93日産シルビアvs93トヨタ・セリカ 【1993,1994,1995,1996,1997,1998,1999】

3ナンバーに移行した2台の第6世代スペシャルティ

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超人気スペシャルティの全面改良

 日産自動車が1988年5月に市場に放った第5世代のS13型系シルビアは、小型スペシャルティカー市場を34カ月連続で制覇するなど、大ヒット作に成長していた。その最中、日産ではスペシャルティカー・ユーザーの動向を調査。バブル景気の盛りということもあり、この層はもっと上質で、高性能なスペシャルティを求めているという結果が出る。次期型シルビアは既存モデル以上に上級でスタイリッシュ、さらに高性能なスペシャルティカーに仕立てなければならない−−。そう判断した開発陣は、商品コンセプトに「意のままの楽しい走りとセンスの良さを徹底追求したスタイリッシュスポーツクーペ」の創出を掲げて新型の開発を推し進めた。

 スタイルに関しては、水平基調の流れるようなホリゾンタルストリームシェイプを基本に、均整のとれたエレガントでスポーティなフォルムを構築する。ボディサイズは全幅1730mmの3ナンバーサイズに移行した。内装については、低いドライビングポジションとドアアームレスト、センターコンソールのボリューム感により腰回りに適度なタイト感を持たせ、ドライビングの高揚感を演出する。装備類も従来型より充実させた。搭載エンジンは、従来の改良版となる1998cc直4DOHC16Vのインタークーラー付きターボ仕様(SR20DET型)と自然吸気(SR20DE型)を用意。2エンジンともにプレミアムガソリンを使用し、パワー&トルクはSR20DET型が220ps/28.0kg・m、SR20DE型が160ps/19.2kg・mを発生した。サスペンションには専用チューニングの前マクファーソンストラット/後マルチリンクを組み込んだ上で、乗り心地と剛性の向上を図る。また、従来の進化版となるSUPER HICAS搭載モデルも設定した。

 6代目となるシルビアは、S14の型式を冠して1993年10月に発売される。グレード展開は従来で好評だったトランプにちなんだ名称を踏襲し、K's(SR20DET型)/Q's(SR20DE型)/J's(SR20DE型)を設定した。

スポーツ感覚を強調した6代目セリカ

 6代目シルビアの市場デビューと同月、ライバルとなるスペシャルティカーのトヨタ・セリカが全面改良を実施し、6代目となるST202/203型系に移行する。
 シルビアと同様、6代目セリカも3ナンバーボディ(全幅1750mm)を採用していたが、そのアプローチ方法は異なっていた。ボディを従来型より拡大したにもかかわらず、車重は逆に軽くなっていたのである。また、スタイルに関しては張りのある曲面やシャープなエッジの組み合わせによって、硬質でダイナミックな新しいテイストを表現。一方のインテリアでも、躍動感のある造形の中に機能部品を配置した上でカラーリングを黒基調で統一し、スポーツ感覚あふれるコクピットに仕立てた。

 搭載エンジンはスポーティツインカムの3S-GE型1998cc直4DOHC16V(MT180ps/19.5kg・m、AT170ps/19.5kg・m。プレミアムガソリン仕様)とハイメカツインカムの3S-FE型1998cc直4DOHC16V(140ps/19.0kg・m。レギュラーガソリン仕様)の2機種を設定する。サスペンションはジオメトリーおよび構成部品を一新すると同時に、サブフレームを前後に装着した4輪ストラットを採用。3S-GE型エンジン搭載車には、スーパーストラットサスペンション仕様を用意した。

2台ともにロングセラーモデルに−−

 同時期に市場デビューを果たした新世代スペシャルティカーのシルビアとセリカ。しかし、販売成績はデビュー当初を除いてそれほど伸びなかった。当時はクロスカントリー4WDやステーションワゴンといったレクリエーショナル・ビークル(RV)が人気を集めていた時代。スペシャルティカーには、あまり注目が集まらなかったのだ。加えて、シルビアは大きくて重くなったボディとおとなしめのルックスが、セリカはハイパフォーマンスモデルの欠如などが、従来のファンから不評を浴びた。

 この状況を改善するため、2社の開発陣は多様な改良や車種ラインアップの増強を実施していく。シルビアは1995年5月にK's/Q'sエアロ・シリーズやQ'sクラブセレクションを追加。さらに、1996年6月にはマイナーチェンジを行い、吊目のヘッドライトの採用や足回りのチューニング変更などを敢行した。一方のセリカは、1994年2月にWRC(世界ラリー選手権)の参戦ベースモデルとなるGT-FOUR(ST205型系)を発表。また、同年9月にはコンバーチブルもリリースする。1997年12月にはマイナーチェンジを行い、3S-GE型エンジンにVVT-iを採用するなどしてパフォーマンスの向上を図った。

 着実に商品力をアップさせていった6代目のシルビアとセリカは、結果的に1999年まで販売が続けられる。モデル寿命が予想以上に長く続いたのは、日産とトヨタともにRVの開発に資本と人員を投入しなければならず、またバブル景気の崩壊以後の“失われた10年”の最中であったため、スペシャルティカーの全面改良が先送りされたという事情もあった。そのぶん、2車ともに1モデルとしての熟成は存分に行われたのである。