パジェロミニ 【1994,1995,1996,1997,1998】
オフロード性能と快適性を磨いた軽SUV
パジェロミニは、クロスカントリー4WDの世界に“快適性”という概念を導入し、世界的なヒット作となったパジェロの魅力を軽自動車規格に凝縮したコンパクトモデルだ。1994年12月にデビューし、ライバルのスズキ・ジムニーを凌ぐオールラウンド性能で人気を博した。
パジェロミニのコンセプトは明確だった。開発テーマは優れた走破性と、日常性能の高次元融合。パジェロで培ったオフロード性能をベースに、オンロードでのしなやかな乗り心地とパワフルな走り、そしてコンパクトなボディサイズが生む取り回しの良さを徹底追及する。
バリエーションは、ターボユニットを搭載したVR-ⅡとVR-Ⅰ、自然吸気ユニットを積むXR-Ⅱ、XR-Ⅰの4グレード構成。ボディタイプは横開き式リアゲートを備えた3ドアタイプで、駆動方式は全車4WDだった。
パジェロミニは、クルマの基本となるボディを強靭に仕上げる。軽量設計のモノコック構造を基本としながら、ラダーフレームに近い構造材を組み込んだのだ。これにより本格的なオフロード走行にトライしてもびくともしないタフさを実現していた。
セレクティブ式4WDシステムにも工夫を凝らす。走行モードは2WD(後輪駆動)とハイ/ロー2タイプの4WDが選べる3モード。シンクロ機構付きトランスファーと、フリーホイールクラッチ式フロントデフの組み合わせにより、レバー操作だけで走行モードが選べた。2WDと4WDハイの切り替えは80km/h以下であれば走行中でも可能。突然の路面変化にも柔軟に対応出来るポテンシャルを持っていた。
最低地上高は195mmの設定。荒れた道でも余裕を持ってクリアー出来るクリアランスを確保する。パジェロミニのスタイリングは、兄貴分のパジェロのイメージを大切にしていたが、クロスカントリー4WDの生命線とも言うべき走破性という面でも、兄貴分の美点を忠実に継承していた。
快適性とキビキビとした走りという点では、パジェロミニは、兄貴分を凌いだ点もあった。足回りはフロントがストラット式、リアが5リンク式。ばねは、前後ともコイル式を採用する。ストロークをたっぷりと取ったことにより、乗り心地はしなやか。クロスカントリー4WDとしてはもちろん、乗用車の基準で見ても、なかなか優れた快適性の持ち主だった。
エンジンは、軽自動車としては贅沢な直列4気筒ユニットを搭載。ターボ仕様はDOHC20V、自然吸気仕様はOHC16V仕様で、燃料供給装置に電子制御インジェクションを組み合わせた。パワースペックはそれぞれ64ps/9.9kg・m、52ps/6.0kg・mをマーク。パジェロミニの心臓は、4気筒ユニットならではの滑らかさが大きな魅力だった。ターボ仕様は、パワフルさという点でも大きなアドバンテージを持ち、市街地はもちろん、高速道路や山岳ワインディングロードでも、ドライバーの予想以上に伸びやかな走りを実現した。トランスミッションは5速MTと、3速ATの2種を設定する。
パジェロミニのボディサイズは、全長×全幅×全高3295×1395×1630mm。軽自動車のメリットで、小さくまとまっていた。最小回転半径は僅か4.8m。狭い林道でも持て余すことはなく、しかも適度に高めの車高によって、広い視界を実現。取り回し性は軽自動車の中でも優れていた。
パジェロミニは、コンパクトサイズの本格4WDを求めていたアクティブなユーザーはもちろん、小粋なイメージのシティカーを探していた層にも大いにアピールしスマッシュヒットとなる。ライバルのジムニーは、優れたオフロード性能の持ち主だったが、パジェロミニがデビューした1994年当時、足回りは4輪リーフ式で、乗り心地はスパルタン。走行中に2WDと4WDの切り替え操作は出来ず、装備もシンプル指向だった。シティカーとして乗るには、いささかハードな乗り物だったのである。その点、パジェロミニは、すべてが洗練されていた。欠点は4名乗車時のラゲッジスペースが狭いこと程度。三菱は“遊びのRV”を作らせると卓越した腕前を発揮したが、パジェロミニは、まさにその好例だった。
パジェロミニは、1996年1月にはリーズナブルな設定の2WD仕様を追加するなどバリエーションを充実。一段と幅広いユーザーニーズに対応する体制を確立。1998年10月に、軽自動車の新規格に対応した2代目に移行した。パジェロミニは、“小さな大物”。軽自動車の可能性を広げた傑作の1台である。