JPNタクシー・コンセプト 【2013】

日本の“おもてなし”を具現化した新世代タクシー

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その国の文化的な成熟度を映し出すタクシー

 タクシーは、その国の文化的な成熟度を測るバロメーターのひとつである。バスや鉄道といった他の公共交通期間と比較して、ドア・トゥー・ドアの移動を実現するパーソナルなモビリティであり、料金も比較的高額なことから、そのサービスの質そのものが問われるからだ。

 サービスの質とはすなわち移動に要する時間であり、ドライバーの接客態度であり、運転の技量であり、安全性である。そこにはタクシー車両そのものの快適性も含まれる。つまり、お客様をいかに“もてなす”かが問われているのだ。現在、日本のタクシーについての評価は、国際的にかなり高い。しかし、それはもっぱらドライバーのプロ意識が生み出したもの。車両の快適性については、それほどでもない。それは車両がタクシー専用に開発したモデルでないことが一因になっていた。2010年前後のタクシーは、トヨタのクラウン・コンフォートが全体の約7割を占める。クラウン・コンフォートは、通常のセダンをベースにタクシーに要求されるスペース性、乗降性などをリファインしたモデルだ。タクシーとして適性が高いのは確かだが、タクシー専用に開発されてはいない。

 2013年の東京モーターショーにトヨタが出品した「JPNタクシー・コンセプト」は、クラウン・コンフォートの後継車を想定した近未来のタクシーだった。2017年から正式市販され、日本の“おもてなし”の新しい形としてサービスを開始している。

電動スライドドア採用。ボディサイズは5ナンバー規格

 開発コンセプトは「みんなが乗りたくなる、そして笑顔になる、日本の街の風景を変えるタクシー」。トヨタの高い技術力と、日本らしさを大切にした落ち着いた雰囲気、そして誰にとってもフレンドリーな機能を融合した意欲作だった。スタイリングは全高をたっぷりと採った2BOX。ウインカーを内蔵したフェンダーミラー、ルーフ部やリアドアには表示パネルを装備している。お客様が乗り降りするリアのサイドドアは電動スライドタイプ。ボディサイズは全長4350×全幅1695×全高1700mm。一見、堂々とした3ナンバーフォルムに見えるが、実は5ナンバーサイズに収まる。クラウン・コンフォート(同4695×1695×1525mm)との比較では、345mm短く、175mm背が高い。

 客室は低いフロア高と段差のないフラットフロア、そしてたっぷりとした全高がプラスに働き、リムジン並みの広さを誇る。子供や高齢者にも最適なように乗降性を工夫した他、ルーフ部には行き先までのルート表示や、料金目安などお客様の知りたい情報を表示する。

パワーユニットは地球に優しいLPGハイブリッド

 室内センター部のセンタークラスターにより、ドライバーの仕事場スペースと、乗客用スペースをはっきりと分けたこともポイントだ。センタークラスターには多様な計器類が収められ、ドライバーの私物などもスマートに収納できるよう配慮されている。ちなみに運転席とそれ以外ではカラーに変化をつけている。

 パワーユニットに付いて発表時には詳しい言及はなかったが、優れた環境性能と経済性を持つ新LPGハイブリッド・システムを搭載。具体的にはシエンタ用ユニットをベースにリファインされ、1.5リッターエンジン(74ps)とモーター(61ps)の組み合わせ。燃料はLPG仕様となる。開発を担当したチーフエンジニアは「超高齢化や地球環境問題に対応しながら、楽しげな都市景観をもたらすタクシーを目指した、さらにドライバーにプライドを持って運転してもらえるようなクルマにしたい、子供に将来なりたい職業を尋ねたとき“タクシーの運転手さん”と言ってもらうのが目標」と語る。JPNタクシー・コンセプトは、日本らしい細やかな心配りを体現した、新世代モデルだ。