シャレードDETOMASO926R(コンセプトカー) 【1985】

究極の走りを追求したミッドシップスポーツ

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グループBマシンを意識した究極のシャレード

 ダイハツ工業は1985年に開催された第26回東京モーターショーにおいて、「Little BIG Dream Car」をテーマにブースを設置して多様なコンセプトカーを参考出品する。そのなかで主役に据えられたのは、“An Optinum 1-Liter Midship-designed Car”のキャッチを冠した「シャレード DETOMASO(デ・トマソ)926R」だった。

 シャレード DETOMASO 926Rは、1984年10月にデビューした200台限定モータースポーツ用ベースモデルの「シャレード 926ターボ」を基本に、“リッターカーの走りの究極”を目指して開発が行われる。車名が示す通り、企画にはイタリアのデ・トマソ社が深く関与した。エンジンは4バルブDOHCヘッドを組み込んだ926cc直列3気筒DOHC12Vターボチャージャー(最高出力はグロス値で120ps)で、本来後席にあたる場所にパワーユニットを横置き搭載する。つまり、グループBマシンのルノー5ターボなどと同じ作りのミッドシップ方式を採用したのだ。

 組み合わせるトランスミッションは専用セッティングの5速MTで、駆動輪はリア。2シーターレイアウトの2BOXボディは前後重量配分を50:50に近づけて、運動性能を向上させる。また、ボディ自体は空力性能の引き上げやエンジンおよび足回りの冷却アップを目的にリデザイン。具体的には、大型の前後ブリスターフェンダーや専用エアロパーツ、エアインテーク&アウトレットの装備などを実施した。ボディサイズは全長3850×全幅1640×全高1360mm、ホイールベース2320mm、トレッド前1380×後1410mmに設定。懸架機構は強化タイプの前マクファーソンストラット/コイルスプリング+スタビライザー、後ストラット/コイルスプリングで仕立て、制動機構には4輪ディスクブレーキをセットした。

イタリアン・ブランドでまとめた贅沢な装備品

 シャレード DETOMASO 926Rは、装備アイテムでも脚光を浴びた。イタリアの一流ブランド品が惜しげもなく組み込まれていたのだ。エクステリアではCARELLO(キャレロ)のフォグランプにVITALONI(ビタローニ)のドアミラー、ANSA(アンサ)のデュアルエグゾーストマフラー、FIAMM(フィアム)のエアホーンなどを採用。シューズは前205/50VR15、後225/50VR15サイズのPIRELLI(ピレリ)P700タイヤと前6J×15、後7J×15サイズのCAMPAGNOLO(カンパニョーロ)マグネシウム合金ホイールで武装する。
 インテリアには、外径350mmのMOMO(モモ)本革巻きステアリングやVEGLIA(ヴェリア)の独立丸型メイン2眼+補助6眼メーターなどを装着していた。

 外装カラーは鮮やかなレッドで彩り、前部にデ・トマソのエンブレムと白色のCHARADE 926Rのステッカーを、サイド部に白色のCHARADE 926R DETOMASOのステッカーを、後部に白色の926R DOHC TURBOのステッカーを貼付する。また、内装には専用デザインおよび表地のメーター&センター一体逆L字型パネルにアルミ製のABCペダル、レッド&グレーカラーのバケットシートとドアトリム、レッドステッチの本革巻きシフトノブなどをセット。純スポーツモデルながら華やかなムードを醸し出した内外装の演出は、デ・トマソの粋とダイハツのこだわりが存分に感じられるものだった。

テスト走行では200km/hの最高速度をマーク

 モーターショーの会場では、イタリアの風景をバックに疾走するシャレード DETOMASO 926Rの映像も披露される。また、テスト走行の際には200km/hのマキシマムスピードを確認。一部メディア向けの試乗会も催され、予想以上に高い評価を獲得した。残すはホモロゲート取得のための市販化およびラリーへの参戦−−。しかし、その期待は儚く消える。シャレード DETOMASO 926Rが生産ラインに乗ることはなく、また主戦場になると思われたWRC(世界ラリー選手権)の舞台では1986年シーズンをもってグループBの中止が決定したのだ。

 ベース車の926ターボが世界一過酷といわれるサファリ・ラリーであれだけ速かったのだから(1985年開催のサファリではグループBの1300cc以下でクラス優勝を達成)、926Rも市販化して熟成を進めれば、きっとWRCのシーンで大活躍したはず。いや、ラリーの成績如何にかかわらず、ダイハツ初のスーパースポーツモデルとして自動車史に名を残したはずだ−−。ダイハツのファン、さらには日本のクルマ好きたちは、今もなお926Rがコンセプトカーにとどまったことを惜しんでいるのである。