三菱デザイン5 【1975,1976,1977,1978】

クリーンでモダンに変身した1970年代後半の乗用車群

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“ハイパーソナルカー”を謳ったハッチバッククーペ

 海外の流行を積極的に取り入れ、それを加味しながら独自のエンジニアリングで車両デザインを打ち出していった1970年代前半の三菱自動車工業。その開発姿勢は、省エネや排出ガス規制の克服が課題となる1970年代後半に入ると、さらなる輝きを放つこととなった。

 1975年3月には、FTOの実質的な後継車で“ハイパーソナルカー”を謳う「ランサー・セレステ」を発売する。MCA(Mitsubishi Clean Air)エンジンを設定した低公害車であることをイメージさせるラテン語のサブネーム“Celeste=青い空”を付けた小型スペシャルティのスタイリングは、スポーティなクーペフォルムと風洞実験によって得られた空力特性の良さを特徴とする。リア部には実用的なハッチゲートを組み込み、“ビッグユーティリティ”と称する広い荷室開口部を確保。同時に後席シートバックには可倒機構を組み込んだ。低公害の要となるサターンエンジンは、4G33型1439cc直4OHC、4G32型1597cc直4OHCのシングルキャブ仕様とツインキャブ仕様、そしてサーマルリアクター(排気ガス再燃焼装置)とEGRを組み込んだMCA-Ⅱ付きの4G32A型1597cc直4OHCの計4ユニットをラインアップする。

 セレステは資本提携先のクライスラーの母国、アメリカ合衆国でもリリースされる。クライスラーのブランドのひとつであるプリマスから「アロー」の名で発売されたが、予想以上に販売成績は伸びた。とくにスポーティなデザインと使いやすいラゲッジが好評だったという。

“Σ”のサブネームを付けたスタイリッシュセダン

 1976年5月になると、全面改良したギャランが“Σ”(シグマ)のサブネームを付けて発売される。
 ギャランとしては3代目となる新型は、ボディタイプを4ドアセダンに1本化。また、そのスタイリングはイタリア人デザイナーのアルド・セッサーノ氏が基本造形を手がけ、直線基調のシャープな面で構成した。カタログなどでは「ひときわ目立つLOW&WIDE、LOW&LONGのプロポーション」「動と静が調和した新鮮な印象のスタイリング」「洗練されたヨーロピアン調の流れるライン」などと表現する。一方の内装デザインは、快適性やくつろぎ感をテーマに“走るリビングルーム”を創出。計器盤やスイッチ類の意匠および配置にも、人間工学に基づきながら様々な工夫を凝らした。搭載エンジンについては、改良版の4G32型と4G51型(1855cc直4OHC)、4G52型(1995cc直4OHC)を設定。4G5型系にはサイレントシャフトを組み込んだ。

 市場に放たれたギャランΣは、その新鮮味あふれる内外装デザインや洗練度を増した走りなどが好評を博し、たちまち人気モデルに発展する。結果的には、歴代ギャランのなかで最も販売台数の多いモデルに昇華した。
 ギャランΣの登場から半年ほどが経過した1976年11月、2ドアクーペ仕様のギャラン“Λ”(ラムダ)がデビューする。Σのセダンデザインは非常に目新しかったが、Λのクーペデザインはそれ以上に斬新だった。

 Λのシャシーは基本的にΣと共通で、ホイールベースも2515mmと同寸法。一方、その上に載るクーペボディは、尖角ノーズに角型デュアルヘッドライト、ロールバー風クオーターピラー、ラウンドタイプのリアウィンドウ、流麗なサイドラインなどで構成し、アメリカ製上級クーペのようなモダンなスペシャルティ感を演出する。内装も非常に個性的で、国産車としては初となる1本スポーク式ステアリングやヘッドレスト内蔵型のフロントシート、チェック柄ファブリックや本革を使った上級素材のシート表地などを組み込んで華やかに仕立てた。搭載エンジンは4G52型の1機種で、シングルキャブ仕様とツインキャブ仕様の2タイプを用意する。

直線基調でクリーンなフォルムの新感覚ハッチバック

 ミドルクラス車を新デザインに切り替える一方、三菱自工の開発陣は新しい大衆車の開発も着々と推し進める。そして1978年2月になって、FFレイアウトのニューモデルである「ミラージュ」を発表した。

 新販売網のカープラザ店からリリースされたミラージュは、基本スタイリングに当時の欧州で主流となった2BOXのハッチバック形状を採用する。デザイン自体は直線を基調としたクリーンなフォルムが特徴で、角型ヘッドライトやブラックアウトした横長グリル、広いガラスエリア、シンプルなリアコンビネーションランプなどがまとまり良く収まる。内装のアレンジも凝っており、スライドスイッチ式のライト&ワイパー調整や2チャンネル・4スピーカーのオーディオシステムなどを組み込んだ。ボディタイプはデビュー当初が3ドアのみの設定で、同年8月にはホイールベースを80mm伸ばした(2380mm)5ドアが加わる。搭載エンジンはG11B型1244cc直4OHCとG12B型1410cc直4OHCの2機種をラインアップ。組み合わせる4速MTには、“スーパーシフト”と称する2速(POWER/ECONOMY)の副変速機も設定された。