スターレット・ターボ 【1986,1987,1988,1989】

強力2モードターボを積み込んだボーイズレーサー



スターレットの前身はパブリカ

 トヨタ自動車のモデルレンジに「スターレット」の名が初めて登場するのは、1973年4月に発売された「パブリカ スターレット」である。このモデルは、水冷エンジンを搭載したパブリカ(KP30型)の上級車種という位置付けで内外装を一新し、若者向けのパーソナルカーとしたもの。車名のスターレット(Starlet)とは、英語で小さな星とか小さな人気者を意味する。小型で剽悍な運動性能を持つモデルの特性をうまく表現している。

 1978年2月にパブリカ スターレットはフルモデルチェンジされて第二世代となる。ここで「パブリカ」のサブネーミングが消えて、名実ともに独立したシリーズとなった。スタイリングは、3ボックス形の2ドアクーペ/4ドアセダンから、時流に即した2ボックス形の3ドアハッチバックと5ドアハッチバックとなる。駆動方式は旧型と同じフロント縦置きエンジンによる後2輪駆動で、トヨタらしい堅実なレイアウトであった。軽量なボディとしっかりした足回り、強力なエンジンの組み合わせは、スポーティーカーとしても十分通用する性能を発揮し、欧州調の走り味を持つボーイズレーサーとして高い人気を集めた。

3代目はFFレイアウトを採用して登場

 1984年10月にフルモデルチェンジされて第3世代となったスターレットは、初めてフロント横置きエンジンによる前輪駆動方式を採用し、一気に近代化される。トヨタは前輪駆動方式の採用には慎重で、1978年8月にデビューしたターセル/コルサが最初の例となる。ちなみに、国産車で量産された乗用車として初めて前輪駆動方式を採用したモデルは、1955年10月に売り出された軽自動車のスズキ・スズライトであった。

 第3世代のスターレットは、基本的なスタイリングイメージを2ボックスハッチバックのまま、旧型から継承していたが、前輪駆動方式の採用によって、室内スペースは格段に拡げられていた。寸法的には2300㎜のホイールベースは変わらず、全長が120㎜短くされており、全幅は55㎜拡大され、全高は5㎜ほど高くなっている。

 ボディバリエーションは2ドアハッチバック、および4ドアハッチバックの2種で、リアゲートは上ヒンジの一枚扉となっていた。スタイリングは、旧型に比べてエッジの利いたシャープなものとなり、スラントしたエンジンフードは前方視界を良好なものとしていた。

ターボモデルは100psオーバーの俊足

 スターレットはトヨタのエントリーモデルだけに、幅広いユーザー層に対応するべく、高性能スポーティー仕様から運転のしやすさに重点を置いたエントリー仕様まで様々なモデルがあった。エンジンは排気量1295㏄の直列4気筒SOHC12バルブ(2E-LU型、キャブレター仕様、出力73ps/6000rpm、以下すべて後期モデル/ネット値)をベーシックに、低燃費指向のパーシャルリーンシステムを装備した仕様(出力67ps/6000rpm)、それにスポーツ仕様(2E-ELU型、電子制御燃料噴射装置付き、出力82ps/6000rpm)などチューニングの異なる3種が用意されていた。また、特別仕様車や限定モデルの多かったこともスターレットの特徴のひとつで、1985年1月から装備を充実して価格を低く抑えたお買い得な特別仕様のソレイユが設定され、のちに正式なカタログモデルとなった。さらに1986年12月からは排気量1453㏄のディーゼルエンジン仕様(N1型、出力55ps/5200rpm)もラインアップされている。

 1986年1月にはインタークーラー付きターボチャージャーを装備した(2ET-LU型、出力105ps/5600rpm)が加わった。トランスミッションは4速および5速のマニュアル仕様、3速オートマチック仕様だったが、1986年12月には4速オートマチック仕様も設定された。

 ターボ用の2E-TELU型エンジンは、高効率の空冷式インタークーラーを備え、新機構の2モードターボシステムを装備していた、2モードターボは、通常モードに加え、過給圧を抑制して雨や雪の滑り易い路面でもスムーズな走りを生むLOモードを設定。パワースペックは通常時は最高出力105ps/5600rpm、最大トルク15.2kg-m/3600rpm。LOモードでは91ps/5600rpm、最大トルク13.4kg-m/2800rpmを発揮した。LOモードを設定する必要があるほど、その走りは過激だったのだ。

シンプルながら性能の良さが魅力

 サスペンションは前がマクファーソンストラット/コイルスプリングで旧型と同様の形式だが、後はトーションビーム/コイルスプリングと簡略化されている。ブレーキは前がディスク、後はドラムでサーボ機構を持つ。標準装備されるタイヤは175/60R14である。

 第三世代のスターレットは、性能的なトップグレードである1300ターボSから4ドアハッチバックの1500ディーゼルまで、12グレードがあった。価格的には69万3000円(3ドアハッチバックのスタンダード仕様)から、131万7000円(ターボR、5ドアハッチバック)となっていた。価格だけで見ても一部の車種では軽自動車の上級モデルに迫る価格となっており、この辺も人気の大きな要因となっていた。1980年代末の時代、スターレットは、トヨタの乗用車レンジのボトムエンドを支える車種として、その存在は決して小さくはなかったのである。

 1990年代に入り、新しいコンパクトモデルのヴィッツ(1999年1月)やプラッツ(1999年8月)がデビュー、それと入れ替わるように、26年間に及んだ生産を中止している。日本的な名車として記憶に残るモデルだ。