全性を実現。ゾーンボディは正面(フルラップ)衝突、オフセット衝突をはじめ、斜め、側面、後面衝突など、さまざまな方向からの衝突を想定した実験および、コンピューターを駆使した衝突解析を繰り返すことで仕上げた高強度安全ボディだった。新型ローレルのボディは前面・後面の衝突時には車体のクラッシャブルゾーンが衝突エネルギーを吸収し、乗員への衝撃を緩和。さらにセーフティゾーン(高強度なキャビン)が生存空間をしっかりと確保した。また側面衝突時にはサイドドアビームや衝撃吸収ドアが効果を発揮することで車体変形を抑えていた。つまりボディを機能別にゾーン化することで安全性を高めた最新の安全ボディだったのだ。

基本となるボディだけでなく前席デュアルエアバッグやサイドエアバッグ、衝突時に負荷が一定以上には高まらないロードリミッター機構付きシートベルトなども装備していた。さらに事故を未然に防ぐABSや新配光ヘッドランプ、広角ドアミラーなどを採用したことも光った。

新世代ストレート6で走りをリファイン

 走り面の磨き込みも積極的だった。主力となる自然吸気ガソリンエンジンには、環境を考えながら高性能を求めた“NEOストレート6”を採用。走りを革新したのだ。NEOストレート6は、2498ccから200ps/26.0kg・mを発生する自然吸気のRB25DE型と、235pps/28.0kg・mのターボ仕様RB25DET型。そして1998ccから155ps/19.0kg・mを生むRB20DE型の3機種で、滑らかな吹き上がりを約束する2ステージ可変吸気システム(NICS)と、高応答NVCS(可変バルブタイミング)の採用が特徴だった。

 8代目のラインアップはスポーティ仕様のクラブSシリーズと、快適性重視のメダリスト・シリーズの2本立てで、クラブS系は、格子状のブラックグリル、大型エアダム付きバンパー、専用ヘッドランプなどで精悍さを演出。一方のメダリスト系はボンネットオーナメント、専用グリルなどで伝統のローレルらしさを訴求する。室内も基本デザインは共通なもののクラブS系はブラック基調。メダリスト系は明るいグレー&ブラウン系と差別化を図っていた。ちなみにボディ形式はサッシュレスドアを持つ4ドアピラードハードトップ。伸びやかな3ナンバー規格の全長に対し、コンパクトなキャビンを組み合わせたフォルムにまとめられていた。

販売低迷を招いた市場環境の変化とは

 8代目ローレルは、いささか地味な印象ながら熟成した走りの味わいの持ち主だった。とくにNEOストレート6の軽やかな吹き上がりと静粛性には光るものがあった。3ナンバー規格とはいえ、狭い道でも持て余す心配のないジャストサイズもあって、実に運転のしやすい快適なクルマだったのだ。

 しかし残念なことに販売は伸び悩んだ。市場環境がかつてとは異なっていたからだ。1990年代後半は、ミニバンに代表される“高機能モデル”が脚光を浴びていた。3列シートにより多人数乗車を可能にしたクルマたちである。モータリーゼーションの成熟とライフスタイルの変化により、人気モデルの条件は生活の良きパートナーへと急速に変化していたのだ。8代目ローレルは高い完成度を持つハイオーナーカーだった。しかし、そこには生活を豊かにする新たな提案は盛り込まれてはいなかった。販売苦戦の要因はそこにあったのである。結局ローレルは8代目を最後に表舞台から去り、2003年登場のティアナにその座をゆずった。