ワゴンR 【1993,1994,1995,1996,1997,1998】

Kカーに革新をもたらした元祖ハイトワゴン

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ミニマムトランスポーターとしての魅力

 ジャパン オリジナルと言える、ミニマムトランスポーテーションとして発展していた軽自動車は、1993年9月に発売されたスズキ ワゴンRでまたひとつの大きな転換点を迎えることになった。それは、大げさに言うなら、軽自動車がひとつの量産車のジャンルとして確立されたことでもあった。

 スズキは1979年5月に、新車価格47万円という破格の低価格(当時の軽自動車の平均価格は65万円前後だった)を実現したアルトで大きなセンセーションを巻き起こしたが、このワゴンRはアルトの再来だと言われた。ワゴンRは、スタイルの良い乗用車ベースのボンネットバンと室内スペースの大きさに優れる完全なワンボックスモデルの中間的存在を狙ったモデル。車体寸法が定められている軽自動車の室内サイズをモノボックス化と全高を高く設定することで可能な限り大きくし、しかも乗用車的スタイリングも合わせ持つという、欲張ったコンセプトの下に開発されていた。

室内の広さが人気の後押しに

 ワゴンRのベースとなったシャシーコンポーネンツはアルトやセルボモードと共用するものであったが、ボディスタイルは全く異なるものとされた。まず、基本的なスタイリングは1.5ボックスタイプと呼ばれるエンジンルームがわずかに突き出たもの。さらにフロア部分を二重構造として床面を一段高くし、それに伴ってシート座面も高い位置に設定した。全高はFF車で1680㎜。これによって、トールボーイと呼ばれる独特のプロポーションが生まれた。シート配列は2列4人乗りだが、後部には普通車をも遥かにしのぐラゲッジスペースが生まれることになった。軽自動車とはとうてい信じられない室内スペースの広さ。これがワゴンRの大きな人気の理由であった。

 エンジンや駆動系はベースとなったアルトやセルボモードに共通するもので、デビュー当初のエンジンはF6A直列3気筒SOHC12V(55ps)のみ。グレードはFFがRA、RG、RX、ロフトの4グレード、4WDがRG-4の1グレード。1エンジン5グレードというシンプルな機種ラインアップを持っていた。トランスミッションは、ベーシックなRAのみが5速MTのみの設定で、その他のグレードでは3速ATをチョイス可能。エアコン、パワーステアリングはベーシックなRA以外に標準装備され、オーディオやパワーウィンドウ、フルホイールキャップは上級グレードのRXとロフトに標準装備となっていた。

車種の種類と装備を次々と追加

 面白いのは、初期モデルのドアの配置で、ドライバー側のドアは1枚、助手席側のドアは2枚となっており、ボディ剛性の確保とコスト低減を図っていた。スズキらしい徹底したデザインである。実用上ほとんど不便はないものであった。このシンプルさこそ、軽自動車の本道であると思われる。左右のドアが2枚になる5ドアの登場は、1996年になってからであった。独特の存在感を持ってデビューしたワゴンRは、古今の特徴的なモデルの多くと同じく、絶対的な性能向上と販売拡大のためのバリエーションモデルの増加、さらに装備の充実などよる車重の増加との果てしない戦いにさらされることになっていく。

 1997年4月のマイナーチェンジの際には、DOHCターボモデル、RSグレードが登場した。搭載されたパワーユニットはK6A型ターボ(658cc)で、吸気2、排気2の気筒当たり4バルブを採用のツインカムユニットに、インタークーラーターボを装着。64ps/6500rpmの最高出力と、10.5kg-m/3500rpmの最大トルクを発揮した。
 さらに1997年11月には、コラムシフト仕様のワゴンRコラムを追加。ワゴンRコラムは、丸型ヘッドライトなどの専用エクステリアが、レトロな雰囲気を漂わせた

国内販売台数のナンバーワンに

 地道な改良とデザイン変更を施したワゴンRは、軽自動車のジャンルで大きなポジションを築くことになった。それは、ライバル他社が、相次いで同工異曲のモデルを登場させたことでも明らかである。ダイハツはムーヴを、三菱はミニカトッポの豪華仕様を、富士重工はスバル プレオをデビューさせることになる。また、ワゴンRショックは、小型車にも影響を与え、日産はマーチをベースにしたキューブを新たに開発した。

 軽自動車の新しい世界を開拓したとも言えるスズキ ワゴンRは、2008年まで国内販売台数のトップの座に輝いていた。その台数が、トヨタ カローラやホンダ フィットよりも多かったのだから驚くほかはない。