スズキ・エブリィ・プラス 【1999,2000,2001,2002,2003,2004,2005】

使い勝手抜群! コンパクト7シーター・ミニバン

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軽1BOXをベースにしたミニバンの誕生

 1999年6月にデビューしたエブリィ・プラスは、セミキャブオーバー型の軽1BOX、エブリィ(1999年1月・商用車のライトバン登場、ワゴン版はプラスとともに1999年6月デビュー)をベースにしたコンパクトサイズの7シーター・ミニバンである。

 エブリィ・プラスは乗車定員4名という軽自動車の制約を、車両サイズ、エンジン排気量ともに小型車枠に拡大することで払拭。広い室内空間という美点を7シーター・パセンジャーカーとして徹底的に生かしたモデルだった。1999年当時ファミリーカーの主役は、セダンやワゴンから多人数乗車が可能な3列シート・ミニバンに急ピッチに切り替わっていた。その流れのなかでスズキは、軽自動車のエブリィという“逸材”を基本に、身近なミニバンを企画したのである。ちなみにエブリィ・プラスは国内市場だけでなく、インドをはじめとするアジア市場の戦略モデルとしても期待されていた。モータリーゼーションが急ピッチで拡大していたアジア市場では、多人数が乗車でき、多くの荷物が積めて、しかもリーズナブルなマルチパーパスモデルの人気が急速に高まっていたからだ。エブリィ・プラスは、いささか地味な印象のモデルだったが、実はれっきとしたワールドカーだった。

コンセプトは“笑顔が広がるクルマ”

 エブリィ・プラスはカタログで「夢が広がる2+2+3名乗りの3列シート、狭い道でもスイスイ走れる機能的なパッケージ、さらに大きな安全性を身につけた、これからの新しい乗用車のカタチ、乗る人の数だけ笑顔が広がるクルマの誕生です」と魅力を語りかけた。

 ボディサイズは全長3675×全幅1505×1915mm。2350mmのホイールベースは軽自動車のエブリィと共通のままで全長を280mm拡大。ホイールハウスの変更で全幅を30mmワイド化していた。
 ボディ形状は、室内スペースのゆとりを重視したハイルーフ形状。リアドアは開口部が広い両側スライド式を採用する。ちなみに全長の280mm拡大は、逞しい印象のフロント回りの造形を生むと同時に、優れた安全性を約束した。エブリィ・プラスのクラッシュセーフティ性能は、すべての国内基準を余裕でクリアーし、欧州基準にも合致するものだった。さらに3分割構造のラダーフレームがビルトインされたボディは、安全性とともにボディ剛性と耐久性を計算していたのもポイントだった。

 パワーユニットは、排気量1298ccの直列4気筒OHC16V。電子制御燃料噴射システム(EPI)との組み合わせにより、85ps/6000rpm、11.3kg・m/3000rpmの出力/トルクを発生した。エンジンはジムニー・シエラ用と基本的に共通のもの。ちょうど前席下に30度ほど傾けて搭載され、駆動方式は2WDと4WDの2種から選べた。トランスミッションは4速オートマチックのみ。ちなみにフロントのフードを開けてもエンジンは見えず、ブレーキオイルタンク、ウィンドーウォッシャータンク、ラジエターのみを配置。タイヤジャッキなどの工具もこのスペースに積み込まれていた。

アレンジ自在の3列シート構成

 エブリィ・プラスのセールスポイントは3列配置のシートだった。1列目と2列目はセパレート形状。3列目はベンチ形状で、それぞれがリクライニング可能。2列目シートには270mmのスライド機構も組み込まれ、1−2列目はフルフラットすることが出来た。さらに3列目を折り畳むと広いラゲッジスペースが生まれるなど、多彩なアレンジが楽しめた。室内寸法は長さ2380×幅1270×1350mm。エブリィ・プラスの室内は外観から判断する以上に広々としていた。前席パワーウィンドー、チルトステアリング、抗菌インテリア、AC、後席ヒーター、UVカットガラスなど、充実した装備も魅力だった。

 しっかりとした印象の足回りと、前後重量配分50対50の優れた前後バランス、そして中低速トルクを重視したエンジンチューンと相まって、走りもなかなかのレベルに到達していた。エブリィ・プラスは小型車登録のため、軽自動車のエブリィと比べると税金や保険料は高額だったが、その弱点を補って余あるゆとりをユーザーに与えた。

 しかしながら、販売は苦戦する。コンパクトなミニバンとして完成度が高かったものの、エブリィというネーミングはやはり軽自動車を連想させたようだ。3列シートのミニバンを選ぶ層は、実質機能に優れたエブリィ・プラスではなく、より排気量が大きく、立派な2リッタークラスのミニバンを選んだ。
 エブリィ・プラスは、2001年5月のマイナーチェンジのタイミングで“プラス”に変わる“ランディ”という新たなサブネームを得る。これはエブリィという偉大すぎるベースモデルとは違う魅力の持ち主、という事実を明確にするための戦略でもあったようだ。