ビッグホーン 【1991,1992,1993,1994,1995,1996,1997,1998,1999,2000,2001,2002】

名門最後のフラッグシップSUV

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SUVの決定版!先進2代目の誕生

 2代目となるビッグホーンは、ロングボディ(2/3/2名の7名乗り。全長4660mm)が1991年12月に登場、翌1992年3月からはショートボディ(2/3名の5名乗り。全長4230mm)が発売される。車種展開はロングボディが上級仕様のハンドリング・バイ・ロータス、スポーティモデルのイルムシャー、標準グレードのベーシックという3タイプを設定。ショートボディはイルムシャーRS、イルムシャー、ベーシックの3タイプをラインアップした。

 日本の四駆ブームを定着させ、しかもライバル車をリードする新たなSUVを生み出さなくては--。SUVの先駆メーカーを自負するいすゞ自動車のスタッフは、そんな気概で次世代型のビッグホーンの開発に取り組んだという。開発陣がまず机上に上げたのは、クルマの基本となるボディサイズだった。従来以上に上質で、快適性の高い室内空間に仕上げるには……。最終的に開発陣は、3ナンバーの専用ボディにする決断を下す。外装に関しては、当時のデザイナーによると「既存のSUVにはなかった、端正で上品なスタイリングを目指した」という。エンジンは新開発の6VD1型3165cc・V6DOHCガソリンと4JG2型3059cc直4OHVインタークーラー付きディーゼルターボを搭載。駆動メカニズムにはオーソドックスなパートタイム式を採用した。

シャシーはフロントがダブルウィッシュボーン/トーションバースプリングで、リアが4リンク/コイルスプリングという形式だったが、横方向の位置決めにパナールロッドを用いず、デフの上にセンターAアームを追加するという凝った手法を採用した。また先代モデルと同様にロータス社とイルムシャー社に足回りのチューニングを依頼。ロータス仕様は標準モデルよりバネ定数を上げてスタビライザー径をやや細くし、イルムシャー仕様はバネ定数をロータス仕様よりもさらに上げたうえにスタビライザー径もシリーズ中、最も太いサイズとした。組み合わせるタイヤは全車とも245/70R16サイズ。当時はSUVのタイヤは太いほうがカッコいいと言われ、ライバル車はこぞって265サイズを装着していたが、いすゞの開発陣は「無用な振動やノイズは極力減らしたかった」という理由でやや細めの245サイズを選択した。

上質な内装。サルーン感覚で乗れるSUV

 新しいビッグホーンは内装も凝っていた。インパネはシンプルで機能性の高いデザインが特徴。空調やヘッドライトなどの主要スイッチは、手袋をしたままでも操作できるようにダイヤル式にまとめる。またハンドリング・バイ・ロータスにはMOMO製の3本スポーク本革巻きステアリングや綾織りの上質なシート地を、イルムシャーにはMOMO製の4本スポーク本革巻きステアリングやレカロ製フロントシートなどを標準で装備していた。

 端正なルックスに上質な室内、しかも3タイプのキャラクターを選択できた2代目ビッグホーンは、ライバル車のパジェロやハイラックス・サーフには及ばないものの、堅調な販売台数を記録し続ける。識者からは「押し出しの強いSUVが多い中、サルーン感覚で乗れる上質な1台」と高く評価された。
 ビッグホーンが注目を集める一方、いすゞ自動車は1992年に重大な決断を下す。乗用車の自社生産の中止を決定したのだ。この決断には「GMの下請けのような乗用車の開発には意味がない」という現場の意見も含まれていた。これ以後いすゞは、ビッグホーンやミューを中心とした“SUVスペシャリスト”を標榜するようになるのである。

SUVスペシャリストの旗艦モデルの運命は--

 1台のモデルを長く作り続け、各部を熟成させて完成度を高めていくいすゞ自動車の方針は、2代目ビッグホーンでもきちっと貫かれていく。1993年10月にはいち早くPM(粒子状物質)規制を克服したディーゼルエンジンを搭載。同時に最上級仕様のロータスSEと、従来のベーシックに代わるLSグレードを設定する。1995年6月にはビッグマイナーチェンジを敢行。内外装の変更のほか、4JG2型への電子制御燃料噴射ポンプの装着、走行中に2WD~4WDの切り替えができる“シフトオンザフライ”の導入、電子制御式トルクスプリット4WDの“TOD”(トルクオンディマンド)の採用などを実施した。また、オーバーフェンダーを装備したXSプレジールという新グレードもラインアップに加える。1998年3月になると、2代目ビッグホーンは2度目のビッグマイナーチェンジを行う。最大の注目点はエンジンの変更で、ディーゼルはコモンレール式の4JX1型2999cc直噴直4DOHCに換装。ガソリンエンジンも6VE1型3494cc・V6DOHCに一新された。

 2001年にはガソリンエンジン用ECUの高性能化やディーゼルエンジンの排出ガスのさらなるクリーン化などを達成した2代目ビッグホーンだったが、結果的にこれが最後の改良となった。いすゞ自動車は2002年に入ると日本市場でのSUVの生産中止を決定し、ビッグホーンの寿命も尽きることとなったのである。