プラッツ 【1999,2000,2001,2002,2003,2004,2005】
広い室内&トランクを誇ったコンパクトセダン
1999年8月に登場したプラッツは、新世代コンパクトカーとして誕生した初代ヴィッツの派生車種となるコンパクトセダンである。実質的にはターセル&コルサ・セダンの後継モデルだったが、ターセル&コルサ・セダンがオーソドックスで地味な印象だったのに対し、プラッツはすべてを斬新な感覚でまとめていた。ヴィッツが持つ革新性をさらに磨き込んだ存在だったのである。
カタログに記載されたキャッチコピーは「21世紀へお先に。」キャッチコピーに続く「見た目は小さくても、室内はたっぷりと広い。画期的に燃費がいいのに、気分爽快な走り心地。リーズナブルでいて、なかなかどうして知的な雰囲気。かつての理想論が、いま現実になりました。」という説明がプラッツのキャラクターを見事に表現していた。
スタイリングは、ヴィッツにトランクをプラスした印象だった。4145mmの全長こそヴィッツと比較して535mmも長かったが、2370mmのホイールベースをはじめ、1660mmの全幅や1500mmの全高はヴィッツと共通で、従来のターセル&コルサ・セダンとは130mm高くなった全高が目についた。プラッツのスタイリングは確かに新しさに溢れていた。ライバルとは明らかに違う存在感を醸し出していたのである。新しさを演出するだけでなく、専用デザインのヘッドランプ&グリル形状を与えることで、ヴィッツよりジェントルな印象を見る者に与えたのもさすがだった。この時代のトヨタデザインは冴えていたが、プラッツもデザイン的に見るべき点が多かった。
プラッツの感動は広い室内にあった。スペース面でゆとりがあったのはもちろん、全高をぐっと高めたことで開放感もハイレベルに仕上げていたのだ。コンパクトセダンながら前後席ともにゆったりとくつろぐことが可能だった。しかもインスツルメントパネルはヴィッツと同様に先進的な印象だったから、新しさも実感できた。コンパクトセダンというと、上級サルーンのダウンサイジング版が一般的ななかで、プラッツの広々とした室内はひと味違っていた。上級サルーンから乗り替えても満足できるサムシングを備えていたのである。
ラインアップは、2WDと4WDの2シリーズで、2WDには997ccの1SZ-FE型・直列3気筒DOHC12V(70ps/9.7kg・m)と、1496ccの1NZ-FE型・直列4気筒DOHC16V(110ps/14.6kg・m)の2種類のエンジンを設定。4WDは1298ccの2NZ-FE型・直列4気筒DOHC16V(88ps/12.3kg・m)を組み合わせていた。トランスミッションは電子制御4速オートマチックと5速マニュアルの2種から選べた。
プラッツは走りもよかった。軽量設計のメリットが生き、ベーシックな997ccエンジン搭載車でも軽快・活発で、1298ccや1496ccエンジンの場合は、スポーティなドライブにトライしても満足できるパフォーマンスを示した。燃費も優れていた。997ccエンジン搭載車の10.15モード燃費は21.5km/L(MT)、1496ccエンジン搭載車でも20.0km/L(MT)を誇った。
個性的でちょっぴり先進的なフォルムと広い室内空間。そして優れた走りと燃費を誇ったプラッツは、コンパクトセダンとして理想的な存在だった。しかし日本国内の人気はいまひとつだった。コンパクトセダンを求めるユーザーには、あまりに斬新すぎたスタイリングが原因だったようだ。機能を重視する輸出市場ではメーカーの予想どおりの販売成績を収めたが、日本では大きな支持を集めることはできなかった。プラッツは2005年11月のモデルチェンジを機に車名をベルタに変える。残念ながらプラッツのネーミングは1代限りとなってしまった。
プラッツ1.5Xには、クルマ好きを唸らせる“Sパッケージ”が設定されていた。Sパッケージは各部を欧州仕様と同等に仕上げたモデルで、フロント&リアサスペンションにスタビライザーを追加し、リアのエアースパッツを装備。アルミホイールも標準装備となり5速マニュアルミッションではシフトノブも専用タイプが奢られた。
速度無制限のアウトバーンでもへこたれない足回りと装備を持ったSパッケージの走りは、ひと味違った。ワインディングロードでしっかりとしたハンドリングを示し、高速安定性も確実にレベルアップしていた。まさに玄人好みの“隠れた名品”と言えた。