コルサ 【1990,1991,1992,1993,1994】

お洒落なライフスタイルを提案した第4世代

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1990年代に向けたコンパクトカーの模索

 後に“バブル”と呼ばれる好景気に沸いていた1980年代終盤の日本の自動車市場では、ハイソカーや高性能スペシャルティの人気が高まる一方で、既存の1.3~1.5リッター 級コンパクトカーにもは“質の高さ”が求められるようになっていた。同カテゴリーにコルサ(そしてBROS車のターセル/カローラⅡ)で参入していたトヨタ自動車は、次期型を開発するに当たり市場の動向を最大限に重視。1990年代に向けた新世代コンパクトカーの創出に鋭意勤しんだ。

 開発チームは新しいコルサの基本コンセプトとして、「若々しい感性と新しい生き方にジャストフィット」を掲げる。具体的には、1)若々しく洗練されたスタイル、2)レスポンスが良くスタビリティの高い走行性能、3)安全装備の充実と快適な室内空間の実現を目指した。また、シリーズで最量販モデルとなるコルサは、販売ディーラー網であるトヨペット店系列(大阪地域はトヨタ店系列)のラインアップ展開を踏まえて、4ドアセダンと3ドアハッチバックのボディタイプを設定することとした。

個性豊かな2種類のボディタイプを開発

 スタイリングに関しては、アーバン感覚で若々しいデザインを基本テーマに、セダンとハッチバックの明確な差異化を図る。セダンはハイデッキフォルムをベースに全体を滑らかなシルエットで構成。同時に立体感を強調したフードとラジエターグリル、サイドまで大きく回り込ませた前後バンパーなどを取り入れてハイセンスなイメージに仕立てた。一方のハッチバックは全体に丸みを帯びた曲面フォルムをベースとし、そこにボディとの面一感を向上させた曲率半径の小さいサイドウィンドウや高めに配した。さらにサイドプロテクションモールとそれにつながるようにアレンジした前後ランプグラフィックなどを組み込んでファッショナブルなイメージを創出する。室内の開放感を引き上げる目的で、セダンに電動ムーンルーフ、ハッチバックにはキャンバストップも設定した。

 インテリアは、実用性を重視するとともに優しさとゆとりをイメージしてデザインする。インパネはラウンディッシュな面構成を基調に、機能性と質感を大幅にアップ。ドアトリムには新造形の貫通式アームレストを組み込んで、使い勝手の向上と見た目の個性化を図った。シートの座り心地もリファインし、とくに上級仕様に装着するスポーティシートはパッドと表地を一体発泡として質感を高める。また、新装備としてライブサウンドシステムや防汚シート表地、プッシュ式ヒーターコントロールパネル、電動格納式ドアミラー、キー抜き忘れ防止装置などを設定した。

 搭載エンジンはEFI-D(電子制御式燃料噴射装置)を採用した第2世代ハイメカツインカムのガソリン仕様を3機種(5E-FHEおよび5E-FE型1496cc/4E-FE型1331cc)、改良型のディーゼルターボ仕様を1機種(1N-T型1453cc)の計4機種をラインアップする。ガソリンの筆頭ユニットは可変吸気システム(ACIS)やデュアル排気マニホールドなどを取り入れた5E-FHE型1496cc直4DOHC16Vで、パワー&トルクは115ps/13.8kg・mを発生。トランスミッションには5速MTと2ウェイOD付4速ATを組み合わせた。また、駆動システムにはFFのほかに新開発のフレックスフルタイム4WDを採用する。ほかにも、新プログレッシブパワーステアリングや4輪ABSなどの先進機構を導入した。

安全装備の拡充と内外装のデザイン変更

 第4世代となる新しいコルサは、BROS車のターセル/カローラⅡとともに1990年9月に市場デビューを果たす。グレード展開はセダンがVIT-Z/VIT-X/VIT/AX-X/AX/TX、ハッチバックがSZ/SX/ソフィア/モア/TXで構成。外板色に中間色をベースとした彩度の高いカラー(全8色)を設定したこともトピックだった。

 内外装の質感が高まり、走行性能も向上した4代目は、女性ユーザーを中心に先代からの乗り換えを大いに促す。デビューの翌年にはバブル景気が崩壊して自動車市場そのものが沈滞するものの、メーカー側は積極的にコルサのリファインを行い、1992年4月には特別仕様車のモアスペシャル/AXスペシャル/VIT-Xリミテッドを設定。同年8月にはマイナーチェンジで安全装備の拡充や内外装の一部意匠変更を、1993年8月には新冷媒エアコンの採用をはじめとする装備の改定などを実施した。

 4代目コルサはひとクラス上の品質や安全性を内包していた真の実力車だった。後にデビューする同クラス車はバブル崩壊の影響もあってコスト削減が目立つモデルが多かった。それだけに、4代目の高品位設計は際立って見えるのである。

世界初のロータリートリブレードカップリング4WDを採用

 第4世代コルサのフレックスフルタイム4WDシステムには、世界初採用となる“ロータリートリブレードカップリング”が組み込まれていた。トヨタ独自の同システムは、車両の前後輪の回転差を活かした、いわゆる差動応答型の4輪駆動機構である。

 実際の動作は、前後輪の回転差が生じるとシリコンオイル中のトリブレード(3枚の羽根)が回転して圧力が発生、トルク伝達部の湿式多板クラッチがピストンにより加圧され、自動的に前後輪に最適トルクを配分するという仕組み。特長としては、正・負回転差動に対する伝達トルクの特性を変えることができるために4輪ABSとのマッチングが良い、軽量で信頼性が高い、様々な走行条件で優れた発進性能および旋回性能を発揮する、などがあった。