バイオレット5ドア 【1980,1981】
ユーティリティとスポーティーさを磨いたマルチモデル
日産は、主力車種のひとつであったブルーバード系が、ブルーバードUとなって大型化し、今までのブルーバードのポジションが空いてしまったことから、サニー系との中間車種として新たにバイオレットと呼ばれるシリーズを1973年にデビューさせた。そのバイオレットの初代では、スタイリングはスケールダウンしたブルーバードUであり、メカニズムも基本的にブルーバードUからの流用であった。バイオレットの車名は英語でスミレの意味だ。
バイオレットは1977年5月にフルモデルチェンジされて2世代目となった。スタイリングは曲面を多用していた初代から一転して直線を基調としたシャープなイメージに変身。少なくとも、ブルーバードの縮小版という枠を離れ、形式名もA10型となり、独立したシリーズとなったわけである。当初のボディバリエーションは4ドアノッチバックセダン、リアハッチを備えたオープンバックと名付けられた3ドアファストバックの2種があった。
搭載されるエンジンは排気量1397㏄の直列4気筒OHV(A14型、出力80ps/6000rpm)をベーシックに、排気量1595㏄直列4気筒SOHC(Z16型、出力95ps/6000rpm、トップレンジの排気量1595㏄の直列4気筒SOHC電子制御燃料噴射装置付き(Z16E型、出力105ps/6000rpm)の3種。トランスミッションはフロアシフトの3速のオートマチックと、4速/5速マニュアルを設定。駆動方式はフロント縦置きエンジンによる後2輪駆動。4輪駆動モデルの設定はない。
サスペンションはブルーバード譲りの前がマクファーソンストラット/コイルスプリング、後ろは4リンク/コイルスプリング。ブレーキは前がディスク、後ろはドラムの組み合わせでサーボ機構を持つ。実用車としては常識的なものとなった。
1980年4月からは実用性とスポーティーな雰囲気を持った5ドアハッチバックが加わる。それに先立つ1979年6月のマイナーチェンジに伴い、小気味いい走りと充実した装備を特徴とした、電子制御燃料噴射装置を持つ排気量1595㏄の直列4気筒SOHCエンジンを搭載したバイオレット1600SGX-Eが登場している。
また、この2代目バイオレットの時期にバッジエンジニアリングとなる兄弟車、チェリー店系列の専売モデルであるオースターと、さらにサニー店系列の専売モデルとなるスタンザがデビューしている。
1979年のマイナーチェンジでは、基本的なシャシー構成やエンジンをはじめとするメカニズムには大きな変化はなく、もっぱら内外装の変更に留まった。大きな変化は、ヘッドライトの形状がそれまでの丸型4灯式から角型4灯式に改められ、ラジエターグリルのデザインも一部変更された(1980年に登場した5ドアハッチバックモデルは後期型にのみ存在)。後席の居住性を高めるために、室内寸法はそのままにレッグスペースを30㎜延長している。1980年4月には、かつてのブルーバードに存在した、女性仕様となるファンシーデラックスの伝統を受け継ぐ1400ファンシーGLと称するモデルがデビューしている。バイオレットは、1981年6月にフルモデルチェンジを受け、その名もバイオレット・リベルタとなった。トヨタ・コロナのライバルと言われたものの、実際的な販売は振るわなかった。