アベニール 【1990,1991,1992,1993,1994,1995,1996,1997,1998】

ワゴン・ブームに対する日産の回答

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打倒レガシィの信念で開発!

 SUBARUレガシィ・ツーリングワゴンをきっかけに、盛り上がったステーションワゴン・ブーム。この分野で専用ボディの主力車種をラインアップしていなかった日産自動車は、急ピッチで新世代ワゴンの開発を推し進めるようになった。
 新しいワゴンを企画するに当たり、開発陣は「ワゴンがもたらす “豊かなライフスタイル”のために、ゆとりと使いやすさを徹底追求する」という基本テーマを掲げる。具体的には①ゆとりをもたらす合理的で機能性の高い室内 ②軽快な走りを実現する走行性能 ③機能性の高い室内と優れた空力性能を両立させたスタイル ④高い安全性、などの実現を目指した。

 室内空間に関しては、ワゴン/バン専用のボディとすることにより、ルーフの段差をなくした余裕のあるヘッドスペースを創出する。さらに、ボディサイドのルーフへの絞り込みを少なくし、有効なショルダールームを確保した。ラゲッジルームでは、機構全体をフロア下に収めることができるトーションビーム式トレーリングアームのリアサスペンションを採用し、張り出しの少ない荷室フロア面を構築。また、ラゲッジトリムをボディインナーパネルに密着させ、最大限の有効スペースを実現した。ほかにも、シートクッションはね上げ式の6対4分割可倒式リアシートやキャビンとの一体感を持たせた荷室部のカラーリングなど、ワゴンらしいアレンジを随所に施す。

豊かなパワーと、スタイリッシュさを追求

 走行性能については、豊かなパワーとスムーズな回転フィールが味わえるSR20DE型1998cc直4DOHC16V(140ps)とSR18Di型1838cc直4DOHC16V(110ps)の2機種のツインカムエンジンを設定。また、コマーシャルバン用にGA16DS型1596cc直4DOHC16V(97ps)とCD20型1973cc直4ディーゼル(76ps)の2エンジンを用意した。足回りは、荷物の積載時における車両姿勢の変化を極力抑え、優れた操縦安定性と乗り心地が味わえるようにチューニングした。

 スタイリングに関しては、ワゴン/バン専用ボディによる自然なラインを生かしたスタイリッシュなシルエットを基本に、専用デザインの精悍なフロントマスクやリアビューを創出する。同時に、各部のフラッシュサーフェス化などを図り、空気抵抗係数(Cd値)はクラストップレベルの0.34を実現した。

「NISSAN'S WAGON」のデビュー

 渾身作は、フランス語で“将来”や“未来”を意味する“avenir”に由来した「アベニール」という車名を冠し、1990年5月にデビューを果たす。キャッチフレーズは、そのものずばり「NISSAN'S WAGON」。また、サブキャッチを「スポーツカーの次に来るもの」とし、日産の新たなジャンルのクルマであることを強調した。

 車種展開は、SR20DE型エンジンを搭載するタイプ2.0si:を筆頭に、SR18Di型を積むタイプsi:/bi:/eiの3グレードを用意する。また、バン仕様には「アベニールカーゴ」という専用ネームを付け、GA16DS型とCD20型エンジンそれぞれにVX/LX-G/LX/Lという4グレードを設定した。
 デビューから5カ月ほどが経過した1990年10月には、ワゴンにアテーサシステム、バンにオーソドックスなパートタイム式を組み込んだ4WD仕様が追加され、基本ラインアップが完成したW10型系アベニール。デビュー当初はそこそこの人気を誇ったものの、レガシィ・ツーリングワゴンの販売成績にはまったく及ばず、また1992年11月にトヨタ・カルディナがデビューしてからは、市場シェアをさらに落としていった。

呼称を「アベニール・サリュー」に変更

 ワゴン市場で思いのほか苦戦を強いられた日産は、バブル崩壊後の苦しい経営状況の中、アベニールのイメージを大転換させる力の入ったマイナーチェンジを1995年8月に実施する。ボディ外装はボリューム感のある形状に一新。また、SR20DET型1998cc直4DOHC16Vターボ(210ps)を搭載した“GTターボ”をラインアップに加える。同時にワゴン仕様の呼称は、「アベニール・サリュー」(サリュー=Salutはフランス語で“やぁ!”とか“こんにちは”の意味。1993年12月に追加された車種のグレード名として最初に使われた)に変わった。

 一新されたアベニール・サリューは、GTターボのパフォーマンスの高さや派手な広告展開などで注目を集め、レガシィやカルディナほどではないものの、そこそこの人気を獲得する。メーカー側もこの流れに応じ、GTターボをメインに据えたグレード展開とした。

話題となったアベニールの広告展開

 広告展開も斬新だった。1995年のマイナーチェンジ以降、イメージキャラクターに女優・ファッションモデルとして人気を博していた松嶋奈々子さんを起用。“GT WAGOOOON!”のキャッチとともに松嶋さんが囁く「お・ま・た。」のセリフ、アベニール・サリューへの改称にちなんでドライブ中に猿を見かけたときに叫ぶ「サル、サル、サルー!」のセリフなどが大きな話題を集める。結果的に松嶋さんの起用は、初代アベニールのモデル末期まで継続されることとなった。