カローラ・レビン 【1995,1996,1997,1998,1999,2000】
“ワンイレブン”の愛称で親しまれた最後の稲妻
1990年代前半における国産車の市場動向は、ステーションワゴンやSUVといったレクリエーショナルビークル(RV)の人気が高かった。一方、社会的には地球温暖化による異常気象や生態系への悪影響などが問題視され始めていた。こうした状況下において、乗用車ブランドで年間販売台数のトップを記録し続けるカローラの次期型を企画していた開発チームは、“ベストコンパクトカーの創造”をテーマに第8世代の設計に勤しむ。具体的には、ジャストサイズや高い品質を維持しながら省エネルギーと安全性の向上を図り、そのうえで次世代テイストのデザインの創出や走行性能の飛躍、価格および維持費の抑制などを踏まえた“トータルコスト・オブ・オーナーシップ”の実現を目指した。
シリーズのスポーティモデルであるカローラ・レビンについては、省エネを加味してシェイプアップした新世代の“ライトウェイトコンパクトクーペ”に仕立てることを目標に掲げる。同時に開発陣はパフォーマンス面の演出にも徹底してこだわり、エンジンやシャシーなどのメカニズムを入念かつ緻密にリファインすることとした。
基本骨格を形成するシャシー&ボディに関しては、レビンらしいシャープでスポーティな走りを目指して徹底した軽量化を施す。フロントサスペンションはロアアームの素材と構造を見直し剛性をアップ、リアサスペンションは中空アームの採用やトー調整機構の変更、ブッシュ類の小型化を行った。ボディについては結合部構造の改良や骨格部材の連続化、高張力鋼板の拡大展開などを実施する。最終的に実現した重量は、従来型比で最大−70kgという大幅ダウンを成し遂げた。
基本コンポーネントの軽量化を果たす一方で、開発陣は走行性能や安全性の引き上げも鋭意実施する。懸架機構ではアッパーボールジョイントとロアダブルジョイントの採用により、駆動力のステアリングへの影響を低減。また、キャンバーコントロールアームが旋回時のコントロール性を高める改良版のスーパーストラットサスペンションを設定した。さらに、新開発のトルク感応型ヘリカルLSDやリニアパワーステアリングといった先進メカも組み込む。ブレーキは4輪ディスクが標準で、オプションとして4輪ABSも用意した。ボディについては衝撃吸収構造のCIAS(Crash Impact Absorbing Structure)を採用し、衝突によるキャビンの変形を最小限に抑えるように設計。同時に、運転席SRSエアバッグやサイドドアビーム、ハイマウントストップランプといった安全アイテムを採用した。
搭載エンジンは従来のスーパーチャージャー付きユニット(4A-GZE型)を省く一方、自然吸気ユニットの緻密なリファインを敢行する。旗艦エンジンは1気筒当たり5バルブやVVT機構などを組み込んだ4A-GE型1587cc直4DOHC20Vで、パワー&トルクは165ps/16.5kg・mを発生。ほかにKCS(ノックコントロールシステム)等を採用した4A-FE型1587cc直4DOHC16V(115ps/15.0kg・m)と5A-FE型1498cc直4DOHC16V(100ps/14.0kg・m)をラインアップする。いずれのエンジンも自然吸気ならではのシャープな吹き上がりとリニアなレスポンスが存分に味わえるようにチューニングした。組み合わせるミッションは5速MTと4速ATの2タイプで、4A系エンジンのATには統合制御型のECT-S(エレクトロニック・コントロールド・トランスミッション)を導入した。
7代目となるカローラ・レビンは、第8世代のカローラともに1995年5月に市場デビューを果たす。グレード展開は従来のGT系が廃止され、新たにBZ系(BZ-G/BZ-V。搭載エンジンは4A-GE型)を設定。ほかに4A-FE型エンジン搭載のXZと5A-FE型エンジン搭載のFZをラインアップした。
キャッチフレーズに“ライトウェイトパフォーマンス”を謳った新型レビンは、従来型に比べてリーズナブルになった価格設定(121万2000円〜173万3000円)やスタイリッシュな内外装で注目を集めるものの、販売台数は伸び悩む。レビンの中心ユーザーである若者層は、小型スペシャルティクーペよりも華やかなRVに熱い視線を注いでいたのだ。打開策として開発陣は、安全装備の充実(1996年5月)や6速MTの採用および内外装の意匠変更(1997年4月)、特別仕様車の設定などを相次いで行うが、販売が上向くことはなかった。最終的に7代目レビンは、2000年8月にカローラが全面改良するのを機に生産を中止。次世代モデルが開発されることはなく、結果として7代目が最後の“稲妻”となったのである。