スープラ 【1993,1994,1995,1997,1998,1999,2000,2001,2002】

マッシブな造形の第2世代“THE SPORTS OF TOYOTA”



新世代スポーツカーに必要な性能とは−−

 ラテン語で“超えて”や“至上”を意味する「スープラ(Supra)」を車名に冠し、TOYOTAブランドのフラッグシップスポーツカーに君臨してきたトヨタ・スープラ。日本では2代目、ワールドワイドでは4代目に当たる新型を企画するに当たり、開発チームはスポーツカーの未来像を研究。日本のみならず海外ユーザーの志向や、1990年代に向けた安全・環境性能の向上に最大限に応える決断を下す。同時に、実験走行に際しても日本のテストコースやサーキットだけでなく、海外の高速道路やクローズドコース(とくにドイツのニュルブルクリンク)でも鋭意実施する方針を打ち出し、評価チームとして精鋭のDP(=Designated Panelist)を組織した。

 新型の開発テーマは2点。新しいスポーツカー“パフォーマンス”の実現と、人および社会を大切に考える“優しさ”の具現化を掲げる。“優しさ”については、安全の追求、環境への配慮、快適の追求という3項目の達成を目指した。

スポーツカーの未来像を目指し積極開発

 基本骨格は、開発中の3代目スープラ(1991年5月デビュー)とプラットフォームを共用しながら、ホイールベースの短縮(2550mm)と前後重量配分の見直しを実施。同時に、FEM(有限要素法)解析を駆使して軽量・高剛性ボディに仕上げる。ボディタイプは大型リアゲート付き2ドアクーペとエアロトップを設定した。
 シャシーは操縦安定性と乗り心地を高次元で両立させた新設計の4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションを導入。高性能グレードには、ビルシュタイン社製ダンパーを組み込んだ。制動機構にはツインピストンキャリパーや肉厚アップのブレーキローターをセットした4輪ベンチレーテッドディスクブレーキを、足元には高性能16㌅仕様の50偏平タイヤおよび専用アルミホイールを装備する。さらに、エンジンフードやエアロトップ等には軽量素材のアルミ合金を使用した。

 搭載エンジンは徹底改良を施した2JZ-GTE型2997cc直6DOHC24Vツインターボと2JZ-GE型2997cc直6DOHC24Vの2機種を設定する。2JZ-GTE型には、回転数に応じてターボの作動個数をフレキシブルに切り替えるツーウェイ・ツインターボシステムとセラミック製の軽量タービンホイール、大型空冷式インタークーラー、スロットルバルブの開度を電子制御するETCS(Electronic Throttle Control System)を導入。パワー&トルクは、2JZ-GTEエンジンが280ps/5600rpm、44.0kg・m/3600rpm、2JZ-GEエンジンが225ps/6000rpm、29.0kg・m/4800rpmを絞り出した。
 トランスミッションには、2JZ-GTEエンジンにゲトラグ社製6速MTおよびLUK社製のフライホイールダンパーとインテリジェント電子制御式2ウェイ・OD付4速AT(ECT-iS)を、2JZ-GEエンジンに5速MTと電子制御式2ウェイ・OD付4速AT(ECT-S)を採用する。また、操縦性および走行安定性の向上を図る目的で新開発のスリップコントロールや横Gセンサー付4輪ABS、トルセンLSDなども設定した。

造形はダイナミックでマッシブ

 エクステリアは、張りつめた筋肉と骨格を思わせるダイナミックな低重心スタイルを基本に、ボディ前後を絞り込んでテールを大胆に切り落とす“高性能ウエッジシェイプデザイン”でまとめる。ボディ各部にはアルミ合金と高張力鋼板を多用し、軽量かつ高剛性の骨格を実現。同時にエアロダイナミクスも徹底追求し、フロントアクティブスポイラー(90km/h以上で自動作動、70km/以下で自動格納)や大型リアスポイラーを組み込んでクラス最上レベルの空力フォルムに仕上げた。ボディサイズは全長4520×全幅1810×全高1275mmと、3ナンバー規格に設定する。

 2+2構成のインテリアに関しては、Gを感じ取り、応答し、クルマとの対話を心から楽しめる“Gフォースフォルム”というデザインコンセプトから生まれたコクピットを採用。ドライバーを包み込むようなインパネ造形に、エルゴノミクス(人間工学)を駆使してアレンジした独立3眼メーターおよびスイッチ類、ドライバーに近づけて設計したシフトレバー、低い着座位置のスポーツシート、グリップ部を超楕円形状とした370mm径の本革巻きステアリングを装備し、スポーツカーにふさわしいキャビン空間を創出した。
 また、室内に侵入する騒音・振動を低いレベルに抑えるとともに、足回りの最適化によってフラットな乗り心地を実現。衝撃吸収ボディ構造のCIAS(Crash Impact Absorbing Structure)や運転席および助手席SRSエアバッグなどを導入して高い安全性を確保した。

キャッチフレーズは“THE SPORTS OF TOYOTA”

 日本仕様としては第2世代、輸出モデルを含めると第4世代となる新型スープラは、1993年1月開催のNAIAS(北米国際自動車ショー)でプロトタイプが初公開され、4カ月ほどが経過した同年5月になって日本での販売をスタートさせる。
 型式はA80で、キャッチフレーズはクルマのキャラクターをダイレクトに表現した“THE SPORTS OF TOYOTA”。車種展開は2JZ-GTEエンジンを搭載するRZ/GZ/GZエアロトップ仕様車、2JZ-GEエンジンを採用するSZ/SZエアロトップ仕様車で構成した。

 走行性能だけではなく、環境や安全性能でもクラスのトップレベルを実現したA80型スープラは、日本のみならず海外マーケット、とくに米国市場で高い注目を集め、たちまち人気スポーツカーに成長する。この勢いを維持しようと、開発陣は精力的にA80型スープラの改良を図っていった。

積極的な改良でスポーツ性能をブラッシュアップ!

 1994年8月には一部改良を行い、17㌅タイヤ(前235/45ZR17、後255/40ZR17)や大容量ブレーキ(ローター径の拡大、前・対向4ピストン/後・対向2ピストン、スポーツABS)をオプション設定、2JZ-GEエンジンを搭載するスポーツグレードのSZ-Rの追加を実施。1995年5月には、2JZ-GTEエンジンを搭載するベーシックグレードのRZ-Sを加えると同時に、大型リアスポイラーの拡大展開やRZへのレカロ社製シートの装着を行った。

 1996年4月になると、大がかりマイナーチェンジを実施。ヘッドランプやバンパーグリルなど内外装の一部刷新や2JZ-GEエンジンへの6速MTの設定、足回りのセッティング変更、ボディ剛性の強化、前2席SRSエアバッグおよびABSの標準装備化を行う。さらに、1997年8月にもマイナーチェンジを実施。RZとSZ-Rに相互連携ショックアブソーバーシステムのREAS(リアス)を採用したほか、2JZ-GTEエンジンのVVT-i化(最大トルクが46.0kg・m/3600rpmにアップ。最高出力は従来と同値)や電子制御スロットルのETCS-iへの進化、RZ-Sへのステアシフトマチック&ECT-iEトランスミッションの採用を行った。そして、1998年8月にはSZグレードにもSZ-R/RZ-Sと同サイズの前225/50ZR16、後245/45ZR16タイヤを装着。2000年8月からはボディカラーのスーパーレッドIVをスーパーレッドVに変更した。

9年あまりのロングセラーモデルに発展

 着実な進化を果たし、スポーツカーファンを魅了し続けたA80型スープラ。しかし、21世紀に入ると全世界的に排出ガス規制や燃費基準が厳しくなり、これにA80型スープラを対応させるためには莫大なコストと手間が必要となった。最終的にA80型スープラは、2002年8月に生産を終了。約9年に渡る車歴に幕を下ろした。

 ただし、A80型スープラの活躍はここで終わらなかった。モータースポーツの舞台では、2005年までJGTC(全日本GT選手権)のGT500クラスに参戦。V8エンジンの3UZ-FE改ユニットに換装したスープラが数々の激的な勝利を飾る。また、A80型スープラは社内訓練車として引き続き活用され、後にトヨタの社長となる豊田章男氏らがドライビングの腕を磨いた。さらに、映画の舞台では世界的な大ヒット作になった『ワイルド・スピード』(2001年公開)『ワイルド・スピードX2』(2003年公開)『ワイルド・スピード SKY MISSION』(2015年公開)に登場し、クルマ好きのみならず映画ファンからも熱い視線を集めた。

 生産中止後も事あるごとに脚光を浴び、伝説的なスポーツカーとなったA80型スープラ。国産名車の代表格ともいえる稀有なアイコンは、生産中止から17年あまりが経過した2019年5月になって、トヨタのモータースポーツ活動を統括するGRが開発を担当した「新型スープラ(DB型)」として待望の復活を果たすこととなるのである。