コルト1100 【1966,1967,1968】

先進エンジンを搭載した堅実ボクシーセダン

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改良版エンジン、その5つの特長

 1960年代の三菱は、既存モデルの改良を積極的に行う。1963年7月にデビューした4ドアセダンの「コルト1000」は、1965年10月にホイールベースを2285mmから2350mmに延長し、1498ccの直列4気筒エンジン(70ps)を搭載した上級版の「コルト1500」をラインアップに加える。さらに翌年の1966年9月には、1000のエンジンを改良版1088ccのKE44型に変更し「コルト1100」へと昇格させた。1100へのグレードアップは、日産から登場したダットサン・サニー1000と差別化を図るための方策で、トヨタのカローラ1100投入より1ヶ月ほど早かった。

 三菱は、日本有数の技術者集団である。コルト1100のセールスポイントはそのパワーユニットにあった。KE44型直列4気筒OHVエンジンは、1088ccの排気量からクラストップ級の58ps/6000rpm、8.2kg・m/3800rpmの出力/トルクを発揮。全長3910mm×全幅1490mm×全高1420mmのボディをトップスピード135km/hで走らせた。エンジンの技術上の特長は5点。①高速走行時のバルブ追従性に優れたハイカムシャフト機構②高圧縮比を可能にしノッキングを防ぐシルミン素材エンジンヘッド③吸排気効率を追求した独立ブランチ式マニホールド④理想的なウェッジ形状燃焼質⑤加速と燃費に威力を発揮するツーバレル式キャブレターだった。

 コルト1100は実用性能を重視した4ドアセダンだったが、そのエンジンには当時最先端の高度なテクノロジーが満載されていた。組み合わされるトランスミッションが4速フルシンクロ式である点もセールスポイントだった。日産のサニーはトランスミッションが3速だったため、加速性能がややマイルドだった。それに対しコルト1100は、走行状態に応じた最適なギアが選択でき鋭い加速を実現する。

走りを意識したスポーティデラックスの存在

 コルト1100のラインアップは、ベーシック装備のスタンダード、ヒーターやラジオなどを標準装備したデラックス、そしてフロアシフト仕様のスポーティデラックスの3グレード構成。この中でユニークだったのはスポーティデラックスだった。

 スポーティデラックスは、ブラック仕上げの専用フロントグリル、大型ホイールキャップ、デュアルテールパイプを標準装備。インテリアではタコメーターを備えた4連丸型メーターを採用し、シートはサポート性に優れたセパレート形状になっていた。前述のようにトランスミッションは標準車のコラムシフトに対してフロアシフトである。コルト1100のデビューした1966年当時、スカイラインなど一部モデルにはスポーティグレードが設定されていたものの、まだまだ走りが楽しめるモデルは少数派だった。その中でのスポーティデラックスの設定は目立った。高性能なKE44型エンジンのポテンシャルを引き出すのに最適なグレードといえた。

大人しいスタイルが販売のネックに!?

 コルト1100は、残念ながらマーケットの中で目立つ存在にはなれなかった。その原因の大半はスタイリングにあったようだ。コルト1100のプロポーションは、ごくオーソドックスな3BOXスタイル。1100への進化にあたって、フロントグリル形状をスマートな横桟形状に一新していたが、それでもいささか地味な印象は否めなかった。パーソナルカーとしてフレッシュなイメージを強調したサニーやカローラとは目指す方向性が違っていた。コルト1100は、上級セダンの忠実な縮尺版。堅実を旨とする造形でまとめられていたのだ。4ドアレイアウトが生む実用性の高さは魅力的だったが、若々しいイメージには欠けていた。

 コルト1100の走りは、強力なエンジンによりクラス水準を抜いていた。スポーティデラックスという魅力的な選択肢も用意されていた。しかし全体的に見るとモータリーゼーション勃興期に入り、新鮮なイメージのクルマが求められた時代の空気を反映してはいなかった。コルト1100は、内容を重視する熱心な三菱ファンの支持を集めたが、一般ユーザーの関心を引きつけるにはややアピール力に欠けていたのである。