98マツダ・ロードスターvs99トヨタMR-S 【1998,1999,2000,2001,2002,2003,2004,2005】

1990年代終盤に注目を集めた2台のライトスポーツ

会員登録(無料)でより詳しい情報を
ご覧いただけます →コチラ


スポーツカーの人気回復を目指して--

 ミニバンやSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)、ステーションワゴンなど、いわゆるRV(レクリエーショナル・ビークル)が高い人気を博していた1990年代後半の日本の自動車市場。走りの性能に特化したスポーツモデルの人気は低落傾向にあった。

 スポーツカーは見て、乗って、操って楽しい存在、とくに身近な存在のライト級スポーツカーの価値を、もう1度ユーザーに見直してほしい--。復権のために立ち上がったのは、1989年にロードスターの発売でライトウエイトスポーツの市場を活性化させたマツダと、MR2という国産初の市販ミッドシップスポーツを生み出していたトヨタ自動車だった。

走る楽しさと操る楽しさを追求した2代目ロードスター

 最初に動いたのは、マツダだった。1998年1月にライトウエイトFR(フロントエンジン・リアドライブ)スポーツの「ロードスター」を全面改良し、第2世代となるNB型系を市場に放った。

 2代目ロードスターは商品特長に、楽しさを追求したパッケージング、スポーティ感を高めたエクステリアとインテリア、“ファン・トゥ・ドライブ”な走行性能、卓越した安全性、という4項目を掲げる。パッケージングについては全長3955×全幅1680×全高1235mm、ホイールベース2265mmとコンパクトなサイズに収めたうえで、優れたヨー慣性モーメントと重量配分を実現。固定式ヘッドランプを採用するなど軽量化を果たした。エクステリアに関しては3次元フォルムを取り入れて見た目の美しさと空力特性の向上を達成し、インテリアでは適度なタイト感の演出や操作性および視認性の引き上げを図る。

 ファン・トゥ・ドライブのキーポイントとなるエンジンには改良版のBP-ZE型1839cc直4DOHC16VとB6-ZE型1597cc直4DOHC16Vの2機種を用意し、トランスミッションはBP-ZE型に6速MTと4速ATを、B6-ZE型に5速MTと4速ATを組み合わせた。シャシーについては4輪ダブルウィッシュボーンのサスペンション形式を継承しながら、剛性アップや構造変更などのチューニングを実施し、優れたコントロール性能や路面追従性を実現する。安全性に関しては高剛性・安全ボディの“MAGMA”の採用のほか、4輪ABSや運転席&助手席SRSエアバッグ、ダイレクトクランプ&ロードリミッター付きシートベルトといったセーフティ機構を組み込んだ。

 車種展開はBP-ZE型エンジン搭載のS/RS/VSの3グレードとB6-ZE型エンジンを積む標準車/Mパッケージ/スペシャルパッケージの3グレードを設定。装備を従来型以上に充実させながら、車両価格を抑えたことも2代目ロードスターの訴求点だった。

トヨタはミッドシップ方式のライト級スポーツカーを開発

 1999年10月になると、MR(ミッドシップエンジン・リアドライブ)の駆動レイアウトを採用したトヨタ版ライトウエイトスポーツのMR-Sが市場デビューを果たす。車種展開は標準仕様のほかにベーシックグレードのBエディションと上級モデルのSエディションを設定した。

 MR-Sは商品特長として、ミッドシップレイアウト、軽量・高剛性の新設計オープンボディ、トルクフルで扱いやすいエンジン、カウルフォワードの低重心スタイル、シンプル&スポーツをテーマに据えたインテリア、高い安全性と環境性能の6項目を提示する。車両ディメンションは、操縦性に優れるMRの駆動レイアウトを採用したうえで前後オーバーハングを極力切り詰めてヨー慣性モーメントを低減。さらに、全長3885mmに対してホイールベースを2450mmと長めに取り、優れた走行安定性とハンドリングを実現した。ボディ自体に関しては主要部位を大型断面の骨格で構成して補強材を極力省くことで、高剛性と軽量化を高いレベルで両立。同時にフロントピラー下部の大径化やロッカーとの結合剛性の引き上げなどによってクローズドボディと同等の耐変形性を確保した。

 組み合わせるサスペンションはフロントにLアーム・マクファーソンストラット式、リアにデュアルリンク・ストラット式を採用し、タイヤには有効なトラクションを確保する目的で前後異サイズを取り入れる。エンジンはVVT-iを組み込んだ1ZZ-FE型1794cc直4DOHC16Vを搭載。ミッションにはショートストローク化した5速MTを組み合わせた。エクステリアについては、低重心のスタイリッシュなオープンフォルムを創造。インテリアは直線的なインパネやメッシュ調立体ファブリック地のスポーツシートなどでまとめた。安全性の確保にも抜かりはない。4輪ベンチレーテッドディスクブレーキに4輪ABS、専用設計の衝突安全ボディ、運転席&助手席SRSエアバッグなどの安全アイテムを標準で装備した。

 エンジンの搭載レイアウトは異なるものの、走りの楽しさを徹底追求して生み出されたロードスターとMR-S。スポーツカー好きを納得させるに十分な高いポテンシャルの持ち主だった。共に名車である。