アルト 【1984,1985,1986,1987,1988】

ワークスを生み出した気配りの2代目

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2代目のキーワードは“ヒューマンなクルマ”

 47万円の衝撃的なプライスで人気を集め、64ヵ月で83万台の販売を達成したアルトは1984年9月に2代目に移行する。2代目も軽自動車本来のシティコミューター機能を磨いた傑作である。開発コンセプトを“ヒューマンなクルマ”とし、各部の設計をユーザーの視点に立ち返って吟味し使い勝手に磨きをかけたのがポイントだった。とくに女性ユーザーの利便性を考慮してチルトステアリング&運転席シートリフターに加えて、日本初の回転ドライバーズシートを導入。乗り降りのしやすさと運転のしやすさを引き上げたのが話題だった。

 回転ドライバーズシートは、人間の動作研究から生まれた装備で運転席が右側に60度回転した。乗り込むときはシートに腰かけやすく、また降りるときは足運びを自然なものにする機構である。通常のシートでも乗降性は劣っていなかったが、回転ドライバーズシートはクルマに乗り込み、降りる動作をエレガントにした。この気配りこそ2代目アルトの真骨頂といえた。日常の足として頻繁に使うアルトだからこその親切設計が、アルトの魅力を際立たせたのである。

イージードライブを追求したATが主役に

 全高を1400mmに引き上げたのも2代目のポイントである。たっぷりとした全高に合わせてシートポジションはアップライトとなり、アイポイントも高まった。その高めのポジションはカローラなどの小型車を凌ぐほどだった。高めのポジションは、良好な視界を約束しただけではない。心理的な安心感を増す効果も発揮した。2代目アルトは、軽自動車規格に縛られたミニマムなボディサイズながら、大柄なクルマに囲まれても怖くないクルマだった。それはこのアイポイントの効果が大きかった。高い目線により全体の状況が把握できるため不安感を覚えなかったのである。

 メカニズム面は基本的に初代を踏襲し熟成を加えていた。エンジンはF5A型の直列3気筒4サイクルで、31ps/6000rpm、4.4kg・m/3500rpmを発揮する。決してパワフルではなかったが、500kg台に収まった軽量ボディを意外なほど軽快に走らせる実力の持ち主だった。トランスミッションは4速マニュアルを基本として、グレードによって2速オートマチックと、5速マニュアルも選べた。オートマチックが2速仕様だったのは、まだメカニズムが進化途上にあったためだが、高速走行を除けば走りに不満を抱かせなかった。女性ユーザーの台頭と歩調を合わせ、軽自動車でもオートマチックが主流になったのは、この2代目アルトからだった。サスペンションはフロントがストラット式、リアが半楕円リーフ式で、ホイールベースを先代比15mm伸ばした2175mmとすることでしなやかにセッティングしていた。

ポケットいっぱいの幸せ!小物入れを多数配置

 アルトは室内各所に小物入れ=ポケットを配置し、便利さに磨きをかけていた。インスツルメントパネルの中央にはふた付きのボックス、右端にはコインケースを配置。もちろん大容量のグローブボックスとアンダートレイも用意していた。それだけではない。カセットテープのケースがきれいに収納できるセンターコンソールや助手席下のシューズケース、ドアポケットなど、まさに至れり尽くせり、ラゲッジスペースも広く、後席は簡単に折り畳むことができた。日常生活のパートナーとして使い勝手に優れたアルトは、便利で気配りが行き届いたしっかり者だった。

スポーツマニアを魅了するワークスの誕生!

 2代目アルトは積極的にラインアップを拡充することで一段と魅力を鮮明にしていく。1984年11月には4WDモデルを追加し、翌1985年6月には最高出力44psのターボモデルと5ドア仕様が登場。1986年7月にはマイナーチェンジを実施しライト周りを中心にリファインすると同時に、リアサスペンションをロードホールディング性能に優れたITL(アイソレーテッド・トレーリングリンク)式にグレードアップした。パワーユニット面では48ps仕様の新設計DOHC12V仕様を登場する。

 1987年2月になると1.3リッタースポーツと同等の速さを持つDOHC12Vターボエンジン(64ps)を搭載したフルタイム4WDモデル、アルト・ワークスRS-Rが誕生する。アルト・ワークスは従来からの女性ユーザーだけでなく、スポーツ派の男性マニアにもアルトの存在をアピールする。鮮烈な走りだけでなく大胆なエアロチューンでも先進的な存在で、コンパクトスポーツの新たな方向性を提示する力作だった。