タウンボックス 【1999,2000,2001,2002,2003,2004,2005,2006,2007,2008,2009,2010,2011】

四角くて広い実直セミキャブワゴン

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ボクシーボディの実用軽自動車の登場

 日本独自の小型車規格として発展を続けて来たのが軽自動車である。「軽自動車」と言う言葉の本来の意味は、ボディサイズやエンジンの排気量などに於いて、軽量コンパクトな自動車ということなのだが、今や性能面では普通乗用車にも匹敵するほどのレベルに達している。日本の自動車市場で軽自動車として最初に商業的に成功したのは、1958年5月に売り出されたスバル360であった。排気量360㏄の2サイクル2気筒空冷エンジンで走る姿はテントウ虫のニックネームで親しまれた。

 その後、軽自動車は絶対的な性能向上と衝突安全性を確保する意味から、何度かエンジン排気量とボディサイズの拡大を繰り返して来た。最近でも、1998年10月から軽自動車のボディサイズが新規格となり、特に前後長が拡大されたことで、衝突安全性はさらに高められることになった。この軽自動車の新規格施行に対応して、1999年4月に登場したのが三菱タウンボックスであった。何とも直接的なタウンボックスの車名は、そのスタイルから付けられたもの。軽自動車規格いっぱいの箱型ボディにエンジンを付け、街中を軽快に走り回ることをイメージしている。

キャブオーバー軽初の乗用ワゴン

 フルモノコック構造のボディは、スタイルこそ商用車のようだが、タウンボックスはキャブオーバースタイルながら乗用車登録のワゴンとなった。フロントシートにはリクライニング機構が装備され、後部座席のスペースを拡大して小さいながら独立したキャプテンシートとし、さらにウォークスルーを可能とするなど、乗用車としての要素を多く採り入れている。

 エンジンはフロント部分ではなく、前席下方に縦置きされている。前輪は前方へせり出す形になり、ごく短いボンネットが付いている。三菱ではこのスタイルをセンターミッドシップエンジンのセミキャブタイプと呼んだ。ボディの形態は4ドア+ハッチゲートのワゴンである。

デビュー時は4気筒20Vターボを搭載

 エンジンはデビュー当初には排気量は659㏄で、ハイパワー版は直列4気筒DOHC20Vにインタークーラー付きターボチャージャーを装備した(4A30型、出力64ps/6500rpm)が主力だったが、2002年8月からは厳しさを増す排気ガス浄化規制やグリーン税制への準拠を果たすために、排気量657㏄の直列3気筒SOHC12Vにインタークーラー付きターボチャージャーを装備した(3G83型、出力64ps/6000rpm)仕様となった。

 実用性を磨いたNAエンジンは、3G83型ユニットで、657cc直列3気筒SOHC12V。希薄燃焼システムを採用したリーンバーンMVVエンジンとなっていた。10・15モード燃費は5MT16.4km/L(4AT15.4km/L)。排ガス中のCO2を大幅に低減し、触媒の改良でNOXの低減も図った環境ミニエンジンでもあった。7都県市/6府県市低公害指定基準に対応する排出ガスレベルを実現し、パワースペックは最高出力48ps/6000rpm、最大トルク6.3kg-m/3000rpm。走りはジェントルだったが郊外での使用ではストレスフリーだった。

 駆動方式は前2輪駆動とイージーセレクトと呼ばれる走行中でも切り替えが可能なパートタイム方式の4輪駆動仕様が選べた。トランスミッションは4速オートマチックと5速マニュアルとなっていた。

タウンボックスワイドも誕生

 1999年6月からは、同じシャシーコンポーネンツを使い、ボディサイズを若干大きくしたタウンボックスワイドがシリーズに加わった。こちらは3列6人乗りとし、エンジンを排気量1094㏄の直列4気筒SOHC16V(4A31型、出力75ps/6000rpmとしたもの。性能的に余裕が生まれたものの、軽自動車としてのメリットは失われてしまった。このタウンボックスワイドは、2001年5月には販売不振を理由に生産を中止している。

 タウンボックスワイドは、合理的なスタイリングと必要十分と言える装備、高性能エンジンによるレベル以上の走りなど、実用車として何ひとつ不足しているものはなかった。しかし、クルマはそれだけでは評価されないという、典型的な例だった。維持費やランニングコストの安い軽自動車規格のタウンボックスのほうが、多人数乗車が可能で、走りも余裕があったワイドよりも魅力的とユーザーは評価したのである。