ダットサン1200ライトバン 【1961,1962,1963,1964,1965】

休日は乗用車として愛されたマルチモデル

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バンは究極のマルチユースモデル!?

 1960年代初頭、日本のモータリーゼーションを牽引したのは乗用車ではなく商用車だった。当時のユーザーの主流はサラリーマンではなく、自身で商店や工場を経営する自営業者。彼らは業績の改善に応じて当初の自転車&リアカーをオート3輪、そして4輪商業車へと乗り替えていた。しかし乗用車はまだまだ贅沢品で手が届かなかった。だからまずは必需品の商用車が主役になったのである。

 商用車のなかでも人気が高かったのは、平日は仕事の足として酷使でき、週末は家族を乗せてドライブに繰り出せるライトバンだった。欧米でバンというと、乗用車派生のワゴンと歴然と区別され、まさに頑丈一点張りで合理的な“ワークホース”が一般的だ。しかし日本ではバンといってもワゴン的な乗用車ライクなスタイルを持ち、快適性を重視した“マルチユースモデル”が主流。現在に続くこの伝統は1960年代初頭のモータリーゼーション黎明期にバンが乗用車としても愛されたことの名残と考えられる。

ブルーバードの造形と快適性を実現した存在

 1960年代初頭、自営業者の人気をひとり占めしたのが今回の主役、320型のダットサン・ライトバンである。当時一世を風靡したブルーバードのイメージで各部を仕上げた商用バンで、デビューは1961年8月のことだった。ダットサンP320型はトラック、ライトバン、ピックアップのネーミングで3種類のボディタイプが設定したが、最もブルーバードのイメージを色濃く伝えていたのがライトバンだった。

 ダットサン・ライトバンはまず伸びやかなスタイリングでユーザーを魅了した。フロントマスクの造形は基本的にブルーバードと共通イメージ。ビジネスライクなホワイト塗装だったトラックと異なり、ライトバンはグリル&バンパーともにブルーバードと同等のクロームメッキ仕上げだった。ボディサイドには一直線にモールディングが走り、リアエンドはちょっぴりテールフィン状の軽快な演出を施している。

 ホイールベース2470mm、全長4145mmとブルーバード(それぞれ2280mm/3915mm)と比較してひと回り大柄だったこともあり、ダットサン・ライトバンは立派に見えた。リアのサイドウィンドーのデザイン処理がすっきりとした印象だったこともプラスに作用し実にスマートだった。まさにイメージとしてはブルーバードのマルチワゴンだったのである。

 室内もブルーバードの血統だった。インスツルメントパネルはブルーバードと共通イメージ。ダットサンはラジオや時計、ヒーターなどはオプションだったが、それらを装備すると快適性はブルーバードと変わらなかった。衝撃吸収設計のコーン型ステアリングはお洒落なベージュカラーで、シートや内張りもホワイトとブルーの明るい色調で統一。後席右側にはジュース5本が収納できるフタ付きの専用小物入れまで用意されていた。シートは前後ともにベンチ式を採用し後席はもちろん折り畳みが可能。カタログには休日に家族と愛犬で野外バーベキューを楽しむシーンが紹介されていたが、まさに生活を豊かに演出する雰囲気に満ちていた。

タフな走り。高速性能も十分!!

 エンジンは1189ccの排気量から55ps/4800rpmの最高出力と、8.8kg・m/3600rpmの最大トルクを発揮するE1型。このエンジンも基本的にブルーバードと共通だった。高速用と通常走行用の2段切り替え式2バレルキャブレターもブルーバードと同じだ。ダットサンではトランスミッション(4速コラムシフト)のギア比を低めて駆動力を確保していた。ちなみにギア比が低いといってもトップスピードは110km/hと実用上は十分なレベル。空荷の状態で道路条件が許せばメーター上で120km/hを記録することは容易だったという。しかも商業車らしくフレーム回りはブルーバードより数段は頑丈で、酷使にも音を上げないタフさが身上だった。最大積載量は後席を立てた状態(荷室長940mm)で300kg、後席を畳む(荷室長1555mm)と500kgに拡大した。

 ダットサン・ライトバンは1960年代初頭の日産の屋台骨を支えた1台だった。ブルーバードを連想させるスタイリングと、持ち前のタフさで多くのユーザーを魅了したのだ。またトラックとともに海外にも輸出され独自の市場を形成した。1960年代初頭の国産車としては珍しい国際車でもあったのだ。

ライトバンとともに人気を二分したピックアップ!

 ダットサン・ライトバンとともに高い人気を誇ったのが5人乗りのトラックだったピックアップだ、スタイリングはライトバン以上にブルーバードのイメージに近い。キャビンの形状は2ドアセダンの印象で、リア回りがオープンデッキ構成の荷室になっている。5名乗りのため荷室長は880mmと短かったがピックアップの利点で高さ方向の制約がなく、冷蔵庫や洗濯機といった大物家電の積み込みが可能だった。最大積載量は400kg。55psを発生する1189ccや4速トランスミッションといった走りの機能はライトバンと共通である。ちなみにピックアップは室内の配色がレッド&クリームとライトバン以上に華やかだった。