フェアレディ240ZG 【1971,1972,1973】

ロングノーズでパフォーマンスを磨いた速さの頂点

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世界的に高い評価を獲得した240Z

 初代フェアレディZ(Z30型)のなかで、S20型エンジン(160ps)を積んだZ432とともに、別格の人気を誇るのが240ZGである。240ZGは輸出仕様と同様のパワフルな2393ccのL24型直列6気筒エンジン(150ps/5600rpm、21.0kg・m/4800rpm)を積み、ロングノーズ処理によって空気抵抗を減らし抜群の高速性能を誇ったスーパーZだ。1971年10月に登場し、トップスピード210km/hを誇った日本専用モデルである。

 1969年に登場したフェアレディZは、スタイリッシュな造形と抜群のパフォーマンスでマニアの熱い視線を釘付けにする。その人気は日本だけでなく世界的なレベルだった。とくに240Zを投入したアメリカの人気は絶大で、1971年には自動車専門誌の“ワールド・ベストカー”に選出。モータースポーツ分野でも大活躍し、1971年はモンテカルロ・ラリーで総合5位、世界で最も過酷なラリーと言われる東アフリカ・サファリラリーでもポルシェを破って総合&クラス&チームの完全優勝を果たした。

Z432を上回る太いトルクが魅力に

 当時、日本では排気量2000cc以上のクルマの自動車税が非常に高額だった。そのため国内仕様のフェアレディZは1998ccのL20型直列6気筒OHC(130ps)と、1989ccのS20型直列6気筒DOHC24V(432/160ps)を積む5ナンバーモデルのみで構成されていた。しかし海外から240Zの素晴らしさを伝えるニュースが数多く伝わるようになると、日本国内でも240Zを望む声が高まる。スポーツカーはマニアの夢を育む存在である。憧れの形成にハイパフォーマンスは必須条件だ。Z432でなくとも5ナンバーのフェアレディZは優れた高速性能を備えていたが、240Zはそれ以上だった。トップスピードはL20型搭載車の10km/h増しの205km/h、150ps/5600rpm、21.0kg・m/4800rpmの出力/トルクは、それぞれ25ps/4kg・mもL20型よりパワフルだった。とくに21.0kg・mの最大トルクは、Z432のS20型と比較しても3kg・m上回っていた。240Zのハイパフォーマンスは、たとえ高額の自動車税を負担してでも味わうだけの価値があったのだ。

 日産は1971年10月に日本市場へも240Zを投入することを決断する。しかも日本市場向けの240Zには、ベーシックな標準仕様、豪華装備のL仕様に加え、輸出仕様以上にスポーツポテンシャルを磨いたモデルが用意されていた。それが240ZGである。フェアレディZの持つ優れた高速性能をさらに高次元に押し上げる専用ロングノーズと、リアスポイラーを持つスペシャルバージョンである。

ZGのトップスピードは210km/h!

 240ZGの造形は、フェアレディZのスタイリングを担当した松尾良彦氏が製作した空力研究車がベースだった。テストコースや当時空いていた東名高速道路などで行った実走行テストで、高速時のスピードの伸びと燃費が大幅に向上することを確認。市販に向けリファインしたのが240ZGなのである。

 独特の存在感を醸し出す240ZGのノーズ部は、標準ボディより190mm長い。素材は軽量なFRP製で、前後のホイールアーチにはワイドタイヤの装着を想定したオーバーフェンダーもビルトインしていた。実際の風洞で行ったテストで240ZGは標準仕様の0.40を大幅に上回る0.37のCd値をマーク。240ZGの最高速度が210km/h(5MT)なのは、ロングノーズ化が空気抵抗の低減をもたらしたからだった。ちなみに210km/hの最高速度と15.8秒の0→400m加速データはZ432と共通で日本最速レベルだった。

 レーシングカー並みの複雑なメカニズムを持つZ432のS20型ユニットは本来の性能を発揮させるために微妙な調整を必要としたが、量産車用をチューンした240ZGのL24型はタフ。ほぼメンテナンスフリーで安定した性能を誇った。実質的には240ZGのほうがZ432よりも速く、国産最速の存在だったのだ。240ZGはフェアレディZのイメージリーダーとして君臨し、モータースポーツでも大活躍する。今度は海外から240ZGの輸出を求める声がメーカーに届いたという。

雨のレースで圧倒的な強さを発揮した240ZG

 240ZGはモータースポーツでも大活躍した。とくに雨のレースでは抜群の速さを発揮する。富士スピードウェイを40周づつ2回走る2ヒートで争われた1972年6月の富士GC第2戦「富士グラン300マイルレース」では、レーシングスポーツのマクラーレンM12やロータスT280を抜き去り、見事に総合優勝を飾った。

 第1ヒートでは予選&本戦ともに中位に甘んじていたが、天候が悪化してコースが水浸しになった第2ヒートで、持ち前の速さをいかんなく発揮。トップでチェッカーフラッグを受ける。第1ヒートと第2ヒートで合計145ポイントを獲得し総合優勝に輝いたのである。ドライバーの柳田春人はその後も多くの優勝を重ね“フェアレディ遣い”の異名を取った