セドリック 【1979,1980,1981,1982,1983】

国産初のターボ車を設定した人気の第5世代

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1980年代に向けた最高級サルーンの模索

 クルマの排気ガスをCO2.1g/km、HC0.25g/km、NOx0.25g/kmまで低減させるという昭和53年排気ガス規制に対し、日産自動車は大型乗用車は電子制御燃料噴射装置+三元触媒で、中型乗用車は2点火栓急速燃焼方式(日産NAPS-Z)+酸化触媒で、小型乗用車は従来エンジンの改良+酸化触媒で対応した。最も厳しい規制への克服に目処がつけた開発陣は、1970年代終盤に入ると新型車の開発を急ピッチで推し進めるようになる。なかでも力を入れたのが、市場から“旧態依然”と揶揄されていた大型乗用車のカテゴリー、具体的にはセドリック/グロリアだった。

 来るべき1980年代をリードする日産の旗艦モデルの姿とは--。この課題に対して開発陣は、安全性・省資源・低公害・快適性の一層の充実を図ることを目的に、自社の技術力の高さを市場に示す“ハイテク”装備の積極的な採用を決断する。同時に内外装についても、新たなアプローチの高級感を模索した。

フォーマルとパーソナルを融合させた造形

 スタイリングに関しては、「近代感覚を盛り込んだ格調の高いスタイル」をテーマに、装飾を多用した従来の330型系とは大きく異なる水平基調のシンプルなボディラインを構築する。ボディバリエーションは従来型で設定した2ドアハードトップは廃止し、4ドアハードトップと4ドアセダン、そしてワゴンとバンを用意。セダンはオペラウィンドウを、ハードトップはクリスタルカット風のリアウィンドウを、ワゴンとバンは2段ルーフとパノラマ風リアウィンドウを組み込んだ。フロント部は縦型を基調としたグリルに、セダンがフォーマルで近代的な角型4灯式ヘッドランプを、ハードトップは角型2灯式のハロゲンヘッドランプを装着。また、ワゴンは角型4灯式、バンは丸型4灯式のヘッドランプを採用した。リア部はセダンが直線基調のコンビネーションランプ、ハードトップが台形フォルムのランプ、ワゴンとバンが縦型デザインのランプを装備する。各ボディタイプに分けて外装パーツをデザインしたのには、それぞれのキャラクターをより明確化させる目的があった。

 インテリアについては、「高級車にふさわしいローデシベル空間の実現」を基本方針に掲げてアレンジする。まず、ボディ各部材の結合部やサスペンション取り付け部の剛性をアップ。さらに、ダッシュボードなどの内装パーツの設置部も大幅に見直し、室内の静粛性と耐振性の向上を図った。シート関連では前席セパレートシートのフルフラット化や上級グレードでのグランドシートの装着、調整式リアヘッドレストの採用、パワー調整機構付きシートの拡大展開がトピック。装備面ではフルオートデュアルエアコンおよびブリーズメイトの採用や前席足元専用エアコン吹き出し口の設置、ソフトパッドと立体木目との調和を図った新デザインのインパネの装着、ドライブコンピューター/アナログ式電子表示チューナーラジオ/テープカウンター付きカセットステレオ/パンポット・サウンドバランサーの設定などを実施した。

先進技術の積極的な導入

 シャシーに関しては基本的に従来型を踏襲しながら、リアサスペンションの5リンク化やダブルウイッシュボーン式フロントサスペンションへのテンションロッドの追加、新高張力鋼板の採用を実施し、乗り心地や耐久性の向上を図る。

 搭載エンジンはL28E型2753cc直6OHC(145ps/23.0kg・m)を筆頭に、L20E型1998cc直6OHC(130ps/17.0kg・m)、L20型1998cc直6OHC(115ps/16.5kg・m)、SD22型2164cc直4OHVディーゼル(65ps/14.5kg・m)、SD20型1991cc直4OHVディーゼル(60ps/13.0kg・m)という計5機種を設定。また、営業車用にZ20P型とL20P型の2エンジンを用意した。ちなみにL28E型には、電子式エンジン集中制御システムのニッサンECCS(Electronic Conetrated Engine Control System)が組み込まれる。エンジンの点火時期のほか、燃料噴射量、アイドル回転数、排気ガス還元量などをマイクロコンピュータの演算によりコントロールするこのシステムは、燃費や出力の向上とともに排気ガスの低減も図ることができる世界初の画期的な先進機構であった。

 開発陣は操舵系や制動系にも工夫を凝らす。パワーステアリングには、新開発のバリアブル・ギア・レシオ(16.0~14.4に変化)およびエンジン回転感応型ポンプを採用。室内のハンドル自体にも、新開発のバランススプリング付きチルト機構を組み込んだ。ブレーキ関連ではL28E型エンジン搭載車に四輪ディスクブレーキを採用した上で、前輪側にはベンチレーテッド機構と7.5インチ・タンデムマスターバックを装着。また、コラムチェンジ式AT仕様には足踏み式パーキングブレーキを設定した。

豊富なバリエーションで市場デビュー

 1980年代に向けた日産の新しい高級乗用車のセドリックは、430の型式を付けて1979年6月に市場に送り出される(同時に、兄弟車のグロリアも新型に移行)。車種展開は4ドアハードトップ/4ドアセダン/ワゴン/バンの4ボディに、L28E型/L20E型/L20型/SD22型/SD20型/Z20P型/L20P型という7機種のエンジンを用意。グレード展開は計62タイプのワイドバリエーションを誇った。

 5世代目となる430型系セドリックは、「またしても先駆。セドリック」「快適ローデシベル空間」のキャッチコピーが冠せられる。とくに強調されたのが“ローデシベル空間”で、従来の330型系、さらに重量増加のデメリットはあったものの騒音振動対策では有利なフレーム付きのシャシーを採用していた当時のトヨタ・クラウンを凌駕する静粛性と耐振性を成し遂げた事実を、この言葉に込めたのである。

 市場に放たれた430型系セドリックは、その先進性とユーザー好みのラグジュアリー感の演出が功を奏して、好調な販売成績を記録する。とくに最上級グレードのブロアムの人気が高く、当時のディーラーのスタッフによると、そのハイテクぶりから「コンピューター付きのクルマ」と呼ばれたそうだ。

国産初の量産ターボ車の登場

 出足好調な430型系セドリックの存在感をさらに高めようと、日産は矢継ぎ早に高性能モデルの追加を実施していく。
 デビューから4カ月ほどが経過した1979年10月には、国産乗用車初の6気筒ディーゼルエンジンであるLD28型2792cc直6OHCディーゼル(91ps/4600rpm、17.3kg・m/2400rpm)を搭載した仕様を、4ドアハードトップ/4ドアセダン/ワゴンに設定する。第2次石油危機の最中に登場した経済性に優れる高級ディーゼル車は、市場から高く評価された。

 さらに2カ月ほどが過ぎた1979年12月になると、またもや国産乗用車初のエンジンを積み込んだ車種が、4ドアハードトップ/4ドアセダンに設定される。既存のL20E型に排気エネルギーを活用する“ターボチャージャー”機構を装着したL20E-T型1998cc直6OHCターボ仕様が追加されたのだ。145ps/5600rpm、21.0kg・m/3200rpmのパワー&トルクを発生し、専用セッティングのミッションやハードサスペンションを奢ったターボ仕様は、5ナンバーボディでL28E搭載車より速いモデルとして、たちまちヒット作に昇華する。そして1980年代初頭には、430型系セドリックのイメージリーダーに成長していった。

 ちなみに当時の日産スタッフによると、「ターボエンジンの運輸省(現・国土交通省)による認可取得は、予想以上に大変だった」という。前述したように、当時は第2次石油危機の真っただ中。パワーの引き上げ効果を有するターボチャージャーには、逆風が吹いていたのだ。しかし、日産の開発陣は根気よく担当者を説得。「排気エネルギーの再利用は、結果的にエンジン効率を高める」という論旨を展開し、何とかターボエンジンの認可を勝ち取ったのである。

車種展開の拡大とメカニズムのリファイン

 ターボエンジンや直6ディーゼルエンジンの設定以降も、開発陣は着々と430型系セドリックの魅力度を引き上げていく。
 1980年2月には、LD28型エンジン搭載車に5速MT仕様を追加。同年4月にはターボのブロアムとAT仕様、さらに固定式ガラスルーフを備えた“スタールーフ”を発売する。同年8月になると、LD28型エンジン搭載のワゴン/バン5MT仕様が追加された。

 初のマイナーチェンジは1981年4月に実施される。外装ではカラードバンパーなどを新採用して見栄えを向上。内装ではオーディオや空調類の使い勝手を見直し、利便性を引き上げた。さらに、L20E-T型エンジンのノックセンサーの装着やL20E型エンジンのECCSの採用など、メカニズム面の改良も図られる。
 1982年6月になると、待望のロックアップ付き4ATがL28E型やL20E-T型などに組み込まれる。同時に、L20E-T型にECCSが、上級グレードにオートスピードコントロール装置やボイスコンパニオンなどの装備が設定された。
 高級乗用車としての完成度を着実に高めていった430型系セドリック。販売成績の面ではライバルのクラウンを撃墜するまでには至らなかったが、それでも比較的好調なセールスを続け、モデル末期までコンスタントな登録台数を記録した。

 セドリックは1983年6月に入るとフルモデルチェンジが実施され、430型系からY30型系へと移行する。このY30型系ではメインのガソリンエンジンの形式が一新され、従来のL型系直6から新世代のVG型系V6へと切り替わった。結果的に430型系は、名機の誉れが高いL型系ストレート6ガソリンエンジンを積む最後のセドリックとなったのである。